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大宮見取図#5 友達の家に遊びに行って、新しい音楽に出会う。そんな感覚が味わえるCDショップ。

●モアレコーズ 
橋本貴洋(はしもと たかひろ)さん 橋本由紀子(はしもと ゆきこ)さん

 「音楽を聴く」という行為が、インターネットを通じたものが主流になって久しい昨今。
 
そんな時代に抗うかのように大宮でCDショップを運営しているのがmore records(モアレコーズ)さんです。
 
音楽セレクト、サービス展開、接客などで独自路線をひた走るCDショップは、どんな想いで運営されているのか。
店主の橋本さんにお話をうかがいました!



業界初!CDのサブスク。

お店に入ると、たくさんのCDジャケットがこちらを向き、手書きのPOPとともにその楽曲の魅力を主張してきます。
青春時代の音楽をCDで過ごしてきた人であれば、きっと大好きな雰囲気です。
 
 
モアレコーズさんには、店主の橋本さんが独自の感性でセレクトした新旧、ジャンルを問わないCD約3800タイトルが並びます。
 
目的買いのお客さんはほとんどおらず「なんとなくこんな感じの音楽が聴きたい」という要望に応えていくのが、モアレコーズさんのメインスタイルなんだとか。
 
 
そんななか特に注目したいのが、毎月モアレコーズさんが厳選したCDが自宅に届く「CDサブスクリプション」のサービスです。
 
橋本さん「人って、たくさん選択肢がありすぎると選べないんですよ。音楽もそう。それなら信頼できる誰かが選んだ1曲の方が聴きやすいですよね。以前お花のサブスクを知ってすごくいいと思ったんです。イメージはその音楽版です。普段忙しくて音楽を探す時間が取れないけど、新しい音楽を聴きたい! という方にオススメです」
 
 
サービスの利用者は現在すでに80名超え。
 
届くCDの音楽ジャンルは毎回違っていて、CDはもちろん届いてからのお楽しみ。
基本的にインディーズの新作が届くため、多くの人が知らない、かつポテンシャルの高いアーティストに最短距離で近づくことができます。
 
橋本さん「自分では普段買わないCDが毎月届きます。それで『いいな』と思えば世界が広がる。そんなアナログな体験にこそまだまだ可能性があると思っています」
 
 
他にも、モアレコーズさんではショップのBGMセレクトサービスも展開しており、大宮にある古着店や雑貨店用に季節ごとのBGMをセレクトしています。
 
また、オリジナルレーベルからは、世界中から選りすぐったアーティストをリリース。
 
さらにコロナ禍前には、フリーのインストアライブイベントを毎月開催するなど、多様なカタチで多くの人に良質な音楽を届けています。

モアレコーズ店内
心地よい空間が広がります。

自店のためを思うからこそ、街を活性化。

モアレコーズさんの創業は2011年。
もともとは東口にあった大宮ロフト内の大手CDショップに勤めていた橋本さんは、大宮ロフトがなくなるのをきっかけに独立しました。
 
橋本さん「ネットが普及することで、より人は自分の見えている範囲だけで生活するようになり、同時に質が高いものしか生き残れなくなると思いました。そんなときに、多くの人が知らない質の高いものが提供できれば、小さなお店でも需要はなくならないと考えたんです」
 
 
開業の立地になぜ大宮を選んだのでしょうか。
 
橋本さん「最初は東京を考えたんですが、東京は情報が多くすぐに飽きられてしまうし、家賃も高い。大宮は、北関東の感度の高い人が集まるイメージで、ニーズがあると感じました。交通の要衝でもあるし、北関東からも東京からも来てもらいやすい。加えて大宮でこれまでにないセレクト音楽の文化を根付かせたいという思いもありました」
 
 
独立当初、自らの商売を思うからこそ「街」単位での活性化を考えたのだとか。
 
橋本さん「前職時代は毎日ロフトと大宮駅との往復だったので、大宮の街を知らないなと感じましたし、大宮にはそんな人が多いと思ったんです。ここで商売をするなら、まず大宮の街に降りてきてもらう必要がある。うちは北関東からのお客さんが多いのですが、来てくれたお客さんは大宮を知らないわけです。せっかく来てくれたのだから、そのまま地元にとんぼ返りではなく大宮の街を楽しんでいってほしいんですよね。お客さんが大宮の街に来る目的をうち以外でも持ってもらえたら、大宮の街に来ていただける頻度が上がりますよね!だったら近隣の衣食住のショップで協力し合えたらいいなと考えました。まあすぐにはうまくいかないので、まずは自分たちができることをやろうとちょっと範囲を広げて埼玉県内のお店を集めて、さいたまスーパーアリーナのTOIRO(イベント会場)で2日間、お店を知ってもらうためのイベントを開催しました。創業メンバーや前職時代の仲間にも手伝ってもらい、70店舗を集めることができました。準備から運営までめちゃくちゃ大変でしたが、多くの人にお店を知ってもらういい機会になったと思っています」
 
 
「イベントでは音楽もアートもフードも一緒くたで楽しんでもらうことが大事でした。『映画だけ』とか『買い物だけ』のような単体の楽しみ方より、複数の方が人は集まりますから。街も同じで、音楽だけじゃなくて、アートもフードもお買い物も楽しめるということを外から来る人に伝えたいって思うんです」と続ける橋本さん。
 
大宮の街を普段から複合的に楽しんでもらいたいというメッセージも込められています。
 
それは、直近で開催される「アートフルゆめまつり」にも近い考えがあるように感じました!

ネットにはない「会話」を楽しんでほしい。

モアレコーズさんが最も大切にすることとして、橋本さんは迷いなく「会話」だと話します。
 
橋本さん「ネットではできないこと、つまりここでしかできないことは、やっぱり会話だと思うんです。会話しながらオススメできる音楽も出てきます。その人から疲れを感じたら癒しの曲を、『車を買った』なんて話が出ればドライブに合う曲を提案します。最近は学生が就職の相談なんかにも来ますよ(笑)。ここに来るお客さんを見ていると、人って、会って話したいんだなと常々感じますね」
 
 
橋本さんのお店の理想像は「友達の家に遊びに行くイメージ」だそうです。
 
橋本さん「友達の家に遊びに行ったときに知らないCDを聴いて、それを好きになったりするじゃないですか。そんなふうに、気軽に音楽と出会えるお店としていられたらいいなと思っています」
 

店内POPはすべて手書きにこだわる。

向上心が尽きない橋本さんは、今後もよりよいお店であり続けることをめざし、大宮の街としての魅力アップにもさらに力を入れていきたいと語りました。
 
橋本さん「モアレコーズのお客さんは遠方からの人が多く、まだまだ地元の人が少ない印象です。遠方からでも近隣からでももっと多くの人に来てもらえるように、街としての魅力を伝えることが大切だと思っています。大宮はLittle東京ではダメで、大宮ならではの価値を示すべきです。そのひとつが、自分たちのような個人店だと思います。もっといろんな個人店が出現して、街としてより楽しくなればいいですね。そのためにも、自分たちももっとチャレンジしていかないとと、静かに闘志を燃やしています」
 
橋本さんは来てくれたお客さんに対しては「ここの店のランチがオススメだよ」とか、「大宮公園の小動物園が無料なのにクオリティが高すぎる。」とか、「氷川神社はおさえてね」とかよく紹介しているとのこと。
お客さんも「じゃあ今から行ってみます」と立ち寄ってくれる人が多いのだとか。
普段から街の情報収集に余念がないそうです(笑)。
 
 
 
自分たちのお店に加え、大宮の街としての魅力も発信しているモアレコーズさん。
ネットにはない音楽を楽しむとともに、一緒に街も楽しんでみたくなるお店ですね!

この階段上った2階です。


モアレコーズ 店主  橋本貴洋(はしもと たかひろ)さん  橋本由紀子(はしもと ゆきこ)さん埼玉県さいたま市大宮区仲町2-63 金澤ビル2Fモアレコーズ 店主  橋本貴洋(はしもと たかひろ)さん  橋本由紀子(はしもと ゆきこ)さん埼玉県さいたま市大宮区仲町2-63 金澤ビル2F

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