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納豆は混ぜるものではない、つき、するものだった。こんもりと盛りあがる納豆の本当の旨味 【 納豆レシピあり 】納豆パスタ 納豆揚げ 納豆汁

魯山人いわく、納豆は何百回かきまわせ。

日本食のバイブルみたいな魯山人。海外のレストランに醤油をもちこんだ魯山人。たくさんかきまわすとおいしいそうだ、納豆は。

だが、しかし、納豆はつき、するものだと思う。

やすく、栄養価はたかく、過去の日本人、そして今の日本人の元気を支える納豆。その納豆は、つき、するものだと思う。

納豆の栄養効果は、ググると、これでもかとズラズラと納豆の糸のようにでてくるので調べていただきたい。ただし、納豆はググるものでなく、つき、するものだ。

ダンシャリーのやり玉にあげられるすり鉢に納豆を2パックいれる。ひきわりのほうが大粒よりもつぶしやすい。

さらに、ひきわりのほうが、香りもよいと思う(個人の感想 )

すりこ木棒をたて、ずんずん、ずっこんずっこん、餅をつくようにつく。餅をつかない人もいるか。憎いアンチキショウの顔を思い浮かべながら、納豆にすりこ木棒を突き立てる。納豆がペチョリと凹む。白い糸がどこからかでてくる。こまかくついたり、おおきく振りかぶってついたり、強くついたり、弱くついたりしていると、納豆が粘り気のある白い繭に包まれる。

左手をすりこ木棒の上におく、右手ですりこ木棒の中央あたりをにぎる。左手は固定したまま、右手で円をえがく。左利きの人は、反対にするとよい。

納豆がつぶれる。白い繭が茶色になる。茶色い繭は、粘り気もでてくる。右手の上腕三頭筋が悲鳴をあげる。熱をもったようにヒートする。この作業だけは鍛えても鍛えても上腕三頭筋は悲鳴をあげる。

上腕三頭筋が悲鳴をあげだすと、納豆がすり鉢いっぱいにひろがっているだろう。納豆を中央にあつめる。あつめるついでに納豆の粒をつぶす。納豆を中央にあつめたら、またしも右手の上腕三頭筋が悲鳴をあげるまでする。する、悲鳴をあげる、あつめる。する、悲鳴をあげる、エンドレスにくりかえす。納豆は糸からねっとりとした物体になる。その物体に空気がはいるとマグマの泡がもかりぽっかりと爆ぜるような音がする。

ひとつひとつの納豆の粒から、ひとつの大きな粒になる。ここで醤油などお好みの調味料をいれてもよいが、まずは、上腕三頭筋が悲鳴をあげながら作った納豆の最終形態の極みともいうべき納豆の旨味を純なままたのしんでもらいたい。

餅のように、ねるねるねるねのように、もったりとのびる納豆。つき、すっていない納豆の糸はツーッとのびる。つき、すった納豆はねっとりとにゅる~んと全体が持ちあがるようにのびる。

このつり、すった納豆、服につくとエライことになりますゾ。

納豆ごはん

静かに慎重に、不発弾を処理するように納豆をほかほかと白い湯気をたてる白米のうえにのせる。そのまま食べてもよいのだが、白米の湯気で蒸すことで、納豆の風味は濃く厚いものになる。

納豆のねばりけは、つき、することで”ぬるみ”と化している。エアーズロックのように白米のうえに納豆が屹立している。地球の中心で「愛と納豆」と叫びたくなる。LOVE&NATTO。

納豆はのびる、にょーんというよりも、ぬーんとのびる。香りもぷーんではなく、ぷ~んとゆるく香る。パクリと口にいれるとねばらず、ぬるりとしている。そのぬるりが甘い。はんなりとした典雅な甘さ。自然な甘さの極致とでもいえるのではないだろうか。舌と鼻が疲れることがない。ぬらりひょんのように自然に忍びよる旨味。

つき、すった納豆と白米を食べる。白米を食べているのだ。たしかに世界に冠する日本のうますぎるほどの白米を食べている。しかしだね、白米の存在を感じられない。それほどまでにつき、すった納豆の旨味は強い。白米は納豆の隠し味。

毎朝、毎朝、この納豆のせご飯を食べていれば元気になること間違いなし、ただし、上腕三頭筋は死ぬ。

つき、すった納豆だけでもいいのだが、元気になる食材の筆頭といえば、そう、ご存知ニンニク。

ニラ、ラッキョ、ニンニク、坊主が元気になりすぎるので食べられないと言われているニンニク。坊主でもなんでもなく元気にならねばならぬ現代人。積極的にニンニクを食べたいところ。

ニンニクの香りがダメな人はいらっしゃるでしょう。であるならば、つき、すった納豆とニンニクを混ぜるとゆるくなる。

醤油漬けのニンニクをすり鉢にいれる。

生ニンニクでもよいが、生ニンニクは胃の壁に優しくはありませんゾ。

ニンニクを漬けた醤油の風味はよくなり、いろいろな料理に使える。ニンニクの醤油漬けは、お手軽に作れる。だけどおいしい調味料、その調味料を台所の片隅に置いておく、それだけで「コヤツ料理ができる」と思われる、かもしれない。

ニンニクをすりつぶし、納豆を2パックくわえる。なぜ、いつも2パックなのか。3パックでも4パックでもかまわない。ただ、納豆の量を増やすと、混ぜるときの抵抗が頑強なものになる。上腕三頭筋がストライキをおこす可能性がある。なので、2パック。

淡々と滾々と納豆とニンニクをつく、上腕三頭筋がヒーヒーと悲鳴をあげながら納豆とニンニクをする。

すり鉢から漂ってくる香りがいつごろ変化したのか、上腕三頭筋の悲鳴がおおきすぎてきづかなかった。ニンニクと納豆の香りが混ざりあい魔香といった香りになっている。納豆の香りとニンニクの香りのかけ橋になっている醤油。

醤油の香りをバニラの香りという人がいる。ナニヲイッテンダと思っていた。だがしかし、この納豆とニンニク、醤油の香りはバニラのように感じられる。

納豆パスタ

ニンニクといえば、白米よりもパスタにミートする。

つき、すった納豆は、まるでマグロやシーチキンなどの魚肉のように見える。つき、すった納豆をナーチキンと命名するとしよう。

ノリを巻かずとも軍艦のようにそびえたっている。パスタの海に浮かぶ黒鉄の納豆丸。黄身とネギ、ゴマをふりかけておく。この納豆パスタは、元気いっぱいの浮沈艦。

パスタにまぶしたオリーブオイル。じつはオリーブオイルの匂いもなかなかクセが強いと気づかされた。大豆のような緑の粒から造られるオリーブオイルと納豆の香り。精妙に臭い。だが、その臭さがよい。そういえば、オリーブオイルと納豆、パセリが好きだった皇族がいたような。

つき、すった納豆をのせたパスタ。納豆パスタのなかでも上位にくるであろう旨味。魚介類を食べているような、ブランデーなどをフランペしたようなコクのようなものを感じられる。

つき、すった納豆をのせたパスタは、ほかの納豆パスタをつき飛ばし、すりつぶし、納豆パスタの頂点へと進撃するようなポテンシャルがある。しかし、その進撃には上腕三頭筋の犠牲が必要ではあるが。

なんだ、炭水化物とばかりあわせているのかよ、つき、すった納豆は、そればかりかよ。いえいえ、そのようなことはございません。

納豆の揚げもの

つき、すった納豆で作るオカズをご紹介しようじゃありませんか。

納豆2パックをつく、する。ここはいま流行りの動画のようにカット。

ノリを用意し、つき、すった納豆をぬりつける。

うまいことノリをまるめ、つき、すった納豆が飛びださないようにスティック状にしておく。そして、粉をふっておく。米粉をふっておいた。納豆にはやっぱり米だよね。

米粉と水を混ぜあわせる。トロリとした粘度になるように調整する。つき、すった納豆をつつんだノリを米粉と水を溶いたものにつけ衣をまとわせる。

うすくひいた油にいれ焼き揚げる。温度は高めがよい。火は通っているので衣をカリッとしあげるだけでよい。深い油で揚げてもよいのだが、揚げたあとの油の納豆の香りがとても気になる。納豆好きにはたまらない油にはなると思われるが。

ざっくりと揚げ油をきる。

熱々のうち、ノリがぱりっとしているあいだに頂く、これが礼儀でござりまするぞ。冷えてもマァいけますが、やはり熱々をパクリとやる、これが揚げ物に対するリスペクトでござりまするゾ。

納豆のちょびっと飛びでたところの色をご覧あれ。揚げ物のおいしい色としか形容できない。そして、揚げたノリの存在感よ。香ばしさが3倍にふくれあがったようだ。

お箸でつかむと曲がることなくピンッと立つ。パクリと食べるとノリと衣がパリッと音をたてる。液状化し揚げられた、つき、すった納豆がぬるりと飛びでる。舌を火傷した。全治3日の火傷をおった。皆々はお気をつけください。

礼儀がなんだ、リスペクトがなんだ、揚げ物は安全が第一だ。火傷しないように「ふ~ふ~」しながらパクリと食べる。

納豆ではない軽さ。納豆が空気のように軽い。すっているあいだに納豆にまぎれこんだ空気なのだろうか。軽いのだがノリと納豆の風味は強くワーっと主張している。妙味というった絶妙なバランスのお味。軽さはあるが、疲れない旨味がある。腹にもたれず、それでいて食欲を盛りあげてくれる応援団のようなエールを感じる。

つき、すったあとのすり鉢だが、納豆の残滓がのこっている。そこで、熱々のお湯をいれしばらく待つと納豆の旨味がお湯に溶けだしキレイになる。そのお湯に味噌でも溶きいれれば味噌汁になる。納豆ご飯を作りつつ、味噌汁もできるすり鉢。なんと合理的な調理器具でしょうが。上腕三頭筋の犠牲には眼をつぶりつつ。

納豆汁

納豆の残滓を処理しながら思い出した納豆レシピがある。東北のほうで食べられている納豆汁だ。

つき、すった納豆をいれたお汁は滅法界いける。澄んだすまし汁や貝のお吸物とは対極に位置する風味の納豆汁。

おそらく東北のかたが作られている厳密な納豆汁ではなく、あくまで冷蔵庫に残っている根野菜と、つき、すった納豆をつかった無頼風納豆汁レシピ。

水1リットルほどの昆布と干しシイタケをいれておく。半日ほど放置しておくとよい出汁がとれる。つき、すった納豆の風味に対抗できる味の土台となる出汁になる。なるべく涼しい場所に置いておくとよい。

半日放置した鍋に、冷蔵庫に転がっている根野菜を刻みいれる。ぶよぶよに戻った干しシイタケも切っておく。昆布はとりださずにそのまま煮る。

キノコをいれると味がグッと深いものになる。つき、すった納豆の風味があるので深い風味のお汁になるのだが、キノコをいれることでさらにド深い風味になる。

冷蔵庫でしなびかけの根野菜との相性はいいのだが、葉野菜系とはあまり相性がよろしくない。悪くはないのだが、葉野菜の新鮮な香りが、どこか土の香りのする納豆汁の香りとミートしないように思う(個人の好みではある)

根野菜をお好みの大きさに切る。根野菜の種類をたくさんいれたほうが風味はゆたかで強いものになる。地球の皮にうもれていた風味をお汁に抽出する。

畑の肉から作った油揚げもいれておく。油分をいれると十二単を着たように香りと風味が華やかになる。

灰汁(あく)は、とらない。灰汁は、はたして悪なのだろうか。納豆汁にかんしては、灰汁は悪ではない旨味のひとつだと思っている。

ことことと野菜を煮ているあいだに、上腕三頭筋に働いてもらいましょうか、また、鳴いてもらいましょうかね。

東北の囲炉裏のある部屋でお爺さんとお婆さんが、孫の面倒を見ながらコツコツと納豆をこねている風景はよいものだ。

結婚したての夫婦が、パートナーが疲れていないか気にかけ、つき、するのを交代する、すばらしいパートナーシップに涙がこぼれそうになる。

そんなことを頭で考えていると、上腕三頭筋の筋肉の毛細血管が焼ききれるような痛みに襲われる。

つき、すった納豆にすこしだけ醤油をたらす。そして、また納豆をする。

根野菜が柔らかくなってきたならば、鍋に味噌をときいれる。味噌はお好みの味噌をつかってください。ふたつの味噌をブレンドしてやればお汁の風味に奥行がでる。ふたつの味噌をブレンドするのがミソってね。

さて、味のほうだが、この味噌だけでビシッときめる必要はない。すこしモノタリナイぐらいに薄くしあげておく。味噌の味は薄め、それがミソってね。

ここで豆腐を手でつぶし鍋にくわえる。豆腐は先にいれておいてもよい。お好みで。

豆腐をいれたあとは、つき、すった納豆を鍋にがんばっていれる。ゴムベラなどを使うとよい。すり鉢にお湯をいれ残った納豆を鍋にいれてもよい。

ここで醤油や塩などで味をととのえるとよい。

たっぷりの納豆汁ができる。たっぷりの野菜をいれたほうがおいしいと思う。常温まで冷まし冷蔵庫にいれ保存している。食べるぶんだけを温めなおし、そのつど納豆汁をたのしんでいる。3日ぐらいは食べられる。それ以上は、ちょっとお腹の自信がない。

つき、すった納豆の旨味のねばりが、お汁のすみずみに行きわたり、お汁がぬるりとしている。地球の大地から収穫した野菜を納豆が包みこんだような旨味をしみじみと感じられるお汁。

根野菜のポタージュといった甘さ。土の香りがしてくるような素朴な風味。その二つと納豆の風味の相性は禅味。いま気づいたのだが、このお汁は菜食汁だ。肉に負けない強い風味の菜食汁だ。このお汁があれば、肉を食べたくならないかもしれない。そして、どこか人を優しくやせるような優しさがある。

そして、納豆汁は白米とあう。お漬物ともあう。納豆汁は、白米とお漬物といっしょに食べることにより、完の璧な円の味になる。

この3品を朝に食べたのであれば、今日1日はがんばれるゾといった気持ちにさせてくれる。

つき、すった納豆は、今を生きる現代人を元気にしてくれる。

ただし、上腕三頭筋は悲鳴をあげつづける。

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