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謹賀新年2023

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は格別なるご支援を賜りまして、誠にありがとうございました。
本年もよろしくお願い申し上げます。

2022年はオリンピックイヤーでありました。
オリンピックは平和の祭典と言われていますが、
「スポーツができるような平和」を求めることは、オリンピズムとあいいれません。
と言ったら驚くでしょうか?
「スポーツでしか平和な世界が作れない」という信念と実践こそがオリンピズムです。
「スポーツができるような平和」な社会を作るために政治的対立を続けているのが現実の世界です。

戦争に反対する人も、戦争が最後の外交と主張する人も、皆、政治がスポーツよりも上にあり、その限りにおいて対立構造はなくなりません。
それを超越しない限り、永遠に平和な世界は望めません。
そのためにスポーツを愛し、行い、そして応援する人々が交流する世界が求められるのです。

だからオリンピックを語る時に、よく耳にする「オリンピックができるような平和な状況で良かったね」は私のオリンピズムからはブッブーです。
でもスポーツ界にも東京五輪の中心にいた要人にも、あるいはコロナ禍の五輪反対の人々にも同様の考えが蔓延っています。

北京五輪が開催されたオリンピックイヤーに戦争が起きたこと。しかもそれを起こしたのが、北京五輪開会式に参加したプーチン大統領だったこと。しかもそれは北京五輪閉会直後で、国連決議されたオリンピック休戦の期間中であったこと。これはまさにオリンピズムへの真っ向からの挑戦であると、受け止めるべきです。

IOCもすぐさまロシアとベラルーシの政府に対する声明を出し、スポーツのできる範囲で制裁を続けていますが、この行き方には限界が見えています。

もはやスポーツこそが戦争を止める手段だという政治力を発揮する時が来ています。オリンピズムはスポーツ内存在から世界内存在へ、そして超越的人類の使命に変換されるべき時と思われます。

今こそ武器をもたいない戦いの強さを見せるべきです。2030年の冬季五輪をウクライナで開催する意思を表明し、アスリートがそれに向かって歩めば大きな一歩が踏み出せます。一方で、札幌五輪開催の情熱があるのならば、その情熱を世界平和構築への熱意に変えるべきです。北方領土とプーチン大統領の起こした戦争を札幌五輪が解消するというほどのゴールへの挑戦であれば、それは歴史的な大志となるでしょう。

これらのアプローチはこれまでのオリンピック運動のスタンスを逆噴射させる試みなのです。政治を否定せずうまく折り合いをつけてきたスポーツのあり方から、政治をコントロールできるスポーツになるべきなのです。

IOCもFIFAもそれなりの力を、キンリョクをつけました。それはまず金力からでしたが、これからは精神的筋力となり、世界をリードしていかなければならないのです。それはとても大きな仕事なので、かなりの汗をかかなかればならないと思います。

私は昨年4月にバッハIOC会長に手紙を書きました。五輪憲章改正の提案です。要約すれば、「オリンピック休戦を破った国と地域に所属するNOC(国内オリンピック委員会)は資格剥奪、ただし、選手は参加資格宣言の署名によって五輪参加資格が得られる。その宣言には戦争反対が記載される」というものでした。

なかなか返事が来ませんでしたが、10月に入って長文のレターが届きました。コンフィデンシャルですが、少しだけご披露すると「そのとおりだが、それを規定化する中で、戦争を起こした国の選手の危険性を回避できないジレンマがある」というものでした。

しかし、12月の理事会で一つのことが密かに決まりました。オリンピック休戦を破ったことに対する憲章改正を検討していくことです。私の小さな手紙が壮大なオリンピズム革命の一歩になれば幸いです。

今年もIOCがリードするオリンピック運動の行き方をしっかりと見届けながら、日本の人々に伝え、さらにはオリンピズムの実現のためにIOCに歯に衣きせぬ意見を伝えていきたいと思います。

武器を持たないで戦う思想を持てる国に生まれた者として、やるべきことはそういうことでしかない。

京都は鞍馬山にある立て札には書いてある一節を念頭の辞としてお送りします。

その昔
一の谷 屋島 壇の浦
戦って戦って戦った義経は
戦いの酷さ虚しさに気づき
平泉では戦いませんでした
少し前
真珠湾 硫黄島 沖縄
戦って戦って敗れたわが国は
戦争の悲惨さ理不尽さを知り
永久に戦わないと誓いました
戦争で悲しまないために
戦争で悲しませないために
平和の道を目指したのです
「日本国憲法」は平和の基礎
日本が世界に誇れる宝です

オリンピズムが歌うべき歌であると思います。

2023年、年頭の辞といたします。

2023年元旦

春日良一

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