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かけがえのないもの~何度も姿を変えて

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

【初めての恋】
私は知里(ちさと)です。小学4年生。新しい小学校に転校して初めての夏を迎えました。いとこも来てくれて友達とも遊んで楽しい夏でした。

夏休みに夢を見ました。
学校前のマンションの、道の前にある広い階段で私は若い男の人と話をしていました。10代後半くらいかな?大人な感じ。

私は親に無理矢理習わされているピアノが嫌で嫌で。辞めたくて。友達にもよく話を聞いてもらっています。

この男の人はサラサラの黒い髪で髪は長めでスタイルが良いです。
ピアスもしていて少し軟派な感じ。
でも優しくて私に声をかけてきてくれました。

彼にも私は話を聞いてもらっていました。
本当に彼は何も言わずに聞いてくれるだけ。嫌な顔1つせずに。
それだけでも私はすごく楽になりました。

「お兄さんはピアノ習っているの?他に習い事は?」
「ああ、ピアノ習ってるよ。他にも英語と○○と○○と…」
と聞き取れないくらいたくさんの習い事をしている話をしてくれました。

ますますカッコいい。英語とかカッコよすぎるし。私も習いたい…。

胸がきゅんとした。初めてだった。どこの誰か分からない…。名前も知らない夢の中の人。でも確かに私の気持ちが動いた瞬間でした。そこで夢は終わってしまいました。

【救いの手~守ってあげたい人】
私は小学6年生になっていました。半年もすれば中学生。
クラスの雰囲気が悪く、全く授業になりません。私もいじめに遭っていました。
男の子は悪いけどみんな敵でした。女の子ももちろん。みんな大嫌いでした。

このまま中学なんて行って大丈夫なんだろうか?不安しかありませんでした。

帰り道も1人。

学校の裏には森に囲まれた神社があります。あまりお参りに行ったことはありませんが。
しかしながら状況も状況なので思わず長い階段を上り、お参りしました。

その日の夜、不思議な夢を見ました。
私はいつも通り学校に行き、神社の前を通って帰る所でした。

「やあ!こんにちは!」
薄いブルーの袴が似合う同い年くらいの男の子がハキハキと声をかけてくれました。神子さんだと思います。

2年前夢の中で声をかけてくれたお兄さんを思い出しました。
姿はあまり似ていないけれど何となく爽やかで優しそうな所が。同じ猫顔だし。髪の毛はこの子の方が少し癖がある感じでした。それになかなかカッコよかったです。

しかしながら私は男の子が苦手なので、頭を下げただけでした。そもそも初対面なのに何故声をかけられたのか分かりませんでした。

それだけの夢でした。朝になりお母さんに起こされ、いやいやながら登校しました。

そんな時、登校中に頭の中で不思議な声が聞こえました。
「大丈夫?無理してないかな?ちゃんと見守っているし助けるからね。」
と。

(誰?)

と思いましたが、会話の感じでは同い年くらいの女の子だと思いました。神様と呼ぶと返事をしてくれました。
心の中でいろんなお話しが出来ました。

私は学校で独りぼっちでしたが彼女のお陰ですごく心強くて、何が起きても平気になりました。

ある日先生が私のために話し合いをし、それが余計な事だったらしく、クラスがさらに荒れてしまった事がありました。
いじめの主犯格が特に暴れて反論していました。

(もう明日学校に行きたくない…。)

私はその日の夜、心の中で独り言を言った。

お母さんやお父さんはすごく厳しい。そんな事を言っても怒られるだけ。お姉ちゃんからも嫌味を言われるだけ。

私の味方は「彼女(神様)」しか居なかった。

「分かりました。いじめの主犯格の子をきつく叱っておきます。安心して明日学校に行って。その代わり明日の放課後に神社に行ってくれるかな?」
彼女は私の親友のようになってくれました。

神社に?
「分かりました。」

(大丈夫かな?)

次の日恐る恐る学校に行ってみました。
すると信じられないくらい、主犯格の男の子たちも大人しくて何も意地悪をしてきませんでした。

(彼女、すごい…。)

とりあえず約束通り放課後には学校裏の神社に向かいました。

何だかふっと体が軽くなった気がしました。まるで夢を見ている時のような。
一体どうしたのだろうか?

私は長い階段を上がっていきました。

本殿から凄い音や罵声が聞こえてきました。
若い男の人が抵抗している声です。

この間出会った神子さんが本殿から出てきて、怪しいフードをかぶって全く顔が見えない者達が神子さんを捕まえていました。

その前には魔王のような銀髪の黒服の大きな男が待ち構えていました。

横には銀色の大きな棺のような乗り物がありました。明らかに地球人では無さそうです。

上玉の高級料理と言われた神子さんはその魔王の前に突き出され、魔王は神子さんの唇を吸い…。
神子さんは苦しみ始めて…。

私は生垣に影に隠れてただ見ているだけでした。。硬直して動けなかったのです。

「さあ!彼を助けて!動くのよ!」
「そんな事を言われても…私だって怖い!」
「あなたなら出来るわ!もうすぐチャンスが来るはず。」

私の前に剣が落ちてきました。

剣など扱った事ありませんでしたし、生兵法はけがの元だと父親から良く言われました。

(どうしよう…。)
私は困っていましたが、
「早く!」
私は突き出されてしまいました。

もうやるしかない!

「その人を放せ!」
私は怒鳴っていたが、それよりも早く魔王らしき大きな男が苦しみだしました。
神子さんの血肉がその男の力を桁違いに上げ、若返らせてしまう事が分かったようです。
神子さんの力があまりに強かったようです。

一旦神子さんは解放されました。

私はそばにあった怪しい乗り物に乗り、出来るだけ遠くに行くように操作して飛びました。
とにかく私の家へ。

「助けてくれてありがとう。」
「とんでもないです。ゆっくりしていってください。」
私は神社に戻り、状況を確認しましたが、魔王一行は消えていました。
しかしながらまた襲ってくるかもしれません。

神子さんのおそらくお父さんとお母さんがおろおろしている姿が見えました。
(どうしよう…上手く説明できない…)

そう思っていたら私はいつも通り、学校から帰り、家の前に居ました。
妄想?幻を見たのかもしれません。
不思議でした。

【希望ある未来へ】
私の不思議体験はずっと胸にしまっていました。
そんな私ももう高校生。今年入学しました。

「彼女」の声もあまり聞こえなくなりました。意外に中学時代はそこそこ楽しく、ぼっちになることもありませんでした。
だから「彼女」はきっと他の人を助けに行ったのでしょう。

試しに何か困った時に「彼女」に声をかけてみたら、返事があったかなあ?という感じです。

高校には中学時代仲の良かった先生が薦めてくださって受験しました。
ここならなじめるし、大丈夫だと思うと先生からお墨付きをいただきました。大学もついているし。

ところがどっこい、入学早々私はぼっちになってしまい、彼女が居た時の事を思い出しました。

一旦は退学しようかと思いましたが、私は両親や姉から責められるばかりで家庭の雰囲気も悪くなっていきました。

私のせいでこんなことになってはいけない、頑張って行こうと私は思いました。いじめには遭っていないし大丈夫。

そんな時奇跡が起こりました。
あの神子さんの彼が隣のクラスに居たのです。それも同じ通学バスだそうです。

夢の登場人物だったはずの彼が実は実在していたのです!髪は少し明るめの茶色でした。

彼の名前はレン。優しくて強くて端正な顔が特徴のみんなの人気者です。音楽の才能も凄いとか。

「彼女」の仕業かもしれません。

気が付くと彼の事を好きになっていました。
なんと音楽の授業でも一緒になりました。

リコーダーの試験で二人組を組まないといけず、しかしながら私はぼっちだったので誰とも組めずに困って先生に相談しに行ったのだ。
すると、

「二人組組んどいてって言ったやんか!」
と怒られただけでした。何の解決にもなりません。ますます困りました。
そんな時、

「藤本!」
とリコーダーを持って爽やかな笑みを浮かべて声をかけてくれました。神子さんコトレン君が。

一緒にやろうという事で。

「レン君ありがとう。よろしくね。」
「こちらこそよろしく頼む!」

レン君は他の友達とも二人組を組んでいましたが、私とも組んでくれたのです。
助かった…。

それをきっかけにレン君と登校や下校でもバスで一緒に帰る事になったり電話やメッセージのやり取りなどいろいろするようになっていきました。

話していない事もたくさん知っていて…。
何故だろう?

もしかしたら「彼女」の正体もレン君だったのだろうか?それか「彼女」とレン君が組んでいたのか?
今となっては分からないけれど奇跡が起こった事は間違いありませんでした。

この日から私は同クラスの友達も出来、他クラスの友達も出来、レン君の友達とも仲良くなり、学校が楽しくなりました。

レン君と希望溢れる未来を作っていきたい…。そしてもっともっと仲良くなっていきたいです。感謝







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