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僕のことを「スマホ」というあだ名で呼ぶ女性について書いてみた

先日女友達と通話をしている時、つい「最近は短歌とエッセイに勤しんでいるんだよね。」という話をしてしまった。相手は綾という大学時代からの友人だ。僕は自分の短歌とエッセイに自信がないため、これまでリアルな友人には活動を隠してきた。しかし、その時はお酒も入り、気持ち良くなって、思わず口走ってしまったのだ。幸いなことに彼女はアカウント名などは聞いてこず「私のこと書いた?」と聞いてきた。意外な質問に驚いたが、彼女のことは一度も書いてなかったので、正直に「書いてない。」と答えた。すると「書けよ!私が一番おもろいやろ!」と笑いながらツッコミが入った。彼女は大学のお笑いサークルに所属していて、ボケ担当なのだが、ツッコミに回っても優秀らしい。「私が一番おもろいやろ」と彼女が言う理由は確かにいくつか思いついた。まず、彼女は僕のことを「スマホ」と呼ぶ。彼女曰く「悩みを聞いてくれるから」「困った時に必要だから」「物知りだから」など、理由を挙げればキリがないらしい。もちろんフォーマルな場所やメンツによっては「雄町」とか「雄町君」と呼んでくる。一方、2人で飲んでいると「スマホさ~私のスマホどこいったか知らない?」なんて言葉を口にする始末だ。なので他の友達にはよく心配される。「スマホって都合がいいって意味じゃないの?嫌じゃない?」と聞かれたことがあるが、「別に嫌じゃない」と答えた。綾本人からも「スマホって言われるのやだ?」と満面の笑顔で聞かれたことがあるが、「わりと気に入ってる」とこっちも笑いながら答えた。正直な感想だった。僕としては、僕が彼女にとって都合のいい男になるのであれば別にそれでも良かったし、そもそも彼女が人を都合よく扱ったりする人物ではないことを知っていた。それに、彼女は僕のことを「困った時に必要な存在だ」とよく語るが、むしろ僕は逆だと思っていた。本当に僕が困った時に頼れるのは綾くらいしか思いつかない。そういう僕は2度自殺未遂をしたことがある。2度とも病院に運ばれてなんとか生き延びた。僕は自殺未遂に関わる話を大学の友人たちには話さなかった。高校の友人を数名フォローしてるツイッターの裏垢で呟いただけだ。なぜあの時、彼女に助けを求めなかったのだろう。答えは僕には分からない。だから、代わりに猫に聞いてほしい。亡くなる直前の猫と同じように、あの日の僕は独りで最後を迎える覚悟をしたのだ。その話は今は置いておこう。今日は僕じゃなくて綾のことを書きたかったのだ。彼女は現在、銀行で働いている。お笑い芸人にはならなかったみたいだ。勤めている職場は良い環境らしいが、数ヶ月に1度は辞めたいとLINEが入る。悩んでいたかと思えば、海外のクラブで騒いでいる動画がインスタに載せられていたりする。彼女は彼女なりに一生懸命に人生を生きているみたいだ。今は恋愛でも悩んでいるらしく、どうやら真っ当な恋愛ではない様子だった。だが、僕は何があっても彼女の味方でいるつもりだ。今朝起きたら「スマホさ、かき氷食いに行きたいから早くパニック発作治してくんね?🫠」とLINEが入っていた。このふざけた距離感が僕にとっては心地がいい。愛犬が名前を呼ばれると尻尾を振るように、僕も「スマホ」と呼ばれると自然と表情が綻ぶのだ。僕は「かき氷かー、せめて秋までに治さないとな。」と一瞬思った。が、綾のことだ、冬でも一緒に食べに行ってくれるだろう。そういうところが彼女の1番良いところなのだ。

最後まで読んで頂きありがとうございました。noteには他のエッセイも載せているのでもし良かったらご覧ください。

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