舟を編む
半月ほど前、急に小説が読みたくなって、近所の図書館へ。ぶらぶら書棚を見て回り、三浦しをん著の「舟を編む」を借りてきました。ずいぶん前、出張途上の機内で同名の映画を見たことを思い出したのです。しっとりとした素敵な世界観がよかったし、板前姿の宮崎あおいさんも美しかった。
私、読みながら結構、笑いました。乾いたユーモアとまではいかないけれど、笑いを取るタイプではないユーモア。普通の人たちの人間臭さが、可愛くて、可笑しくて、この小説は、そういう世界観を持っているのだなあと思いました。それがあの映画の「しっとり」だったのかもしれません。
主人公は大手出版社で辞書編集部の馬締光也。彼が13年をかけて国語辞典を作る過程が描かれています。登場人物に悪人はなく、皆がそれぞれ、不安や自信の無さを抱えながらも、言葉を扱う仕事に向き合う中で、自分を見つけ、己にとっての適材適所を見つけ、一心に仕事に取り組んで、すばらしい国語辞典を完成させていきます。辞書の紙を作る人の話もありました。語釈に対する意見の違いをディスカッションする場面は、特に興味深かったです。
私も言葉に関わる仕事を長くしてきたので、辞書には、ずっとお世話になってきました。主人公の馬締光也には、モデルとなった人がいるようです。主人公のような、言葉の亡者のような人たちは、実際に存在するのでしょう。私たちはいつも、何かを伝えたいと思って言葉を紡いでいるけれど、それは、こういう人たちの地味で大変な労働の成果に支えられていると思って感慨深かったです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?