詩/原点

原点

十三歳、天文学者になりたかった。教室に座っていることができずひと気のない便所でうなだれた。銀河中心はブラックホールだと直観していた。うずくまり人刺し指を咽頭めがけ突き立てた。教師は何も言わなかった。医者はトランキライザーをくれた。効かなかった。生き残るすべなど誰にも教わらなかった。いつかインドへ行こうと思った。

十六歳、死へ。昼休み、図書室横の便所で糞をしながら、それでも生きていていいのだという言い訳をさがした。

一日の苦労は、その日一日だけで十分である。
(マタイ6:34)

五月十四日、
やさしい人の言葉を見つけたがしかしその日一日の疲れは、一夜の眠りを食べ尽くしなお降り積もり種子となった。さがし続けることを、書き続けることを強いた、 それを恵みと呼ぼう。

夜の来た日、
とうとう狂ってしまったとつぶやいてみたが、狂ってしまった自分を見つめる目は不思議に怯えず、これが病いであるならば精神という現象そのものが病いだと揺るぎなくささやく、お前は誰だ

膣口から入り、見まわせ。内壁から沁み出してくるので、人間の体には、心には、表裏がないと分かる宇宙は一つの連なり。

静物画の前に立つ

ありがとうありがとう向日葵(ひまわり)の黄色は闇の中にあっても黄色く光っている

誰もいない、夜を夜のうちにおいて知覚するものたち
お前は誰だ

朝の来ない夜をすら進んでいける目を持っている


1996年11月

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