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オリバー隔離生活記 DAY15

前日夜の時点で想像していたスケジュール

05:30 起床
06:30 ホテル出発、ホテルに呼んでもらったタクシーに乗る
08:00 病院で健康診断を受ける
09:00 タクシーで空港に向かう
09:30 空港到着、チェックイン
10:40 飛行機出発
12:40 到着、勤務先の担当者と合流
14:00 次の隔離先ホテルに到着
→第二の隔離スタート

できる限り準備はしたはずだった。それなのに…以下、現実。

予定通り5時半に起床。身支度を済ませ6時過ぎにホテルの部屋を出る。

ホテルの出口に向かうと警備員に止められる。「朝の出発は8時と決まってるから2時間待て」と言われる。え!隔離は昨日の夜までだよ!昨日ホテルのスタッフに6時半に出ることは言った!6時半発でタクシーも予約してもらった!ホテルのスタッフに朝どうすれば良いかを聞いたら、ただ部屋出て1階行って外出てタクシー乗ればいいよと言われた!今すぐタクシーに乗って、病院で8時に健康診断を受けてから空港に向かって飛行機に乗らないといけない!と言っても、「準備ができてないからダメです」と言われるだけ。めちゃくちゃ寒いほぼ外みたいなところにポツンと置かれた椅子で1時間半ほど待たされる。勤務先の人に助けを求めるも、早朝ゆえ誰も反応なし。

8時前にスタッフにやっと隔離解除の手続きをするから来るように言われて行くと、隔離証明書の名前のスペルが誤って記載されていた。一週間くらい前に、部屋に来たスタッフに名前やパスポート番号に誤りがないか聞かれ、その時に名前のスペルが間違っていたのでそれを伝え、直しますと言われたのに、その時と全く同じスペルになっていた。すぐに書類を作り直すから待てと言われ、更に15分ほど待つ。

8時過ぎにやっと解放。14日間の隔離を終え、久しぶりに外に出られた喜びを噛み締める気持ちにもならない。勤務先のスタッフとやっと連絡が取れて、状況を説明。病院へ遅れる旨を連絡してもらうように頼むが、病院は全く電話に出ないらしい。6時半から待っていたドライバーに結構キレられる。待っていた分の料金も払え!と言われる。とりあえずタクシーに乗り病院へ。

渋滞にはまり10時過ぎに病院に到着。昔、某海外のタクシーでぼられた記憶があるので、支払いの際は1枚ずつ紙幣を見せながら数を数えて支払い。領収書をもらい、車を降りる。

外国人は入国後30日以内に在留届を出す必要があるのだが、その必要書類に健康診断の結果を添付しなければならないのだ。隔離期間が終わってからではこの30日以内の申請が間に合わず、違法滞在になってしまうため、14日間の隔離が解けた時に、移動前に健康診断を受けないといけないことを前日に突然勤務先から知らされたのだ。予約していた飛行機(10時40分初)に間に合うかギリギリだったが、なるべく朝早い時間に病院の予約を入れてもらっていた。しかしこの時点でもう飛行機に乗るのは諦めざるを得ない。病院の受付で隔離先から出られず遅れてしまったことを説明。なんとか健康診断は受けられそう。ほっ。スーツケースがばか重いので受付でちょっと預かってくれませんか?と聞くと「NO」と言われる。いや、ノーじゃなくて…と思うが諦める。勤務先のスタッフからは、証明写真1枚必要と言われていたのだが、受付で証明写真3枚必要だから写真を撮ってこいと言われ、病院内のフォトブースですごい適当な写真を撮られる。

写真を持って受付にまた並んでいると、遠くから僕に向かって歩いてくる人。めちゃくちゃ話しかけられている。何事?と思ったら、さっき乗ったタクシーの運転手だった。どうやら、僕が払ったお金を、間違えてお釣りと一緒にそのまま返してしまったので、それを返せと言っているらしい。僕はお釣りをもらった時のことをはっきり覚えているし、払った金額も、お釣りの金額もその場で確認しているので、そんなことは絶対ありえない。運転手は手がつけられないほど激昂している。時間は既に10時半を過ぎ、午前中の健康診断は11時まで。無視して健康診断に向かおうとすると、行く手を阻まれる。なんなのこの人。仕方なく勤務先のスタッフに助けを求め、直接電話で話をしてもらう。その間に逃げるようにその場を立ち去り健康診断を受ける。身体測定や、採血、視力、レントゲン、心電図、血圧など一通りの検査を終え、結果を速達で勤務先に送る手筈も整え、終了。タクシーの運転手もいなくなったらしい。が、電話で話してもらった勤務先スタッフはめちゃくちゃ汚い言葉で罵られたらしい。(その後両替したお金、使ったお金、手元に残ってるお金を計算したが、確実に僕は払ったお金を戻されてない)

時間は既に11時過ぎ。僕が予約していた飛行機は30分ほど前に既に飛び立ってしまった。僕の乗る飛行機は一日一便しか飛んでいないのだ。さあ、これからどうしようと勤務先のスタッフと相談。とりあえず高速鉄道に乗って移動することにして、予約を入れてもらおうとするが、2等席が満席、1等席は2万円以上する…。2等席はまだ余裕があるっぽいので、とりあえず1等席のキャンセル待ちを入れておいてもらう。さっきタクシーでトラブったので、タクシーの手配も向こうでしてくれて支払いまで済ませてくれた。呼んでくれたタクシーを待つが、来ない。降り始める雨の中、びしょびしょになりながら、外で1時間タクシーを待つ。朝5時半に起きてここまで水1滴胃に入れてない。遠のく意識。

道に迷っていたタクシーが到着。高速鉄道の駅へ向かう。到着すると、当たり前のように金を払えと言われる。え?勤務先のスタッフが払ってくれてるのでは?そこでまたひとしきり揉める。また電話で話してもらって、やっと運転手は納得したらしく、無事にタクシーを降りる。

高速鉄道駅の入り口は身分証明書をかざしてゲートを通るようになっているが、パスポートはかざせそうにない。え、これどうやって入るの。バカでかいスーツケースを引きずりながらうろうろ。やっと従業員のいるゲートを見つけ、パスポートを見せて中に入れてもらう。次は荷物検査。スーツケースを開けろと言われ、日本から持ってきて隔離中フルーツの皮をむいたりするのに活躍していた果物ナイフを没収される。悲しい。時間は1時過ぎ。とりあえず何か食事をしないと…と思い駅内を歩く。既に14日間の隔離で中華風のものは嫌というほど食べた。サブウェイの看板を見つけ、サンドイッチがいい!と思う。ツナサンド、オニオン抜き、マヨネーズ少々のサンドイッチと、アメリカンコーヒーを注文。2000円札みたいな紙幣を渡すと1000円札みたいな紙幣がホイっと返ってくる。え?サンドイッチとコーヒーが1000円?1500円くらいお釣りが返ってくると思っていたから、戸惑う。しかしここまでの道中でトラブルが多すぎて、もう喉から声を出す力も残っていなくて、何も言わずにその場を離れる。イートインのない店舗だったので、駅の隅に座ってコソコソ食べる。うまい。(その後調べたら本当にツナサンド600円、アメリカンコーヒー400円なことが分かった。サブウェイは金の持て余した富裕層の戯れか)

駅は2階建でめちゃくちゃ広い。東京ドームには行った事ないけど、東京ドーム2個分くらいすっぽり入りそうなくらい広い。そして信じられないくらい人で埋め尽くされている。この状況を歩いているだけで疲れる。もともとは空港で両替をしようと思っていたのだが、空港には行かなかったので、ここで両替がしたい。フロアガイドを見ると銀行ATMが4つあるらしい。1つずつ行ってみるが、ない。スーツケースで両手が塞がり、外が寒くて着込んだのに中は暑くて球の汗が落ちる。辛い。諦めて、壁際にしゃがみ込み時間を潰す。どうしよう、次の14日間の隔離ホテルで支払う金がない。

勤務先スタッフから2等席のキャンセル待ちが取れたと連絡があり、発券窓口で発券。その後15時過ぎ出発の列車に乗り込み、無事に出発。周りの人たちはイヤホンを付けずにスマホ最大音量で動画を見ている。信じられないくらいうるさい。僕は律儀にイヤホンを付けて、必死に精神統一して本を読む。6時間後の21時過ぎに勤務先のある目的地の街へ到着。駅の入り口で勤務先スタッフが待っていてくれた。英語が通じる!生身の人間と意思疎通できるのは14日ぶり。そして一緒にいる隔離管理スタッフも、日本語でこんにちは!ありがとう!と話しかけてくれたり、歓迎しますと言ってくれたりして、なんだかほっこり。

第二の隔離先は駅から徒歩5分の距離。日本の予約サイトとかには乗ってない、謎の宿泊施設。朝まで泊まっていた四つ星ホテルとの落差にちょっと悲しくなるが、なんとこの街では隔離費用を全額自治体が負担してくれることを知る。食事も無料!それならもう何も文句は言うまい。部屋の入り口まで勤務スタッフが来てくれて、説明をその場で通訳してくれて、聞きたいことなども聞いてくれてとても心強い。ミネラルウォーターは食事の時1本くれるらしいが、足りない時はお金を払って追加できるかと聞くと、宿泊施設のおじさんが、「1人1日3本なんだけど、5本にしてあげるよ。特別だよ!」と言ってくれる。優しい…。勤務先スタッフが「おじさん、英語が喋れないから緊張して怖がってるけど、優しい人だよ」と言う。死ぬほど辛かった1日の最後に、少しだけ明るい光が見えたような気持ちになる。そして部屋に一人になり、隔離生活DAY15がDAY28へ向けまた始まったのだった。

続く…

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