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「データアーティスト」でありたい

データ分析をしている時の僕が何を考えているかというと、「この世の理を解き明かしたい」というただの好奇心で満たされています。
データの向こう側にある、まだ誰も知らない真理に触れたいという、それが分析の最大のモチベーションです。

何十店舗、何百店舗と展開しているチェーン店の、売上げのデータと立地のデータを分析して、どんな立地要因がどのように売上げに関係しているかを解き明かす。
それが僕のメインの仕事なわけですが・・・・

例えば、

・乗降者数何万人の駅から、何m離れるごとに売上げはどれくらい減少するのか
・周辺人口が何人増えるごとに売上げはどれくらい増加するのか
・お店の看板がどの位置にあると売上げが最大化されるのか

・・・みたいな。

こういうの、しかも業種業態によって全然違ってて。

某ファストフード店が、「近くにパチンコ屋があると売上げが高くなる」という規則性を発見して・・・・そこまでなら感覚的に分かるでしょうけど、じゃあどれくらいの規模のパチンコ屋が、お店から何m以内にあると、売上げに実際いくらの影響があるのか、とか。

クリーニング屋って、駅前にあるよりもスーパーに近い方が売上げが高いよねっていうのはイメージがつきやすいだろうけど、じゃあそれも、どれくらいのスーパーと、どういう位置関係にあったらいいのか、とか。

そういうことを細かく定量分析して、「だからこの場所に出店したらこれくらい売れるよね~」って、精緻な売上予測システムを作れるかと。


今流行りのAIには、決して無理なんですよ。

AIには、「因果関係」を見極める力が無いから。

ビッグデータがどれだけもてはやされたとしても、それらのデータの中には、「因果関係はないけど偶然にもすごく強い相関関係にある」みたいなデータが山ほどあるんです。

そういう、たまたま相関関係が強いデータをピックアップして・・・・
例えば、「歯医者が多いエリアは居酒屋の売上げも高い」みたいな、意味分からん分析結果しか、AIには出すことができません。

ちゃんとした因果関係に基づく分析、論理の通った売上予測は、どれだけAIが発達しても、まだまだずっと人間にしか実施不可能なもの。


だから、面白いんじゃないですか!!!


毎回毎回、クライアントからデータをもらうたび、それらの立地データをリサーチして取得し、分析をするたび、心が躍る。


「どうしてこの店舗はこんな変な場所でこんなに売上げが高いんだろう?」
「どうしてこっちの店舗はこんなに良い立地で売上げが奮わないんだろう?」

ひとつひとつのお店の売上げと立地データを見ながら、仮説を立てていくんです。


「そうか!変な場所に見えたけど、このお店はちょうど近くの団地の人たちが駅に向かう時に必ず通る交差点なんだ!」とか。

「駅前だから売れそうに見えたけど、この駅を使う人のほとんどは東口側にいるのに、このお店は西口側じゃ、そりゃ売れないよね」とか。

そういったことを、仮説立てたらその仮説を裏付けられる数値を探したり、定性データをなんとか数値化したりして、重回帰分析に当てはめる。
それらがバチコーン!と当てはまって、相関係数が跳ね上がる時の感覚は、もう本当にやめられない。

多分、パチンコ好きな人が、スロットがピッタリ当たってフィーバーした時の興奮に似ているんじゃないかと勝手に思っています。笑



だから僕は、ただの数字遊びはしません。

「それっぽい」分析をしたって、面白くも何ともありませんから。

必ず、「なぜ売れるのか」「なぜ売れないのか」「どんな要因が関わっているのか」など、お店の立地と売上げにまつわる『真理』を解き明かすために、データ分析をするのです。



「それっぽい」分析、見栄えの良い解析結果みたいなのは、テキトーにやったって出せてしまいます。
そして、まぁ、そっちの方がそれこそ「見栄えは良い」し、何より「スピーディ」に結果が出ますからね、今の時代にはそういうのが求められがちなんですけど・・・・

そんな中でも、もちろんスピード感は大切にすれども、しかしテキトーに数字を合わせにいくのではなく、『真理』を見極めるための分析を、僕は心がけています。

その結果として、良いシステムが出来上がったら、それによってちゃんと売上予測や出店戦略にも活かせますから。
どんなにスピーディに一瞬で結果を出せるAIを使ったところで、因果関係無視の数字遊びになっているシステムでは、何の意味も無いですもんね。

という、そんな感じの人間なので・・・・


正直な話、あまりクライアントとの折り合いは上手くいかないこともあります。
「結果」が欲しいだけの企業さんとは、あまり良いお仕事はできません。

そういう意味では、時にご迷惑をかけてしまうこともあるかもしれないんですが・・・・



しかしそれでも、せっかく自分が、「真理を解き明かすスキル」を習得したのであれば、それを使って様々な「新しい世界」を見たいじゃないですか。


とてもとても、個人的でエゴイスティックで、ビジネスマンとしては信用できない変人かもしれませんが・・・・

居酒屋の立地も、
スーパーマーケットの立地も、
カフェの立地も、
ファストフードの立地も、
アパレルショップの立地も、
ヘアサロンの立地も、
携帯ショップの立地も、
ブランド買取店の立地も、
クリーニング店の立地も、
脱毛サロンの立地も、
パーソナルトレーニングジムの立地も・・・・
etc.etc.

今まで関わらせてもらったすべての業種業態の立地分析について、僕はいつもそういう気持ちで臨んでいます。

沢山のデータを前に、「さぁ宇宙の真理を教えてくれ」と呼びかけるように、作業しているのです。



「データサイエンティスト」という言葉が、世に流布されて久しいですが・・・・

僕はむしろ、「データアーティスト」でありたい。

再現性や確実性を重視する「データ」の取り扱いにあって、芸術性なんてものを入れることを、多くのビジネスマンはきっと良しとはしないと思いますが・・・・

別に、フワッと抽象的な分析をするっていう意味じゃないんです。


データアートの美しさは、いかに本質的な説明変数を見つけ出すかとか、いかにカタくてブレの少ない定義で高い相関を実現するかとか、同じ商圏規模のデータでも「人口」と「世帯数」のどっちを使う方が他の変数とのバッティングが少ないのかとか・・・・

正しく因果関係を説明しようと突き詰めるからこそ、同時に相関係数という数学的な精度も上がっていくという、その絶妙なところをいかに表現するかっていう話なのです。

相関係数だけがヤケに高くても、因果関係がよく分からない変数ばっかり使っている重回帰モデルは「美しくない」って、そう言えるのがデータアートなんじゃないかなと。


僕は、自分で見て、美しくてうっとりしてしまうような重回帰モデルしか作りません。

その美しさは、きっとこの世界を分からない人には分かってもらえないでしょうし、一般の人からしたら、「実際の予測精度の高さ」こそがデータ分析の絶対正義に思われてしまうかもしれないんですが・・・・

それはそれで大切にしつつ、しかし、だからこそ、分析をする時に、「企業のニーズ(つまり人間が考えた要望)」に応えること“だけ”を良しとするのではなく、あくまで「売上げと立地の関係性という真理」を見出だすことに、分析者の僕は主眼を置くべきだと思って、このお仕事をさせていただいています。


きっとこれからも・・・・

いや、こんな時代だからこそ、これからの時代にもこの仕事をしていきたいからこそ、僕はこのスタンスを貫いていこうと思います。

“それっぽい”結果が欲しければ、AIさんがいくらでも答えを出してくれる時代だからこそ。

僕は、そんな中でもまだAIには到達できない『真理』を誰よりも先に味わうために、「データ分析」の仕事にこれからも勤しんでいきます。


立地コンサルというお仕事用にnoteを作った記念に、決意表明的な感じで、書いてみました。

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