4-27.「……だから、続けるっていうんだな」
「……だから、アルミを続けるっていうんだな」
「ああ。だから手始めに兄のチームに入って、動きを見極めようと思う。それから――」
不意にユウシが言葉を切った。
それから――なんだろう。俺はユウシの顔をじっと見つめた。
しばらくたって、ようやくユウシの口が微かに動いたとき、部室の扉が開く音がした。
「ほら、やはり部室にいたではないか」
振り返ると、トシを先頭に、ジュンペー、ヒロムの順で三人がぞろぞろ部室に入ってきた。
「ユウシくん、お久しぶりなのです。もう完全復活なのですか?」
「まあ、そんなところかな」
「休むのは勝手だがな。勝手が長すぎんだよ、バカ」
「ごめん。ヒロムにも心配をかけたね」
三人に取り囲まれたユウシは、一度に話しかけられて、少し困った顔を見せる。
「それで次にやることは考えたのかね? 明日からは夏休みだ。時間はたくさんあるのだよ」
「そのことなんだけどね」
ユウシは、かみしめるようにそう言うと、さっき俺にしてくれた話をもう一度、くりかえした。ユウシの話が進むほどに、三人の視線が床に落ちていく。
「なんなら俺が、おまえの兄貴を一発、ドヤしてやってもいいんだぜ」
ユウシの話を聞き終え、ヒロムがぽつりとつぶやく。
「ユウシの家のネット環境をハッキングして、接続できなくすることもできるのだよ?」
「僕に手伝えることがあったら、なんでも言ってほしいのです」
ユウシは俺たちひとりひとりの顔を見てから、静かに首を振る。
「ありがとう、みんな。でも、これは僕だけの問題だから」
トシがいきなりユウシの肩を強く何度も叩きながらうなずいた。ジュンペーはさびしそうな目をしたまま、床を見続けていた。ヒロムは腕組みをして、大きく息をついた。
「でもね。僕はきっと、また五人でなにかをすることになる。そう信じてるんだ」
ユウシが自信たっぷりに微笑む。おかげで、俺たちは「しかたがない」という、あきらめにも似た感情をどうにか消化することができた。また五人で―なにかをする、という前向きな言葉で。
でも、その言葉は、ずっとずっと後になって、俺に重くのしかかることになる。
ユウシは立ち上がると、小さく伸びをした。
「だからさ、少しの間、待っててくれないかな」
そのあとはダラダラとくだらない話をして、シイナ先生に見つからないように部室を出た。久しぶりに駅までの道を五人で歩き、途中にあるコンビニにも寄った。ユウシは休んでいた間、ほとんど外出しなかったみたいで、この暑さはつらい、としきりにボヤいていた。
俺はユウシの選んだエチゼンクラゲアイスをなめながら、おでんを食べ続けるジュンペーを見る。
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