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よかったことないね

3連休明けの月曜日、山積みの仕事から逃げるようにしてPCを閉じて自転車を漕いだ。

never young beachのライブに行くのは1年以上ぶりだった。カレンダーを確認したら去年の7月に行ったきりだ。


当日はあいにくの雨だったが、入り口前に置かれた傘立てにぎゅうぎゅうに傘が詰まっていて、大きな花束みたいでなんだかうれしかった。



新アルバム「ありがとう」に収録された曲たちを最初に聴いた時の印象は「あ…あったけ〜…」だったのだが、今回初めて生で聞けて、雨で冷えた体が内
からじんわりと温かくなるような心持ちだった。

これまでのアルバム(例えばfam famやYASHINOKI HOUSE)は、20代前半から後半の青年たちの生活のとりとめもない生の姿を、そのゆるやかな輝きを、切り取ってぎゅっと閉じ込めているような印象を受けた。

2度と過ごせない刹那に煌めく期間を、その一瞬で過ぎる時を、時計の針を最大限に遅くしながら進めている青年たちの日常というか、「いつかこの日々を懐かしく思うんだろうな〜」とか頭ではわかっていながらも、「でもなんかこのいとおしい瞬間、なんかわかんないんだけど、永遠に続きそうじゃね?根拠はないし、まあ続くわけないんだけどさ、え、お前もそう思ってた?はは」みたいな会話が、日が少し西が傾いた海辺のまっすぐな道路の上でされてそうっていうか、なんていうか、何言ってんだ?

そういう青年のやるせなさと、そこに残る甘やかな少年らしさが混在しているような印象をうけて、すごく瑞々しい気持ちになれた。


ただ今回のアルバム、なんか、なんか、大人…!と思った。
すべてを等しく許して包み込む優しさがあって、その優しさは悲しさを知っている人しか出せないでしょ…!という渋みもあって、青年が30代半ばに差し掛かって丸く深くなった姿を想像せざるを得なかった。(そう思って安部勇磨の年齢を調べたら33歳だった)


そんな新アルバムの曲たちの深く優しいあたたかさと、既存のアルバムの曲たちの思わず体を揺らしてしまうようなジューシーさ、(ジューシーさ?)そしてメンバーと観客の音楽をそのまま楽しんでいる姿に包まれて、とても楽しいライブだった。久しぶりにライブ中に「んあー!」と声が湧き出た。



私の少し前方に、2人組の若い男性がいた。

2人とも同じリズムで揺れていてとても可愛らしく見ていて幸せな気分になったのだが、fam famの演奏中、「昔はよかったよだなんて よかったことないね」の部分で、2人が顔を見合わせて強く頷いて笑いながら「よかったことないね」と口をパクパクしていて、それだけでもう私は…非常によかった…



昔はよかったな、と数年後に回顧する際は、この映像を思い出そうと思う。

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