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OMOの実装を考える #1 : 国内OMO事業者カオスマップ - インフラ・ソフトウェア・テクノロジー編 -

今回はOMO国内事業者マップ(カオスマップ)をご紹介します。

2019年、OMO Timesでは主に先行する海外事例を中心に紹介しましたが、シリーズ「OMOの実装を考える」では国内の実装を考えることを念頭に、国内に限ったマッピングを行いました。

一方で、OMO/ニューリテールといっても、事業としてみるとかなりざっくりしたくくり方で、有店舗事業者からみた場合、DXの結果としての店舗体験のアップデートであったり、テック/ソリューションカンパニーからみたサービスとしてのリテールテックであったりします。

というわけで、国内事業者マップを作成するにあたり、大きくBtoB、BtoCに分けた上で、

1) リテールテックとしてのインフラ・ソフトウェア・テクノロジー
2)それらを活用したりソリューション化したコンサルティング・システム導入
3)顧客接点となる決済などのプラットフォーマー
4)有店舗事業者
5)メーカー

に分類、事業者抜粋のうえ整理しました。

国内OMO事業者マップ

国内OMO事業者マップ

今回はBtoBプレイヤーの 1)インフラ・ソフトウェア・テクノロジー領域について解説します。


インフラ・ソフトウェア・テクノロジーの国内プレイヤー

一般に「リテールテック」として括られる領域になります。

リテールテックを支えるクラウドインフラなど、対象が小売に止まらない海外のプレイヤーもいれると文字通りカオスな状態ですが、国内プレイヤーも年を追うごとに新旧数多く進出している領域です。

リテールテック領域において、例えばハードウェア的にわかりやすいものに無人店舗化技術があります。

店内設置のカメラを通じた顔認証による無人店舗化支援システムは、NECがローソンやセブンイレブン(ただしセブンイレブンは無人化ではなく省人化と呼称)など、コンビニに提供して話題になりました。画像認識AIによる店舗の無人化・省人化は、テクムズのような地方ベンチャー企業も出てきており、日本でも大手だけでなく中規模小売店でも実証実験が進む領域になります。

また、人を判別するのではなく商品(の移動)をリアルタイムで捕捉してデータを取得・解析するtraxsupremeのようなテックカンパニーも国内で導入実績をつくりつつあるようです。

NECの省人型店舗

NECの省人型店舗


日本で無人店舗化は進むか

一方で、中国の簡24BingoBoxに見られるように、単に既存店舗を無人店舗化する流れは早晩停滞するか、その流れがそもそもできる前に方向転換する可能性があります。

日本の場合(人員の調達も含めた)労務コスト削減の分脈で無人化がニュースになるケースが2019年に見られました。しかし、無人店舗化(=顔認証などによる来店客の捕捉)の本丸はむしろ店舗内外における顧客行動データの蓄積と統合、そして調達〜販売へのフィードバックであるため、むしろ短期的には人を多めに配置してでもそういったループを回して、OMOの仕組み全体のチューニングをしていく方が合理的です。

そこで、日本では既に社会インフラとしての役割も担わざるを得なくなったコンビニ各社は、経済合理性とは別に社会的政治的な要求に応えないといけないジレンマをどう解消していくか、についても2020年以降引き続きテーマになりそうです。

画像3

無人店舗化の実証実験をおこなっているローソン氷取沢町店/Photo by ローソン


店舗体験を支援する技術やアプリ

その他、店舗体験を更新する技術としてのAR/VRテクノロジーについては顧客の慣れとどう戦うかが注目されます。
店舗を購買ではなく体験の場所とした場合のギミックとして突き抜けたものが生まれるか。あるいは利用する必然性があるものが提供できるかがポイントになります。
既に単なるVRギアを配置したり大型のタッチパネルやデジタルミラーを置いただけでは顧客は触ってすらくれなくなっています。

アプリについては、単に多くの開発実績や技術力があるというよりは、オンラインとリアル店舗をブリッジする顧客体験を創造できる(そしてその実績のある)開発会社が、有店舗事業者からの引き合いが多くなりそうです。

すなわち、ベンダー丸投げではなく、オルビスなどのケースに見られるように、明確に事業者側にOMOアプリの要件定義ができるような体制がつくれるかがポイントになると考えられます。

オルビスのOMOに対応したアプリ

オルビスのOMOに対応したアプリ


AI/店舗データ分析については、各社有店舗事業者向けのソリューションまで含むサービスを提供しています。
2019年はABEJAの小売向けソリューションABEJA Insight For Retail、Arm(トレジャーデータ)のArm Retail、プレイドのNRIとの協業によるユーザー行動データ連携ソリューションなど、小売に特化したソリューションが次々に発表されました。

実装状況の報告はこれからという感じですが、いずれもIoTデバイスやカメラを通じて店内の顧客行動を捕捉し、店舗のサイネージやスマホアプリのプッシュのようなプロモーション、またはマーチャンダイズなどに活かすことを謳っています。


最後に業界トレンドとして、D2Cブランドが2020年は大手企業のスピンオフも含めて引き続き数多く立ち上がることが予想されます。オンラインの購買へ良いトスを上げる意味合いでの店舗体験はD2Cスタートアップにとっても大変重要です。

今のところ大手小売企業のOMOへの移行のトピックが多いなか、「OMOネイティブ」なD2Cブランドが、より軽量にオンラインと融合した店舗体験を提供するためのソフトウェア・テクノロジーやソリューションが出てくることが期待されます。次回はこういったソリューションも含めたコンサルティング・システム導入領域について紹介します。

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