ゲンロンカフェの備忘録 初参加・初質問の反省と補足・蛇足

呉座勇一×辻田真佐憲×與那覇潤「開かれた歴史実証主義にむけて──日本史学のねじれを解体する2」 https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20220610

現地で参加・質問した備忘録として。

Q.「歴史」それも広く国民に共有されるような物語を実証主義も踏まえた上で今後、構築していくのだとしたら、そこに歴史の語り手である著者の属性 -つまり作家なのか学者なのかジャーナリストなのか、など- が介在することの意味とは。大多数の読み手にとって、その定義づけは無意味ではないか。
(ということを言いたかった汗)

これは全く現地で思いついた質問。以下のようなバックヤードがあっての発想であろうと思う。
かつて私自身が研究室にいた頃、もっと前の学部生の時代からだろう。ワリと議論のできる先輩・同輩は「Aさんは何々新聞の記者で~」とか「B先生はC弟子だから~」といった文脈で語ることが、既にある意味一般的だった。そこに同じような語り口で参加できることに喜びすら感じた笑。軽薄笑笑。一方で心のどこかで「それ踏まえないとできない話しなの?」「議論の本質じゃないよね。確かに深める話題ではあるけど」的なことも常に頭の片隅にあった。

で、この日の議論に引きつけて考えると、である。誰が何屋で、という点が議論で触れられるのは、ハイコンテクストを共有するお三方ならむしろ当然であるし、聞き手の私もそれを楽しんでいるのもまた事実であった。誰が書いたなんという本で、そこにはこんな話があって、仲間に誰と誰がいて…という話題で、その「誰」の名前が聞いたことがあり、何なら読んでいる名前でもあったりするからだ。ただその中で思い浮かんだのが、かつてのモヤモヤの記憶、「誰が言ってるの?って重要なの??」…「誰」の名前を知らない、例えば意識高いけど知識がついてってない大学3年生の頃の私は、そのやりとりをどれだけ楽しめるだろ?みたいなのに近い。

こうして質問が生まれたのは、第1回からの通奏低音としてのテーマ、歴史を語ることを社会に開いていくこと・開かれた社会で共有できる歴史を語ること、との関連性からであろう。
実証的かつ広く受け入れられる歴史をつくるために、
・Xさんはジャーナリストだからこのくらいの認識で~
・Y氏は編集者だから俯瞰的な見方が~
・Z先生、アカデミズムの人なんだからこういうのは~
的な視点が語られることの意味・意義を知りたかったのだと思う。

ゲンロンカフェに足を運ぶ人、シラスに課金してライブ見る人なんてのは、辻田さんの述べた月間に読む本の数が平均0~2冊の85%の平均的日本人/いまではない15%の方にくくられる、その中でもより「意識高い」数%の人だろう。このトーク、私は「その平均的日本人≒85%に楽しんで読みつがれるそれなり実証踏まえた歴史、やっぱほしいじゃん?かつて司馬遼太郎とかがやってた的な??それってどんなのよ~?」というものを探る試みなのだと理解している。
仮にその物語を書く(生み出す)シン・司馬遼太郎が作家なのか研究者なのか、メディア出身なのか?っていう属性を語る重要性を知りたかったのだろう。(2回目)

だから辻田さんの提示してくれた視点というのは合点がいく。私が上記のように大学の中の人時代に文脈を共有して議論していた意味を、言語化して定義してくれた、と言っていい。
つまり85%に届けるために、15%を、中でも立ちはだかる一番近くの同業者(査読者的存在と呼べるだろう)を「なるほど納得」と言わせねばならず、そのための手段としてのハイコンテクスト=著者の出自・属性なのだ、と。

その上で、今回めんどくさいツッコミをしてくる人達対策として基礎的な議論の回として先人たちを紹介し、今後じゃあどう書くか?みたいな議論へ展開を…という発言を引き出せたこと、シリーズ化の展望が明確に示されたことは、また光明でもあった。

ところで私自身の考え方としてはいみじくも與那覇先生の言ったような、誰が語っても同じになる歴史、みたいなものへの憧憬がある。「完全事実!100%ファクト!!」笑
ただ今回、この回答をもらった時、想起したのは教科書だった。 つまり普遍的で誰しもに共有される国民国家の歴史たるべき物語だろう。一方で教科書とは、語り口や文章などは問題にされず抽象化されて残らないものであることも、その傍証でもあるのかも。
まさに「面白くない」歴史ではないか!(このイベントでいう「無」の極み!!)
「どうしてそこまで自然科学的に、歴史というものにファクトを求めるのか?」という與那覇さんの投げかけは、もう一度私自身反芻してみないといけない。

こういったわけで、よりつっこんだ質問も実は思いついてはいたのである。
でもね…ゲンロンカフェ童貞をこの日まさに卒業している最中の私には、それは少しハードル高かったんだなぁ~(嘆息)

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