1-18.イチ、おめでとう!

イチ、おめでとう!

トライアルミッションをクリアしたあなたは、今この瞬間に『アルティメット・ミッション』のプレイヤーとして登録されました。

のちほどゲームの入り口に、このゲームのルールをまとめたページへのリンクが現れます。

ルールをよく読み、『アルティメット・ミッション』に参加する準備を整えてください。

それでは再びあなたとゲームの中で会えることを楽しみにしています。

パペットマスターより。

「二一分三五秒なのだよ」と時計を見たトシがホワイトボードに書き込んだ。

「なんだよ。あと三分ちょい、路頭に迷っててくれれば、俺の勝ちだったじゃねえか」ヒロムはそう毒づいてみせてから、俺に向かって手を差し出した。「あらためて、よろしくな。イチ」

 ためらいがちに手を差し出した俺とヒロムをジュンペーがきらきらした目で見つめる。

 よろしくするつもりはなかったので、ものすごく後ろめたかった。

 すぐに手を離して、スマホをズボンのポケットに押し込み、グラウンドが見下ろせる窓際に向かう。グラウンドから聞こえる運動部の声を遠くに感じながら、窓にそっと寄りかかった。

「イチ、おつかれさま」

 振り返ると、ユウシがいつのまにかすぐそばに立っていた。俺は、ユウシに聞こえないぐらい小さくため息をつくと、再びグラウンドに目を移す。

「明日になれば最初のミッションが始められるようになる。だから、それまでにアルミのルールには目を通しておいてくれるかな。あとアプリを削除しようなどとは考えないようにね」

 それはもう充分すぎるほどにわかったよ。

 俺はユウシを横目で見た。こいつには今日だけでずいぶん引っかき回されてしまった。本当なら、今頃は家でだらだらとYouTubeでも見ていたはずだ。

「くりかえしになるけれど、アルミの一番の特徴は徹底した秘密主義にある。イチに最後に見せたアルミのステッカーも、実はアルミでそれなりのスコアを獲得した者にしか与えられない。つまりそれは『信頼できる実力者以外はゲームに参加させるな』というパペットマスターのメッセージだと僕は思っている」

 ガラスに映ったユウシと目が合った。

「もっとも、そんなことはおかまいなしにステッカーを見せて回り、仲間を増やしている連中はいる。ルールで禁止されているわけではないからね。だけど、僕にはそういうことはできない。なぜなら本当の意味で信頼できそうな仲間が、そんなにたくさんいるはずはないからね」

「……それで俺は信頼できそうだったのか?」

「直感だけどね。でも、こんなのは理屈じゃないだろ?」

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