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西海Freak Story③ 「西海橋」

橋の袂から海面に落ちる手のひらサイズの葉っぱを見ていた。

ひらひら。ゆらゆら。

ふさわしい畳語(じょうご)を考えている間にも、その葉っぱは海面についた。そして次の瞬間、渦潮に飲み込まれた。

ゴォォォー

飲み込まれた葉っぱを再び吐き出す事は無い。それどころか、まだ食べ足りないと言わんばかりにヤツ等は唸っている。荒々しい渦潮がグルグルと。気が付けば所々で渦を巻いていた。
このウネウネとした躍動感は、ゴッホの『星月夜』に描かれた夜空のようにも見えた。
そして更に、高架下の袂から対岸に架かる一本に伸びた長い橋影が、真っ黒い糸杉の様な不気味さもあった。

ブォォォー

今度はその渦潮をかき分けるように、大村湾へと向かって一隻の舟が走り抜ける。並々にどっぷりと浸かった満潮の激しい潮の流れに逆らいながらも、200馬力と描かれた船外機の力強いディーゼルのエンジン音が潮騒を突き破った。

バチャバチャバチャ

続いて、そのエンジンの雄叫びに共鳴したのは真っ白な一羽のサギだった。飛ぶ鳥が十二分に跡を残しながら、波間に沿ってリズムよく翼を羽ばたかせた。そして渦潮の中心を突破すると、渦の力を借りたかのように、再び静寂に包まれた空へと昇って行った。

今日もこの場所は騒がしい。

潮の香りが空気を満たし、ほんのり薄い塩味が唇に残ったようだった。

ーーーおわり

#西海市 #長崎観光 #西海橋 #エッセイ #ショートショート

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