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ライター仕事で気を付けていること~19時以降は原稿を書かない、の巻~

撮影:東畑賢治

「深夜に働いちゃっている忙しい俺。夜明けまで突っ走るぜ」状態

 夜に文章を書く楽しさと効率の良さは知っているつもりです。大半の人が寝静まっている時間帯にパソコンに向かっていると、背徳感と優越感のようなものが妙な力を呼び起こすのです。「夜中まで働いちゃってる忙しい俺。夜明けまで突っ走るぜ」状態ですね。実際、普段の倍ぐらいのスピードで原稿を書けたりします。
 しかし、17年以上フリーライターをしていると、少なくとも自分にはこの働き方は合っていないとわかります。気を緩めると「夜の魔力」に惹きつけられてしまいそうになるので、自戒のために2つのデメリットを書かせてください。①安定した品質を保てなくなる、②長期的に見ると生産性が落ちる、の2点です。

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夜に書くと、数本に1本ぐらいの割合で「気持ち悪い」文章が出来上がる

 まずは、原稿の品質について。夜中に恋文を書くな、みたいな諺があった記憶がありますが、文章の質が必ず悪くなるのかと言えばそうでもありません。やたらに集中力が増した状態で書いているので、なんだか濃密な文章になったりして、それが功を奏す場合もあります。例えは悪いかもしれませんが、麻薬の力を借りた絵画や音楽のようなものです。
 ただし、数本に1本ぐらいの割合で、我ながら「気持ち悪い」文章が出来上がります。深夜に働いている自分に酔っているために、自慢もしくは卑屈の感情が出たり、私憤を晴らす目的の文章になったりしがちなのです。僕は自分に甘いほうなので、朝に読み返して違和感を覚えたとしても「これはこれでいいかも」などとスルーして、そのまま納品OR発表してしまいかねません。当然、トラブルの元になります。
 誰かの目に触れる文章を書く際に最も必要なのは平常心だと僕は思います。社会の中で生かされている自分を認識している心理状態、とも言い換えられるでしょう。それは規則正しい生活と心身の健康からしか生まれません。
 平常心を保って文章を書くと、その品質は安定します。安心して読める文章になりやすいのです。平凡になりがちだとも言えますが、独りよがりな文章で他人と自分を傷つけるよりはマシだと僕は思っています。

一時的に書くスピードが上がっても、体調を崩すと中長期的な生産性はがた落ちする

 2つ目は、生産性について。冒頭で「夜中に原稿を書くと普段の倍ぐらいのスピードになる」と書きましたが、それはあくまで一時的なものです。昼は寝て夜に働く生活習慣が確立しているなら別ですが、僕の場合は昼にインタビュー取材があったりするのでそういうわけにもいきません。
 19時ぐらいまで書いていると、夜の気配を感じて集中力が増すのを感じるんです。でも、そこで自制してパソコンを閉じることが大切。原稿書く作業は最終段階では少なからず興奮するので、食事や休息を挟んで心を静めないと寝つきが悪くなります。
 睡眠や食事が乱れると、必ずと言っていいほど体調を壊しますよね。僕の場合は、頭痛が続いたり風邪を引いたりします。もちろん仕事になりません。生産性はがた落ちしてしまいます。
 1か月以上の中長期スパンで自分を観察すると、日中に原稿を書いて夜は楽しく食事して風呂に入って寝てしまうことが最も労働生産性が高いことがわかります。心配性の僕は原稿締め切りのはるか前に執筆しているので、「残りは明日」で何の問題もありません。

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平凡な生活習慣と労働習慣を維持して、死ぬ1年前ぐらいまで働いていたい

 最近、原稿用紙(僕の場合はWord)に向かうのは「7時から19時まで」と決めています。もちろん、途中でメールを書いたりYahooニュースを見たり、インタビュー取材をしたりテープ起こしをしたり、散歩したり居眠りしたり、も含めての時間です。
 実際に原稿を書いているのは長くて8時間、平均すると3、4時間だと思います。僕は時速1000字ぐらいで、1本2千~3千字程度の原稿を書くことが多いので、1日で1~3本を生産できる計算です。朝から出張や旅行があるとき以外はほぼ毎日書いているので、現状の仕事量ならば十分にこなすことができています。無理がないので体調も気分も良く、安定した品質の原稿を作れているはずです。
 課題は運動不足や腰痛ですが、それはトランポリンやストレッチポールの導入で改善しつつあります。この平凡な生活習慣と労働習慣を維持して、死ぬ1年前ぐらいまで働いていたいと思っているところです。(おわり)

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