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ひとり、待合室で雨とランデブー。

ちょっこりと頭を出した富士山が見えていた朝は、青空が気持ちが良くて傘を持って出るのを忘れてしまった。

わたしは、人にまで傘を持つように勧めるタイプの人間だ。
夫や、例えばその日会う約束をしている友達などにも。
「今日は雨が降るからね。折り畳みは必須だよ」なんて。朝にわざわざ連絡を入れたりして余計なお世話を焼きがちなのだ。

だからと言って、逆に人からは教えてもらえない。
「今日うみが傘持ってないの、珍しいー!天気予報で雨って言ってたじゃん」なんて言われてしまう。
もう、笑うしかない。

何日も前から天気予報をチェックしていて、昨日だって、今夜傘がいることを把握していたのに。

なんてこった、こんなにも荷物が多い日に限って傘を忘れるだなんて。

そして今わたしの上だけ、雨雲がなぜか抜けない。

雨雲レーダーをみて、なんとなく抜ける時間を推測しながら駅の待合室で待つわたし。

いつだって折り畳みを携帯していたわたしは知らなかった。
今どき、100円ショップに100円の傘は売っていないのだ。
全てが300円商品。

お店によっては100円のものも売っているのかもしれないけれど、わたしの知っているお店ではそうだった。 

迷った。
買って帰るべきか、もう少し雨雲が抜けるまで待つか。

いや、迷うこともなかった。
今日の雨は、傘がないと無理なやーつ。

例えばわたしがセレブだったら。
傘を迷うどころか、アプリでタクシーを呼んでいるのだろう。だけどノットセレブよわたしは。

そんなこんなで、まどろっこしいことを経て買った300円のいい傘があるのに判断を迷った。最寄駅で、ひよってしまう。

時は金なり。わかってるんだ、そんなこと。

いつまでも、抜けない雨雲は容赦なくホームの屋根をびったびったと打ち付けている。
久しぶりにきく、びたびたびたーという音の雨。

最寄駅に着いているのに、わざわざ待合室に残っているのはわたしだけなのもなんだかおもしろい。

さて、これからどうしようか。

どれだけ待っても、もうしばらくは抜けなそうな雨雲と我慢比べをするのか、

濡れながら帰ったとしたら、きっと家に帰った途端にすぐに止む、なんてことが起こりうるんだろう。

たったひとつの雨でこんなにも転がされている自分がなぜか嫌いじゃないのもおかしな話し。

充電もなくなりそうだ。
そろそろ帰る、という選択肢を選んでみることにする。


なんて、書いていたら少しだけ、ほんの少しだけ雨が弱まった。

荷物を守るため、きっと半分だけ濡れるだろう体はすぐに湯船に浸かってあたためよう。

今日は、晴れのち雨だった。

だけど、雨を感じた。いい一日だった。
そんな1人反省会も盛り上がりそうな夜。

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