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いくつもの感激に彩られたクリスマス

今年のクリスマスは、私の小さな夢がいくつも叶った。
一番忘れられないクリスマスの記憶といっても過言ではない。それくらい感動がたくさんあったのだ。

実家でクリスマスらしいことといえば、クリスマスケーキくらいで、パーティ感を味わったことはなかった。ツリーの飾りつけはワクワクよりも、母のお手伝いをしているという感覚の方が強かった。

サンタクロースに手紙を書く友人を冷めた目で見るような子どもで、プレゼントは母にお願いするものだと物心ついた頃からわかっていた。
小学生低学年頃だろうか、一度恥ずかしながら靴下を枕元に置いたことがある。母に見られるのが恥ずかしくて、寝る前に布団の中に隠した。
実家でサンタクロースの存在を口にする者は、いなかった。

次第にツリーは飾られなくなり、ケーキも見なくなった。気がつけば年2回ある、おもちゃをおねだりできる日と化していた。

クリスマスに家族でケンタッキーのチキンを食べるのが、私の小さな夢だった。
でも、自閉症の長男は偏食でイベント時だろうといつもと同じものを食べる。長男には、今ブームの”マルタイラーメン”、私と旦那はケンタッキーのチキン、次男にはポテトとピザを用意した。

「かんぱーい」と、子どもたちのコーラが入った紙コップと、私と旦那のシャンパンが入ったグラスを合わせる。家族4人でクリスマスパーティをしているこの現実が、私にはこれ以上のない幸せだった。

もうこれで十分だったのに、長男がケンタッキーのチキンを一口食べた。これ以上のサプライズはない。
たった一口。それでも、この一口がどれだけ大きな一歩か。

自閉症児を育てていると、世間のムードが浮き足立つイベント時に少し、いやかなり、居心地の悪さを感じる。イレギュラーよりルーティンを守ることを優先してあげたい気持ちは十二分にあるのだが、どこか置いてけぼり感が漂う。

人様から見れば「ケンタッキーを食べた」ことに喜びを感じるなんて、理解できないかもしれない。でも、これが私たちにとってはとても大きな大きな一歩で、小さな成長のために長い時間とたくさんの労力が必要なのだ。

そんな小さくて大きな成長を、一緒に喜んでくれる人たちがInstagramにたくさんいる。Instagramのストーリーズで長男がケンタッキーのチキンを一口食べたことを報告したら、たくさんの方からお祝いのDMが届いた。

辛いことに共感してもらえることで、心が少し軽くなる。同時に、嬉しいことを一緒に喜んでもらえることで、喜びは2倍にも3倍にも大きくなる。

インスタやっててよかったなぁ。

今年のクリスマスは、まだ嬉しい出来事が待っていた。

24日、スーパー銭湯に行った帰りに、旦那がコンビニでシュークリームを買った。長男が一口食べたいと、旦那から奪ってそのまま全部食べてしまった。
長男がシュークリームを食べたのは、これが初めてだ。

口の周りにクリームをつけて頬張る笑顔はとても幸せそうで、その笑顔を見られることが、どれほど幸せな瞬間だったか。
同じ物を食べて「美味しいね」と一緒に笑顔になる。こんなにも温かい時間が他にあるだろうか。
シュークリームを頬張った笑顔は、私の脳裏にしっかりと焼き付いた。きっと、クリスマスが来るたびに思い出すだろう。

そして、もうひとつ私の小さな夢が叶った。
お菓子作りが趣味だったので、手作りのおやつを作って子どもたちの学校の帰りを待っていたい。家族の誕生日には一緒にケーキを作りたい。その夢がひとつ叶えてくれたのだ。

25日は、旦那の誕生日だ。
クリスマスと誕生日をいっしょくたにされる人生を送ってきた彼は、すっかりそれに慣れてしまっている。だからこそ、ちゃんとお祝いをしてあげたい。誕生日がどれほど素敵で大切な日であるか、親になって改めて実感しているから。

長男は「クリスマスと誕生日が同じ日に存在する」ということが理解できず、「そんなわけないでしょー!」と言っていた。
「理解力が足りない」と言ってしまえばそうなのだが、誕生日もクリスマスもそれぞれ大切な日だと感じている気持ちは、とても素敵だ。

「この日はパパの誕生日だから、一緒にケーキを作ってサプライズをしよう。パパには内緒ね」
言ったそばから、パパに「この日パパにケーキを作って……」と計画をばらしてしまったのだが、無事に(?)サプライズは成功した。

去年までは難しかったけど、今年は一緒にケーキ作りに挑戦。
買ってきたスポンジケーキに、泡立てた生クリームとイチゴのトッピングを子どもたちにしてもらった。口を出したくなるような歪な仕上がりだったけど、歪だからこそ子どもたちのパパへの純粋な愛があるように感じる。

「パパびっくりするかな~」と、パパのことを想いながらイチゴを並べる子どもたちの笑顔はとても輝いていた。一緒にケーキを作るのは大変だったけれど、それ以上に心が満たされる時間でもあった。

パパの帰宅に合わせてサプライズをした。
パパがドアを開ける前に「お誕生日おめでとう!!」とフライング気味の長男。バースデーソングは、ずっとワンテンポずれている次男。
パパは満面の笑顔だった。

この日の出来事が、子どもたちの記憶にどれだけ残るのかはわからない。何も覚えていないかもしれない。
でも、私にとっては、今年のクリスマスは一生忘れられないものになった。

旦那には内緒だが、8年前のサプライズプロポーズより長男がシュークリームを食べたことの方が、嬉しかったかもしれない。

おまめ

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