4-13. 翌日は、午前の授業が終わったら、すぐに学校を抜け出すつもりだった。

 翌日は、午前の授業が終わったら、すぐに学校を抜け出すつもりだった。一昨日までのように、みんなとアルミの話で盛り上がれるとは。とても思えなかった。

 でも授業が終わると同時に、トシが教室に飛びこんできたので抜け出す機会を失ってしまった。

「ユウシ、昨日のミッションのスコアが入ってないのだよ。どうなっているのだね?」

「そんなはずはないよ。深夜だったけれど、ちゃんと解答はしたはずだよ」

「提示されていたタンブラーも見られなくなっているのだよ。なにかミスしたのではないのかね?」

 あわててスマホを操作し、昨日の夜に何度も読み返したアルミリークスのページを開く。たしかにページは消えていて、その代わりに「死霊死」と書かれたページが表示された。

「死霊死というのは、おそらく目的のページが見つからないという意味の『404 Not Found』に引っかけた冗談だとは思うのだよ」

「いや、昨日の夜は……」思わず口に出しかけたところに、ユウシの視線が刺さる。

「問題はスコアが記録されていないことだ。そうだろ?」

「ああ、このままでは我らのランクは確実に下がってしまうのだよ」

 違う。それは本当の問題じゃない。

「最新のランキングを見たですか? なんかすごいことになっているのです」

 ジュンペーも教室に飛びこんできた。

「一気に三〇位もランクが下がっているのだよ」「他のチームのスコアがすごく伸びているのも、原因ではあるのです」「なんということだ。それで次のミッションは?」「今日は、まだ配信されていないのです」「では、どうすればよいのだね」「ジュンペーを責めても意味はないよ、トシ」

 俺は、理解できない英語のリスニングを聞いているみたいに、ぼんやりとユウシたちの話を聞いていた。やがて、会話にヒロムも加わり、話はどんどん前向きな方向で盛り上がっていく。俺は「気分が悪くなった」と言って会話から抜けると保健室に向かった。どこか静かなところで、頭の中を整理しておかなくちゃいけない。そんな気分だった。

 けっきょく放課後まで保健室のベッドの上で天井を見て過ごした。途中、何回かスマホが震えて、パソコン部のみんなからのメッセージと、アルミの出した次のミッションを受信した。通知を見るたびに、自分の中のもやもやが晴れて、ひとつの思いが強くなった。

「あんまり、さぼりに来ちゃだめよ」

 保健の六本木先生にやんわりと釘をさされながら保健室を出た。ホームルームが終わったばかりで、まだざわざわしている廊下を通り抜けて階段を一気に四階まで駆け上がり、部室に向かった。

 思ったとおり、ユウシは誰よりも早く部室に来て窓際に立ち、グラウンドを見下ろしていた。部室に入って引き扉を閉めると、俺は黙って窓際に立った。鉛色の空から強く雨が降り続けていた。

 ユウシが横目で俺を見た。

「体調はどうなんだい? 季節の変わり目だ。無理はしない方がいいよ」

「サンキュ。もう大丈夫だ」

「じゃあ、ひと安心だね」

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