4-16. シャワーを浴び終えると、Tシャツと短パンに着替えて、自分の部屋に戻った。
シャワーを浴び終えると、Tシャツと短パンに着替えて、自分の部屋に戻った。カーテンが開けたままになっている窓の外は真っ暗で、窓に叩きつける雨音だけがノイズのように耳に響いた。机の上に置いたスマホがなにかを受信したのか、ぽうっと淡い光を放っている。
その光を避けるようにベッドにもぐり込んだ。いつの間に俺は、こんなふうになってしまったのだろう。ちょっと前まで、ユウシもトシもヒロムもジュンペーも、他の誰かと同じその他大勢のひとりだったじゃないか。固く拳を握りしめると、爪が手のひらに食い込んだ。みんなと出会う前に、自分がどうやって時間を過ごしていたのか、まったく思い出せなかった。
漠然とした思いに囚われて、暗闇の中で目を閉じると、夢と現実の境界があいまいになる。ドアの向こうで母親の呼ぶ声が聞こえたような気がしたけれど、よく覚えていない。体がベッドにずぶずぶと沈み込んでいくような感覚に包まれながら、俺はいつのまにか眠っていた。
次の日の目覚めは、いつもどおりの午前七時。こんなに最悪な気分のときでも、きっちりと定時に目覚める自分の生活リズムがイヤになる。
ベッドの横にある机の上に置きっ放しにしていたスマホは、もう光を放っていない。昨日から充電をしていなかったから、たぶんバッテリーが切れてしまったのだろう。充電しなくちゃな、と思い、起き上がってはみたけれど、すぐに首を振ってベッドに座り込んだ。
「一、早くしないと学校に遅刻するよ!」
なにも知らない母親が、いつもと同じ調子でドアを叩く。
「ん、ああ。今日はなんか……調子が悪くてさ」
「じゃあ、学校は休むの?」
「できれば」
「休むのはいいけれど、あんた、出席日数は大丈夫なの?」
出席日数という単語が、強烈な現実を俺に叩きつける。転入早々に一週間休んだうえに、これまでもちょこちょこと学校をサボっていた俺の出席日数は、かなりきわどい状態にあった。
「単位を落とすようなら学校は辞めさせるよ。義務教育じゃないんだから」
これは母のいつもの冗談。でも、今の俺には究極の二択のように聞こえる。
行くか辞めるか。
わざと大きく伸びをすると、反動をつけて立ち上がる。ベッドのスプリングがぎしっと音を立てた。すぐに学校へ行かない方向に傾く自分の気持ちを打ち消すために、ひとつずつ淡々と準備をする。バッテリーが切れたスマホは、そのまま机の上に置いていった。
学校に行ったところで、どんな顔をして、みんなに会えばいいのだろうか。あやまるのでなく、怒るのでなく、ましてや笑うのでもない。今まで、他人とまともに向き合ったことのない俺には、とてつもなく高いハードル。そんなことをぐるぐる考えながら、俺は家を出た。
教室に入ると、自然と目はユウシを探した。でも、ホームルームの時間になっても、一時間目の授業が始まっても、ユウシは学校に来なかった。
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