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自分にとって挑戦し続けられる場所・鳥取県琴浦町-鳥取県琴浦町 地域おこし協力隊 久和 温実-

今回インタビューをした久和さんは、長崎県対馬市生まれの25歳。九州大学の中退などを経て、現在は鳥取県中部の琴浦町の地域おこし協力隊として県内外で幅広く活躍されています。

グラフィックレコーディングなど新しい情報発信の手法を通じて、日々琴浦町の魅力を発信する久和さん。

なぜ地元ではない鳥取県琴浦町の地域おこし協力隊になったのでしょうか。地域おこし協力隊としての具体的な活動内容や、将来取り組みたいことについても伺いました。

鳥取との出会いは一見偶然、でもきっと必然

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ご出身は長崎県という久和さんが、そもそも鳥取県琴浦町の協力隊になったきっかけは何だったのでしょうか。

久和: 「出身は長崎県の対馬市です。高校を卒業するまで、ずっと島で生活していました。

地域おこし協力隊を知ったのは高校生のとき。本で読んだ一期生の話にすごく感動して、いつか自分も地域のために働きたいとずっと思っていました。

自分は対馬に住んでいるのに、地域のことを何も知らない。一方で、外から来た方が地域のために働いていることが衝撃だったんです。

地域おこし協力隊について調べる中で、Twitterで高知県嶺北地区にあるNPO法人ひとまきを知りました。

そこで、まずひとまきが募集していた約1ヶ月間の「半農半Xインターン」に参加したんです。

転機となったのは、その後でした。インターン終了後、高知から福岡に帰るバスの予約が上手くできなくて。

ただ慌てるばかりで結局バスに乗れずにいたらインターン先の代表の方が『残っても大丈夫だよ』と言ってくれてひとまず高知に残ったんです。

するとその翌日、インターン先の代表の方が、たまたま鳥取県琴浦町の当時の地域おこし協力隊に会いに行く用事があって、流れで私も鳥取県の琴浦について行くことになりました。

そして初めて訪れた鳥取県琴浦町で数日間滞在するうちに出会いに恵まれて、鳥取とつながったという感じです。

最終的にはバスで帰るのはあきらめて琴浦で出会ったヒッチハイカーの男の子が一緒に福岡に連れて帰ってくれました(笑)。

偶然の出会いに恵まれて、対馬から福岡、そして鳥取に導かれてきた という感じですね。」

一旦は福岡に帰った久和さん。しかし、鳥取でつながった縁が元となり、やがて鳥取へ吸い寄せられるように移住することになります。

久和: 「鳥取から帰った後は、福岡でバイト生活。でも何か物足りなさを感じる日々でした。ちょうどその時、鳥取でつながった人たちが『鳥取に、来ない?』と声をかけて下さって。

初めて鳥取に行って出会った協力隊の先輩たちや若者がすごく楽しそうにそれぞれおもしろい事に挑戦していてそれを周りが応援している様子が魅力的だったのが忘れられず、鳥取への移住を決意しました。

同時期に知ったのが、琴浦町の地域おこし協力隊の募集でした。もっと鳥取のことを知りたいと思ったので応募し、現在も働いているという経緯です。」

地域おこし協力隊として関わる中で深まっていく地域愛

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地域おこし協力隊といっても業務内容はさまざま。久和さんはどのような業務を行っていたのでしょうか。

久和: 「協力隊の任期は3年。業務内容は ”元気なまちづくりコーディネート”でした。

最初はまちネット(※1)という機関のサポートや「とっとり琴浦熱中小学校(※2)」の立ち上げ、町や地域団体の情報発信業務などを担当していました。

最初は、何をどうしたら良いか全くわからない状況でしたが、協力隊の先輩方が常に気にかけてくださり、地域の広報誌を見て行けそうなイベントに足を運んだり、人に会ってお話を聞いたりできることから始めました。

積極的に地元に関わることで地域の人たちともだんだんと親しくなりましたね。

1年目は、グラフィックデザインソフトの使い方など、その場その場で必要なスキルを身につけていった感じです。」

久和さんは持ち前の明るいキャラクターで1年目から地域に溶け込んでいき、つながりを生かして2年目以降さらに活躍の場を広げていきます。

久和: 「2年目以降、子ども達がお絵かきをする「琴浦KAKU部」を開催したり、「ことうら未来カフェ」のファシリテーター、「バスデザインワークショップ」での進行役などを経験しました。

自分で提案したり、成果が目に見えるものがあって楽しさも倍増しました。その上ありがたいことに、夢中で頑張っていたら、町以外の方にもお声掛けいただくことが増えたんです。

地元の5つの企業が手を組んだ「すごく便利なクルマ屋さん」のコトモビ(琴浦モビリティグループ)の広報のお仕事や、県のゼロカーボンシティ宣言(2050年にCO2排出量実質ゼロを目指す宣言)を受け、有志メンバーで鳥取の将来像や実現手法を話し合った『チーム「とっとりゼロ・カーボン・チャレンジ」』のグラフィックレコーダーに就任させていただいたりとか。
仕事の幅と、活躍の場が一気に広がった感じです。」

※1:まちネット
正式名称は琴浦まちづくりネットワーク。地域の観光資源である鳴石の浜のプロジェクトや白浜の写真館のフォトプロジェクトといった地域づくりの組織のそれぞれが、情報交換や交流を図るためにネットワークされた中間支援組織。
※2:熱中小学校
「もういちど7歳の目で世界を・・・」を合言葉に、地域活性化の担い手育成や新たな交流の場を創るため、全16の拠点で多彩な教授陣による授業を行っている。地域に根差した学びと実践で、新たな価値を発見していく場所。

グラフィックレコーディングは地域づくりに生かせる

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イラスト:久和温実

地域おこし協力隊として様々なプロジェクトに関わっている久和さん。一番印象に残ったことはどのようなものだったのでしょうか。
久和: 「一番印象に残っているのは、仕事の幅を広げるきっかけにもなったグラフィックレコーディングです。

元々イラストやデザインが好きだったので、会議や思考整理に使えるグラフィックレコーディングを学びたくて福井まで研修を受講に行きました。

グラフィックレコーディングは、議論や対話などを絵や図などのグラフィックに可視化して記録していくファシリテーションの手法なのですが、私が最も感動したポイントは、 ”言葉にできないことを表現できる” ということ。

例えば仲の良い関係でも、ケンカしそうな時には上手く言いたいことが表現できず、より一層溝が深まることがありますよね。

グラフィックレコーディングでは、線や顔の表情など、実際に絵を描いてみることでお互いにイメージを共有するので、冷静に『こういうことだよね』と会話をすり合わせることができるんです。

大人ですら言語化できない場面は多々あるので、語彙がまだ少ない子どもたちだとなおさら相手に思いをうまく伝えられないと思うんです。

その結果、大人から『こうでしょっ!』て押し付けられたり、『何が言いたいの?』と詰められたり。ストレスですよね。

『 自由に自分を表現して良いんだよ 』という空間を作って、素直な気持ちをのびのびと表現してもらいたい。

不思議なもので、絵を通すとあたたかいコミュニケーションが生まれるんです。」

言葉ではなかなか表現できないことを絵に込めて表現することが、地域の人の役に立てば、という気持ちから、グラフィックレコーディングを学んだと言う久和さん。絵を通して地域を良くしていきたいと語ります。

久和: 「『チーム「ゼロ・カーボン・チャレンジ」』のグラフィックレコーディングのように、会議の中での人々の議論を、図式や絵などを使ってリアルタイムで可視化した資料は、とても良い記録になるのに加え、SNSに掲載しておくことで一目でわかる情報量が多いので、広く発信できる手段だと感じます。

分野を問わず、グラフィックレコーディングで、琴浦を、鳥取をもっと良くしていけるのではないかと思っています。」

周りからもらう応援を自分の成果で還元したい

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今後取り組んでみたいことについてもお伺いしました。

久和: 「やりたいことはたくさんあります。例えば、琴浦町には本屋があまりありません。

身近に本がない環境を改善するため、自分で本屋を開いてみたいと思います。他にも、地域の方々が気軽に立ち寄ってお話できる場所も少ないような気がします。

なので、例えば、町民同士のコミュニケーションを促すためのカフェなどに興味があります。

あとは、役場とか市役所の窓口って几帳面な紋切り型のサービス、といったイメージがあるじゃないですが。

私もかつては『ダメな私は、ここに来ることすらダメなんだ』と思ってしまうこともありました。

自分も大学を辞める時に実感しましたが、相談したくても普段からつながりがないといざというときに相談できないんですよね。

なので、そういうイメージを払拭していきたいです。そういったことをなくすため、 行政と地域とを繋ぐお手伝い がしたいとも思っています。」

地域をより良くするため、協力隊の任期が終わっても琴浦に定住すると語る久和さん。琴浦町への思いを語ってくれました。

久和: 「当初来た頃と人が違う、と周りからは良く言われます(笑)
琴浦町に移り住んで以来、周りの人に支えられ、様々な挑戦をさせてもらっていて、お蔭で活躍の場も少しづつ広がっています。

自分が関わったことによる成果を感じることも増えました。これも、”協力隊”という立場が多くの出会いと経験とをもたらしてくれた結果であると感謝しています。

そしてそれは、琴浦町が挑戦する人を応援する土地柄であるからこそできたことだとと思っています。

琴浦町に来たからこそ、周りから応援をもらうのと同時に地域に還元できることも増えていっているんです。

だから、協力隊を卒業した後もずっとここで暮らしていきたい、挑戦し続けたい!と思えるんです。

地域のために何か貢献したいと感じている人、鳥取県に移住しようか考えている人には、『とにかく来てみて、楽しいよ』と声をかけたいです。

地域おこし協力隊という制度もそのきっかけの一つだと思っています。」

偶然の出会いが重なって鳥取県に移住した久和さん。地域おこし協力隊という立場が私を成長させてくれていると語りながら、一方で “周りからもらう応援を自分の成果で還元したい ”と語るその言葉に、町への熱い思いを感じました。

鳥取県琴浦町地域おこし協力隊 久和 温実
長崎県対馬市出身。学生時代の頃に読んだ地域おこし協力隊の書籍から地域おこし協力隊に憧れをいだき自身も鳥取県琴浦町に地域おこし協力隊として着任。とっとり琴浦熱中小学校や琴浦まちづくりネットワーク事務局など地域活動に積極的に取り組んでいる。

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