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【人財育成論第9回】日本社会で大谷翔平を育てる方法②:ビジネスにおける二刀流

友人がこんなことを言っていた「専門外のフィールドで他流試合、苦闘することで能力があがる」と。

ここでも取り上げている野球選手の大谷翔平さんの「二刀流」にあてはまる考えでしょう。彼はアメリカでは「革命的アスリート」「革新的な先駆者」「異次元」という評価を受けています。アメリカでは「一人二役」を平然とこなす超人を熱心に応援する雰囲気です。一方、日本では当初多くの人から否定的な評価をされていました。一部の野球人は肯定的で、例えば松井秀喜さんは二刀流について「これまでほとんどいなかったわけだから、無理だと言うこと自体がおかしい。前例のないことを否定できない」と話し「常識と思われていることを突き詰めれば、中には覆ることもある」と主張していました。

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大谷さんに見る二刀流のその可能性

大谷さんのような二刀流は、そもそも組織におけるメリットは大きいものです。日ハム時代の監督であった栗山さんは「ドラフト1位を2人獲れたようなもの」と発言しています。人数枠を持ったプロ野球球団にとってはメリットがあるということで、大谷さんの出現以来、米球界全体がそうしたタレントの発掘に積極的になっています。

また、この二刀流は多くの野球選手の心をどうやら指摘したようです。日本でも今夏の甲子園でも愛工大名電の田村俊介さん、千葉学芸の有薗直輝さん(日本ハム2位指名)も口にしたようです。

二刀流について整理しましょう。メリットとしては以下があげられます。

①個人
・相互に打者・投手心理を学べる
②チーム
・二刀流の選手がいれば二人分の活躍をしてくれる
・話題になり、スターが輩出され、経済的にも潤う

デメリットとしては、以下になります。

①打者:
・他選手や球場施設と接触する機会も多く、厳しい内角攻めで死球を受けるケース
・投球腕へのデッドボール
②投手:
・肩やひじなど、ただでさえピッチングでの故障リスクが高い
・打者での外的要因での故障リスク
・様々なバランスを崩す
③チームと個人
・常に勝利が求められるチームとは相性が悪い

大谷さんの場合、サイズ的に体格が大きく、強靱なハムストリングスを持つ下半身は強固です。それに加え、スムーズな動きを獲得していて、インサイドの厳しいボールにもバットがきれいに出て体勢を崩されても対応できるそうです。高校時代からの無理のない練習、体に合わせたトレーニングが実を結んだのでしょうか。

実際の専門家評価としては、筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター整形外科の馬見塚尚孝講師(整形外科医)の見解がありますのでここで紹介します。WEDGE誌の玉村治 (スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト)さんの記事で紹介されていますが、馬見塚さんは「投手と野手では主な動作に違いがあるので、使用する筋やストレスを受ける部位が分散する。投球では肩肘を痛めやすいが、打撃では腰椎を痛めやすい。このため、トータルの運動量を投手専門選手や野手専門選手と同等にするように配慮すれば、どちらかを専門にしている選手に比べ同じ部位にかかるストレスは減らすことができる」という意見を提示しています。

トレーニングでの負荷がうまいように分散できれば(そこが難しそうですが)、可能になるということです。

ビジネスに見る二刀流のその可能性

さて、ビジネスにおける二刀流の可能性を見ていきましょう。前提に、固定的な考え方を変えるということです。つまり、一つの事柄に専念すれば上達するという考えは正しいのか?ということに疑問を提示することです。それを考えると、大谷さんのように双方の立場を経験した方が学習効果は上がるかもしれないと思った人も多いでしょう。

例えば、以下のようにビジネスでは利害が対立するものです。

営業担当⇔法務担当
製造担当⇔営業・マーケティング担当
人事評価など管理する側⇔管理される側
バックオフィスで経理などをする側⇔経理処理を頼む・お願いする側

まー。愚痴ったりしがちですよね~。ただ、皆さんビジネスパーソンは立場が違う面での経験を仕事に活かしてきたのではないでしょうか。税務対応を自分ですることになって、今までお世話になっていた経理の担当者の苦労がわかり、当時は迷惑をかけたのに優しくしてくれていたなあ・・・などと気が付いて後から感謝したという人も多いでしょう。

専門特化するとやはり、相手のことがわかりません。筆者は会社の経営者であるのですが、営業を担当すると、その喋りや対応の下手ぶりを痛感します。営業担当に指示したり、期待していることを自分でやろうとしても「できない」のです。そうした反省をし、非常に多くの学びがありました。他流試合は自分で成長をできることもできるのです。実行するにはバランスが必要ですし、会社のリソースや戦略もあり、二刀流をする余裕がないことも多いですが、やってみると2面からの視点を学べたりするわけです。

また、未来のキャリアの面でも二刀流的なキャリアが必要になってくるかもしれません。1つの専門に専念するのもいいのですが、その専門が時代遅れになったり、自分自身に適性がなくなった時に、1つの専門ではキャリアとしてはリスクを迎えるかもしれません。その意味でも二刀流は今後のキャリアにおいて重要になってくるのではないでしょうか。

コンサルタント、アナリスト、リサーチャー、人事総務担当、企画・営業、経営者、研修講師、NPO活動家を兼ねる自分は七刀流なんてできていませんが、それなりに成長している実感があります。

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