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母の精神が崩壊⑫ 支えられた亡くなった祖母からのメッセージ

母が精神病院へ入院して、
3週間が過ぎようとしていた頃、
主治医の先生から電話があった。

保護室から一般の個室へ移動したが、
精神がかなり不安定になっており、
もう一度保護室に戻るように、提案し、
最初は承諾したが、いざ移動するようになると
拒否をし、個室のままがいいと暴れ出したという内容だった。

一般の病棟では、見回りはしますが、24時間体制で監視することができず、何が起こるかわかりませんが、お母様が個室を望まれているので、そのままのお部屋で過ごしていただくようにします。と、告げられた。

入院前、母は夜になると、父に
『苦しい、死にたい』
と、何度も漏らしていた。

何が起こるかわからないとは、
何をしでかすか、わからないということ。

自らの命を絶つ可能性もあるということ。

電話を切った後、自分の心臓の音が、耳に響き渡った。
ドクン、ドクン。

いてもたってもいられず、
仕事を早退し、病院へ行くことにした。
病院への道のりは不安で、車を運転しながら、
涙が頬を伝っていた。

その時、また祖母の声が
脳内に響いた。

『大丈夫』
『大丈夫』
『大丈夫』

私の不安な心を、埋め尽くすように、
何度も響く祖母からの声。

『大丈夫かもしれない…』
祖母からのメッセージで、
自分の思考が不安から希望へと変わった瞬間だった。

『ばあちゃん、ありがとう』

そう心で伝えると、祖母からのメッセージは、
スッーっと、脳内から消えていった。

私の心に、ぶれない軸ができた気がした頃、
病院へ到着した。

長い渡り廊下を歩いていき、
母のいる病棟へ到着すると、
透明なドアの向こうに、受付で泣き叫んでいる母の姿が、目に飛び込んできた。

私が来たことに気付いた看護師さんが、
走ってドアを開けにきてくださった。
『1日中、あの状態で。ご本人さんもしんどいと思うんです』

私が来たことも、わからないほど、
母は、取り乱していた。

『お母さん、来たよ』
『部屋に一緒に帰ろ』

と、母の肩に手を置くと、
『私が悪いんやー』と、泣き叫んだ。

『わかったよ』
『とりあえず、部屋へ戻ろう』

そう言って、母の車椅子を押し、
母の部屋へ戻った。

一時間ほど狂乱の時間が過ぎ、
その間、母が気持ちいいと言ってくれていた手のひらマッサージをしたり、背中をさすったりしていた。

ふと、母が自分の本音を語り始めた。

初めて聞いた母の本音に、
意味なく泣き叫んでいた訳ではなかったことがわかり安堵した。

相手に気を使い、
相手を傷つけないように、
相手の意見を聞いて、
一旦は、相手の意見通りに答える。

でも、よくよく考えると自分の本心とは、違っていて、それを相手に伝えることができない。それに気づくのが、いつも遅くて、相手を困らせるような言動をとっている自分が嫌で、申し訳なく、相手に謝罪したいのに、言葉が見当たらない。

結果、
どうしたらいいか、わからない。
そんな悪循環に陥っているようだった。

そっか。
理由がちゃんとあるんや…

『大丈夫』
祖母からのメッセージが、心から理解できた。

『ばあちゃん、ありがとう』
と、心で伝えると、祖母の歩く後ろ姿が脳内に広がった。











































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