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絵心のない人間がゴッホのドキュメンタリーを視聴し、ゴッホの魅力を語る

絵心と絵画の知識が皆無の人間が、ゴッホのドキュメンタリーを見た、感じた、書いた。心のおもむくままにキーボードをカタカタしました。

「どれぐらい絵画の知識がないのか」と、尋ねられたら、『ムンクの叫び』にムンクと名前がついているのに、ピカソの作品だと思っていました。

ゴッホの絵は『ひまわり』と『耳に包帯をしている自画像』しか知らなかったです。

サマセット・モームの『月と六ペンス』は、南の島に行くまでゴッホの物語だと思い読んでいました。『月と六ペンス』は、ゴッホと共同生活をしていたゴーギャンをモデルにしているお話です。

原田マハさん著『漂えど沈まず』。原田マハさんのファンに怒られそうですが、開高健の小説と間違えて買いました。この小説を読み、ゴッホの魅力に憑りつかれました。

原田マハさんの名前は『裸のマハ』をもじっているのではと考えています。『裸のマハ』のオッパイの形が不自然だ、と話題になることがあります。日本のセクシービデオでも、仰向けに寝転んだセクシー女優さんのオッパイが、つんとお椀の型がキープされている光景をよく見かけます。つまり『裸のマハ』のオッパイの形は不自然ではない、というのが私の結論です。

『裸のマハ』の作者フランシスコ・デ・ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』開高健をしてサムシングな迫力があると書かれていました。ネットで調べました。この文章を読んで、ピクリと興味をもった方たちよ、興味本位で調べるものではありません。『我が子を食らうサトゥルヌス』を一見すると、何度か悪夢にうなされますゾ。

『漂えど沈まず』を読んでいたときに、『星月夜』が最高傑作だと書かれていました。どんな絵なのだろうと調べてみると、なんともウネウネしている幻想的な絵です。蒼い闇夜にガスランプの灯りのように浮かびあがる星たち、そして右上にぽっかりと目立つ三日月。農家が住んでいそうな古びた家が並んでいます。三日月の対角には、炎たつような黒い何かがそびえています。この黒い炎は何なんだろうか、と眺めていると30分ほどの時間が過ぎさりました。

まったく、ちっとも、ネバー、絵画に興味がなかった人間が、レプリカを買っていました。ゴッホに憑りつかれた私は、ゴッホという人間をもっとよく知りたくなりました。

ゴッホ 真実の手紙

最初に見たドキュメンタリーは『ゴッホ 真実の手紙

50分ほどでゴッホの人生のあらすじを知ることができます。短いからといって手を抜いている映像ではありません。細部までみっちり造りこまれている神は細部に宿る良ドキュメンタリーです。

主演は、ドクター・ストレンジや現代版シャーロックホームズを演じた・・・・・・そうそう、ちょっと顔の長めの・・・・・・人を惹きつける眼の・・・・・・

そう、ベネディクト・カンバーバッチ。もっとも名前を覚えにくい俳優さんだと思っています。ゴッホを演じるには、恰好よすぎないと思っていました。『ゴッホ 真実の手紙』では、見事にゴッホを演じています。ヒゲモジャの顔、暗闇にむかってブツブツつぶやく口、キャンパスに向かう近寄りがたいゴッホのようなギラギラした眼、彼の視線と顔が、あなたの眼を見つめます。そして語りかけてくるのです。画面のなかに、スーッと引きずり込まれました。

アブサンを飲むシーンといえば、ジョニー・デップが有名でしょう。ベネディクト・カンバーバッチが魅せるアブサンの飲み方も優雅な魅力があります。

『ゴッホ 真実の手紙』を見ていて気づいたことがひとつ。イギリス英語は、アイキャンをアイカンと発音するのは知っていました。ゴーギャンをゴーガンと発音するのを発見しました。キャンやギャンをカン、ガンと発音するのでしょうか。英検3級の私では分かりません。

ベネディクト・カンバーバッチは、『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』で演じたリチャード三世と血縁関係があるバリバリの英国貴族。話言葉もバリバリのイギリス英語ではと思います。『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』のリチャード三世は、まさに怪演といったオドロオドロしいリチャード三世を演じています。リチャード三世の演技でも画面外に語りかけてきました。語りかけるのがベネディクト・カンバーバッチ流演技?

ゴッホの話というよりも、あの役者さん、そう英国貴族の、ドクター・ストレンジを演じている、あの役者さん、そうそう、ベネディクト・カンバーバッチの話からゴッホの話に戻しましょう。

世界で一番ゴッホを描いた男

次に視聴したドキュメンタリーは『世界で一番ゴッホを描いた男

そんな大げさなと思いました。しかし、まったくチッとも大げさではありません。

「700枚のゴッホ複製画の注文がきたぞ」

締め切りは一カ月です。700枚??

『世界で一番ゴッホを描いた男』の主人公は、中国の一都市の片隅でゴッホの複製画を書き続けている男性が主人公です。コピーではなく、油絵具でゴッホの複製画を書きます。そんな生活を10年以上続けている男性です。分担制で書いているとはいえ、1ヵ月700枚、1年なら8,400枚、10年なら8万枚以上。ゴッホのように、精神がおかしくならないのと思いました。たしかに、世界で一番ゴッホを描いた男です。

700枚ものゴッホの絵を納めているの取引先は、アムステルダムに住んでいる人物。700枚ものゴッホの複製画が、それだけ売れるのかとビックリさせられました。複製画でお手頃の値段であれば、私も1枚欲しいです。

10年以上ゴッホの複製画を書いてきた男性は、ゴッホの原画を見るためにヨーロッパに行きたいと嫁さんに言います。嫁さんは、答えます。「お金がない」と。毎日毎日ゴッホの絵を描きまくっていても、海外旅行に行けるお金がないのかと驚かされました。世界の工場中国の裏側を見た瞬間です。『世界で一番ゴッホを描いた男』が公開されたのは2016年。中国の経済は好調のように思っていましたが、好調なのは一部の中国人だけなのかもしれません。

なんだかんだで、ゴッホ美術館に行けるようになった男性。取引先の店を訪ねます。取引先を古美術商と思っていた男性。取引先は、おみやげ屋でした。観光地にある、おみやげ屋でした。男性は落胆します。そして、現地で売られている価格にも衝撃を受けます。売値の10倍の値段で売られていたからです。ボロボロ、ヨレヨレに凹み、アルコールを飲みすぎて消化中の食べ物を吐瀉した男性。

そんな彼を立ち直らせたのはゴッホの原画たちです。ゴッホの原画から力をもらい、筆づかい、色づかいを観察する男性。ゴッホの原画にふれた男性は、ある決意をします。オリジナルの絵を描くと。ゴッホのように認められなくても、100年後に彼の描いたオリジナルの絵が評価されればよいと。

複製画を書いた中国人の男性のひたむきさは、どこかゴッホと通じるものがあるように感じました。いろいろと心に残るドキュメンタリー作品です。

『世界で一番ゴッホを描いた男』を見ていて驚いたのが、ゴッホが入院していた病院の跡地が残っていること。そしてゴッホが描いたカフェが現存しており、さらに営業を続けていることに驚かされました。

ゴッホの魅力

ゴッホの魅力とは、絵心も絵画の知識もない人間がウンツクウンツク雑巾をしぼるように頭をつかい考えてみました。

まずひとつめの魅力「浮世絵が好き」ゴッホは、浮世絵コレクターでもあり、浮世絵の模写をし、浮世絵を油絵に描いてもいます。また浮世絵に似た構図の絵もあります。

ハリウッドスターが、来日したときに「ニホンノミナサン、コンニチワ」と軽く日本語でアイサツをするだけで好感度があがる、そんなイメージをゴッホにも抱きました。

ふたつめの魅力は「若くして死ぬ」だと思います。坂本龍馬や源義経、宮沢賢治などなど、若くして亡くなった人間は人気があるように思います。

そして、才能があるのに世間に認められず、貧乏のまま死んでいった人生。右の眼でかわいそうと思いつつ、左の眼でゴッホの人生より私の人生はマシだなと考えてしまう人間の汚いところを認識させられるゴッホの生きざま。

ゴッホが亡くなった37歳をオーバーしてしまった、私。

ゴッホの最大の魅力は、やはり「絵画」そのものでしょう。

『ジャガイモを食べる人々』よりも、カラフルな絵のほうが私は好きです。こってりと厚くぬったバターのような筆づかい、デフォルメされた家具、金色に輝く穂、夜空と河に浮かびあがる星たちを、愚直に、勤勉に、真面目に、一心不乱に寿命というチューブをしぼりキャンパスに塗りたくった絵画たち。

ゴッホの寂しいような、人の気持ちを見透かすような眼のゴッホの自画像を見つめていると。

「オレは人生の敗者だと認めたが、オマエはどうなんだ」と、ゴッホの声が。



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