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【実録・7,000㌔別居】バリの空が教えてくれたこと シリーズ2

「テメェなんて日本に帰れや!」

あぁ、しまった!と思った。
それだけは言ってはいけないのに。

どこまでも広がる青い空
乾季を目前にして、たまに焦るように雨が降る。

地面を打ちつける雨音をBGMに
私の怒号が響き渡った。

「やめろっつってんだろ!!!
なんでママを困らせることばっかすんだよ!
テメェなんて日本に帰れや!」

移住して2ヶ月。
たまたま一時帰国する日本人が
1ヶ月間部屋をレンタルしていたのを見つけ
緑の多いウブドから海に近いサヌールに移動した。

知り合いも少ない中で、慣れない暮らし
ただでさえ子どもの相手は嫌いなのに
24時間べったり一緒の毎日。

買い物行くのも一緒
近所の散策も一緒
シャワーを浴びるのも一緒。

2歳になったばかりの息子はまだまだ手がかかる。
授乳も続いてるし、まだまだ昼寝も必要。

そんな中で小3になったばかりの娘の
「なんか食べたい」
「どっか行きたい」
「暇〜」
の言葉にイラつく。

私はあんたのエンタメ提供係じゃない。
資金だって限られてるんだもの
節約しながら一日も早く
「非日常」なこの毎日を「日常」にしていきたいのに。

寂しい気持ちが形を変え
弟にちょっかいを出してしまう
そんな娘の心もよくわかる。

けれどその度に
泣いた息子をあやす手間が増え
私の心のインジゲーターは警告ランプを灯すのだ。

この日は
超えてはいけない一線を超えた。

***

「私が先に行って、実際はどうなのか見てくる。
そうすればあなたも安心して移住出来るでしょ?」

いつまでも移住に向けて動き出さない夫に痺れを切らし
半年前にそう切り出した。
頼りないというよりも、「頼れない」ことに深く傷つきながら
と同時に肚の奥にグッと力が入ったのを覚えてる。

人一倍、安定思考の強い夫。
私の好きなスノーボードを始める時も
ネットで事細かく調べ、DVDを購入し
道具を全て揃え、スクールに何度も通い
ひとりで山に練習に行ってようやく私と滑りに行ったほど。

完璧主義なのか、失敗を見せるのが嫌なのか
とにかく石橋を叩いて渡る。
取扱説明書を読まずに組み立て始める私とは対照的だ。
そんな彼が究極の未知の世界である海外移住に
ほいほいと動き出す筈がないのはわかっていたんだけれど。

「なんで私だけがこんなに頑張らなきゃいけないんだよ。。」

私が決めたこと
わかっていたこと
だけど長年の不満も一緒になって
私の心ははち切れたんだ。

「いつになったら、私は頼れるんだよ」

ボロボロと涙が溢れる。
子どもたちに聞こえないように
声を殺して啜り泣いた。

結婚して11年
これほどまでに私は悲しかったのか。
傷ついていたし、怒りは蓄積していたし
呆れ、どこかで憎み、軽蔑をしていたが
その奥にあるのは悲しみだった。

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