5-6. シイナ先生にメッセンジャーのアドレスを伝えて病院を出た。

 シイナ先生にメッセンジャーのアドレスを伝えて病院を出た。来たときと同じ道を通って駅前に戻る。ジュンペーはデイパックの肩ひもをギュッと握りしめながら歩いていた。みんな、無言だった。

 改札の前で解散しようとしたとき、緊急地震速報みたいに全員のスマホが一斉に激しく震えた。シイナ先生からの連絡だろうか。俺は、あわててズボンのポケットからスマホを取り出し、スクリーンにタッチした。勝手にアルミが立ち上がり、見たこともないメッセージを表示する。


 イチ

 あなたはアルティメット・ミッションのルール2に違反しました。

 あなたと、あなたのチームメンバー全員が、アカウント停止の処分を受けます。

 これから先も、ゲームについては口外しないことをおすすめします。

 さらなるルール違反は、あなたと、あなたのチームメンバーに深刻な結果をもたらすでしょう。

 パペットマスターより


「おい、これって……」最初に口を開いたのは、ヒロムだった。

「さ、さっき病院で、シイナ先生にいろいろと話してしまったからなのです?」

「運営側の理由なんて、あってないようなものなのだよ。もっとも、問い合わせたところで、その理由を答えてくれるとは思えないのだがね」そう言って、トシが肩をすくめる。

 ただ、どちらにしても、これではっきりした。俺は、もう一度、アルミからのメッセージを見る。

「ようするに、パペットマスターは『これ以上、ユウシのことを探るな』と言ってるわけだ」

「まあ、そういうことになるな。で、おまえはどうすんだ?」

 不意をつかれて、俺は思わずヒロムの顔を見た。問い詰めるわけでも、不安をあおるわけでもなく、冷静にこれからどうするのかを見極めようというヒロムの目。

 みんなは、俺とユウシがどうして対立したのかを知っている。だからこそヒロムは、パペットマスターから警告があった今、もう一度、俺に確認してくれているのだ。

「さっきもシイナ先生に言ったけど、俺がユウシの事件について真実を知りたいと思うのは、ユウシのためだとか、ユウシの仇を取りたいとか、そんなんじゃないんだ。ただ、あのとき、ユウシになにもしてやれなかった自分を納得させたいだけの、ただの自己満足なんだ。だから―」

「突き詰めれば、すべては自己満足になるのだよ」トシがスマホから目を離さずに言った。

「売られたケンカは買うのが、俺の主義なんでな」とヒロム。

「僕もイチくんと同じ気持ちなのです」とジュンペーがうなずいた。

 俺はトシと、ジュンペーと、ヒロムの顔をぐるりと見回す。でも、『アルティメット・ミッション』という運営者さえわからないゲームの正体を俺たちの力だけで突き止めることはできるだろうか。

「俺たちならできるに決まってるだろ、バカ」

 ヒロムが拳で、俺の右肩をドンと叩いた。鈍い痛みが肩全体に広がる。

「もっと、自分たちの実力を信じるといいのだ」「絶対にできるのです」

 ヒロムに続けて、トシとジュンペーが、次々に俺の肩を拳で叩く。俺はその勢いに押されて、後ろによろめいた。それでも、俺の口元には微笑みが浮かんでしまう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?