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まほろば と 走馬灯 と かげろう

 分かったようで分からない言葉、古そうで新しそうな言葉、怪しいけど何だか惹かれる言葉、考察してみました。

まほろば

「まほろば」という言葉、普段使う言葉ではないが、聞いたことのある言葉ではある。意味はというと、よく分からない。
 漢字はない。いつもひらがなで書きあらわす。だから、この言葉は和語だ。古い言葉に違いない。気になって調べてみた。
 そうして分かったのだが、その言葉が使われているのは古事記くらいしか見当たらない。現代では店の名や歌詞の中などで使っているが、古事記の後1000年以上の間にほとんど使われた形跡がないのである。
 古事記の中でその言葉が使われているのは、倭建命やまとたけるのみこと が詠んだ歌の中だ。

やまとは国の まほろば たたなづく 青垣 山こもれる 倭しうるわし

 有名な歌だが、「まほろば」は古事記の中でもここでしか出てこない。現存する日本の書物の中で最も古いものの中で1回だけ出てきて、それ以来ほとんど使われることがなかったものを、最近になってちらほら使うようになった。どうもそういうことのようである。
 そうだとすれば、「まほろば」の意味は如何ようにも解釈できる。出典が歌の中であれば、なおさらだ。意味がよく分からないにせよ、悪い意味ではなさそうだし、そんなことより耳障りがよくて、なんだか不思議な感じがして、またなんとも心地よい。そんな言葉である。

走馬灯

走馬灯そうまとうのように」と言うけれど、そもそも走馬灯がどんなものか知っているのか? 見たことあるのか? 馴染みのないものを持ち出して「○○のように」なんて言っていいのか?
 「走る+馬+灯り」だから何だかカッコいい。そしてその字面から、知らないなりに、走馬灯がどんなものかイメージが動き出す。何となく分かった気になれる。
 典型的なフレーズは「走馬灯のように駆け巡る」か? そしてその場合の主語は「思い出」だ。逆に言うと、それ以外の使い方が見当たらない。
 と言うことは、走馬灯とは記憶覚醒装置なのか? 元々そのためにあるものなのか? いや、そんなことはあるまい。

かげろう

 これがまた分かったようで分からない言葉である。自然現象なのか、気のせいなのか、虫なのか。いや、その前に、動詞なのか? 名詞なのか?
 分からないから、使いたくなる。分かった気になれそうだから、使ってみたくなる。分かりたいと思うから、何はともあれ使ってみる。
「うすばかげろう」なんて聞いただけでドキドキするね。使えるものならどこかで使いたいと思うが、そう言ってはみたものの、使えそうな場面が思いつかない。


 学校という場所がみんなの「まほろば」、卒業式で「走馬灯」、放課後の校庭で「かげろう」・・・意外にも学校で生きているのかも。和語って良いよね。

◇      ◇      ◇

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