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かぐや姫の婚活事情

 何の因果か、オンラインで全6回シリーズの漫才系の講習を受けている。その講習中に「お題『昔話』で漫才の台本を作れ」という宿題を出されて作った台本がこれ。
 タイトルは「かぐや姫の婚活事情」。構想1ヶ月、執筆1時間、修正1週間の作品です。我ながら、なかなか上手く出来たと思う。

A(男):むかしむかし、あるところにマッチング・アプリがありました。
B(女):ふーむ、おもしろそうね。せっかくあるんならどんどん使おう。
A:けど、女の人はみんな「白馬に乗った王子様」が良いって言うんだよ。
B:それで、男の人はみんな「眠りの森の美女」が良いって言うのよね。
A:みんな高望みし過ぎじゃないか。
B:みんな身の程知らずよね。
A:「白馬に乗った王子様」なんて金持ちってだけだろ。金さえあれば何でも良いのか?
B:「眠りの森の美女」ってなによ。結局、処女が好きってこと?
A:けどな、男にしてみたら、生まれた子が自分の子かどうか確信もてないから、やっぱり「眠りの森、つまり処女」は外せないんだよなぁ。
B:そして女にしてみたら、子供をちゃんと育てるのに十分な財産が要る。それを保証してくれるのが「白馬に乗った王子様」ってわけよ。
A:お互いそれぞれ、切実な理由があるのかな?
B:そう、お互いに譲れない線がある。
A:そう考えると、「眠りの森の美女」と「白馬に乗った王子様」のカップルって、理想のカップルなのかな?
B:結局そういうことなのかしら?
A:ヨーロッパにはたくさんいるんだけどね。灰まみれのシンデレラも、森に隠れ住んだ白雪姫も間違いなく男を知らない。けど日本の昔話には該当するのは一人しかいない。
B:誰なの?
A:「かぐや姫」だけだ。
B:そうかな? 何を根拠に?
A:竹から生まれてあっという間に大人になったから、処女を失うヒマなんて無かったのさ。
B:他にはいないの?
A:乙姫や雪女はむしろ男を誘惑しちゃってるから、ボツ!
B:なるほど。一方、金持ちの男と言えば・・・桃太郎は成金だから先々の保証はないし、浦島太郎とか金太郎はむしろ貧乏ね。
A:金持ちの男、日本にいないのか?
B:まぁ少しは居るわ。かぐや姫にプロポーズした男たちね。
A:彼らが金持ちだっていう証拠、あるか?
B:ありもしない宝物を探しに行くだけのヒマを持て余しているのが、何よりの証拠ね。
A:うーん、確かにそうだ。
B:日本で初めて「眠りの森の美女」と「白馬に乗った王子様」のカップルが誕生するチャンスだった。
A:どうしてうまくいかなかったんだろ?
B:月から迎えにきた御者を追い返そうとするより、乗り込んじゃえば良かったのよ。
A:えーっ、そんなことして大丈夫なの?
B:日本には伝統的に「通い婚」という制度があるの。男性が女性の元に通う形の結婚ね。だから普通なの、へっちゃらよ。
A:そぅかぁ、浦島太郎だって竜宮城から帰ってきたんだから、月に行ってもきっと帰って来られる・・・か。
B:そうすればかぐや姫と結婚できて、さらにアポロ11号のアームストロング船長よりも先に月に行けたのに。惜しいことをしたもんだわ。
A:それにしても、月から来た御者をただ追い返そうとする男たちって、ただのアホだよねぇ。
B:いや、その前に、ありもしない「宝物を持ってこい」なんて、かぐや姫ってホント性格悪い。
A:性格悪くてもいいから「眠りの森の美女」を望んだ男と、
B:アホでもいいから「白馬に乗った王子様」を望んだ女。
A&B:(一緒に)うまく行く訳ないよねー。
A:マッチングは今も昔も難しい。
B:だからアプリが流行るのかしら?
A:アプリ頼りってのも、どうかと思うけど。
B:そんなことより「白馬に乗った王子様」、いつになったら私を迎えに来るのかしら?
A:「眠りの森の美女」、そろそろ目覚めて僕の前に現れて欲しいんだけど。
A&B:(同時に、お互いに対して)いい加減にしろ!
A&B:ありがとうございました〜(退場)

 ついでながら、同じお題「昔話」でもう一つ作ってみた。仮タイトルは〈シンデレラ〉です。

いつまで寝てるの?
(反応なし)
もしかして、シンデレラ?
死んでないわ。生きてるわ。
(ドアを叩く)開けるよ。
いま機織ってる最中だから、開けないで!
アホか!(ドアを開ける)
ダメぇ、見ないで!
ほぅら、いつもの「小太り爺さん」ジャン。

機織り

 大学受験真っ最中の娘が部屋のドアに「機織り中につき、立ち入り禁止」の張り紙をしていて、そこから着想しました。「鶴の恩返し」っぽい話に駄洒落「シンデレラ?」(死んでる?)と「小太り爺さん」(コブ取り)を2つ加えた、合作といえば合作です。

◇      ◇      ◇

〜 言葉の魔術師、理屈の手品師、視点の道化師 〜
▷ お題はバレンタインデーです    
▷ かぐや姫の婚活事情        
▷ 「がんばりたいと思います」の構造 
▷ ガリレオ君とガリガリ君の流れ星論争

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