4-10. はじめまして。僕の名前は友達仮です。

 はじめまして。僕の名前は友達仮です。もちろん本名ではありません。

 僕は六か月ほど前に友だちに教えられてアルティメット・ミッションを始めました。プレイヤーのみなさんならよくご存知の現実世界を舞台にしたARGと呼ばれるゲームです。

 ですが、そのために僕はいくつかの犯罪行為に巻き込まれています。

 このブログには僕が巻き込まれた犯罪行為の断片や経緯、そして僕の周辺で起きている変な動きについて、できるかぎりまとめておきます。

 プレイヤーのみなさん。どうか気をつけてください。アルミはゲームではありません。

 なんだこれ?

 俺は文章をゆっくりとスクロールさせながら考える。ゲーム内のキャラクターが「これはゲームではない」というメタ構造にしては唐突すぎる。そもそも、これまでのミッションには、あまりこういった物語性はなかった。わけがわからない。

 困惑したままページを読み終え、トップページに戻った。他のページも読んでおこうと、長方形のワクで区切られた項目をスクロールさせた瞬間、俺はますます困惑してしまう。「プレイヤー同士での情報交換」「赤の選択からすべてが始まる」「僕たちの犯した罪」「パペットマスターの目的」「働き蜂の存在」「ルールを破ったものへの制裁」……。

 思わずベッドの上で姿勢を正すと、いくつかの項目を次々と読む。

 パペットマスターは才能あるプレイヤーやチームに対して、少しずつ彼の目的に沿ったミッションを出し、プレイヤーをテストしている、と僕は考えています。僕へのテストは、おそらくプレイヤー同士での情報交換だったと思います。プレイヤーはお互いにどんな情報を運んでいるのか知らないまま、アイテムとして写真のようなSDカードやUSBメモリーを受け渡すのです。

 いくつかのテストをクリアしたプレイヤーやチームには、ふたつの選択肢が提示されます。ひとつは青色に関係した選択肢で、もうひとつは赤色に関係した選択肢です。この選択肢でパペットマスターはプレイヤーの積極性や決断の速さを判断しているのではないでしょうか。いずれにせよ、赤色の選択肢を選んだプレイヤーやチームだけが、次のステップに進むのだと思います。僕は赤色を選択してしまったので、青色を選択していたらどうなったかを知ることはできませんが……。

 ぞくっと冷たいものを感じた。キャラクターの話は、あまりにも俺たちの状況と一致している。いったい、どこまでが本当で、どこまでがウソなのか。突然、足下にできた沼にずぶずぶと飲み込まれていく感覚に襲われながらも、ページをめくる手は止められない。

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