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「キラキラネーム」を言語学的に8分類した論文

「希星」
「月雫」
「心結」

最近の子供の名前を、読みづらいと感じることはないだろうか?

俗に「キラキラネーム」「DQNネーム」などと言われる、個性的な名前たち。



私が最初にこのような名前に遭遇したのは、もう15年以上前だったと思う。

友人の親戚に赤ちゃんが生まれたというので、名前を聞いたところ・・・

「心愛」と書いて「ここあ」と読むという。


ん??

ここあ、って、あのチョコレートの飲み物だよね?!

というより「愛」を「あ」って読めるのか??


軽く衝撃だったのを覚えている。

だが今やこのような名前は「多数派」なのである。


言語学的に、このようなキラキラネームはどう扱われているのだろう。

今日は、このようなキラキラネームにまつわる論文を見つけたので軽く紹介したいと思う。


今日の論文はこちら▼

山西良典・大泉順平・西原陽子・福本淳一(2015).人名の言語的特徴の分析に基づくキラキラネーム判定.日本感性工学会論文誌

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjske/advpub/0/advpub_TJSKE-D-15-00030/_pdf


論文内の「キラキラネーム」の定義

この論文で使われている「キラキラネーム」の定義はこうあった。

「子どもにつけられた名前の中で、常識的には考えられないような名前をキラキラネームと定義」する。

なかなか攻めた表現ではないだろうか(汗)


さてこの論文、キラキラネームの言語的特徴を8つ取り上げている。

具体的に見ていこう。



(1)漢字の個数【華美音:けびん】

キラキラネームは、一般的な人名に用いられている漢字の個数よりも多い。

なぜなら漢字一文字=1音(または1音以下)の読み方を充てることが多いから。

例)華美音 ⇒ けびん (男)
  牙琥翔 ⇒ がくと (男)


(2)読みの発音数【大賀寿:たいがーす】

キラキラネームは、一般的な人名よりも読みの発音数が多い。

理由は(1)と同様。

例)大賀寿  ⇒ たいがーす (男)
  大勇明育 ⇒ おさむのすけ (男)


(3)同一漢字の複数回使用【七七七:ななみ】

キラキラネームの中には、同一の漢字を複数回使用するものがある。

例)笑笑  ⇒ にこにこ (女)
  七七七 ⇒ ななみ  (女)


(4)異体漢字の使用【愛來:あいら】

キラキラネームの中には、異体漢字が含まれることが多い。
異体漢字とは、常用漢字と同様に使用可能であり読むことは可能であるが、形が異なっている漢字のこと。

例)愛來  ⇒ あいら (女) ※「來」が異体漢字 
  愛凜  ⇒ あめり (女) ※「凜」が異体漢字


(5)漢字の音訓読みにない読み方の使用【希音:ねおん】

キラキラネームの読みは、漢字の音訓読みに一致しないものが多い
漢字の読みではなく、漢字から連想される音を読みとすることが多いため。

例)希音  ⇒ ねおん (女)  
  ※「希」は「ね」と読まないが、連想される音を与えているが異体漢字


(6)漢字の総画数【大勇明育:おさむのすけ】

キラキラネームは、一般的な人名よりも漢字の総画数が多い
(1)に述べた漢字の個数が多いことや、(4)のように異体字の使用が多いことも関連している。

例)大勇明育 ⇒ おさむのすけ (男) ※筆者再掲


(7)漢字と性別の不一致【真里菜:まりな(男)】

キラキラネームの中には、漢字と性別が一致しないものがある
男性の人名なのに女性の名前として使われたり、その逆であったり。

例)真里菜 ⇒ まりな (
  麟平  ⇒ りんぺい(


(8)読み方がカタカナ単語として存在【寿江琉:じゅえる】

キラキラネームの読み方には、それ自体がカタカナの単語として存在することが多い。

例)寿江琉 ⇒ じゅえる (女) ※英語の「jewel」に相当
  夢泡  ⇒ むーあ  (女) ※英語の「moor」に相当

おわりに

漢字は言語学的に「表意文字」といって、一つ一つの字が一定の意味をもっている。この点がアルファベットのような「表音文字」とは違っている。

私達日本人は、漢字を使う上で「この漢字はこのような意味」「この漢字はこう読む」というのがある程度予測できるものだ。

しかし、キラキラネームは違う。

どう読むのか、どういう意味なのか、果たして男名か女名か、予測が難しい。

「達夫」「豊」「博美」「麻衣」などの名前なら、読み方や性別は連想しやすいだろう。

でも、「路美於」「虹恋」「新萌」「楽」のような名前なら、まず読み方が分からないし、性別も連想するのが難しいこともある。

キラキラネームをつける親は、あえて漢字の個数を増やしたり、音の多い読み方をつける傾向が明らかになった。

私見だが、名づけ親として子どもに「個性」を出すために考えたのだと思う。

この8分類を頭の片隅に入れて、今後キラキラネームに出会った時は冷静に分析してみよう。


(追記)
今回記事を書いてみて、牙琥翔「がくと」のようにキラキラネームを入力変換してもスムーズに漢字が出てこないのが大変だった。

「牙琥翔」の場合、

まず「kiba」と入力して「牙」に変換。

さて、次は「琥」だが・・・
この「琥」の読み方が分からないのだ・・・!
仕方なくGoogleで「王へんに虎」と入力し、「琥」を見つけてコピペする。

最後に「syou」と入力して「翔」に変換すれば完成。

1分以上かかるではないか。

ということで、今後社員や学生でキラキラネームの人名に出会ったら、ユーザー辞書登録をすることが必要になりそうだ

もしかしたら、今後これらの名前が一般的になり、一発変換できる時代がくるのかもしれないが。



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