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石田夏穂作品二冊「黄金比の縁」「我が手の太陽」感想~♪ギンギラギンにさりげなく さりげなく生きるだけさ♪


☆石田夏穂さんの小説を読むと、「ギンギラギにさりげなく」を口ずさんでしまうなぁ~

♬覚めたしぐさで熱く見ろ ニッチな比喩に笑いなよ
リクルートスーツ引きよせ 熱い溶接棒渡すよ
言葉の粒を抱きしめるぜ そっと
ギンギラギンにさりげなく そいつが俺のやり方
ギンギラギンにさりげなく さりげなく生きるだけさ♬
(「ギンギラギンにさりげなく」替え歌より)

なぜだが...石田夏穂さんの小説を読むと、マッチのこの歌(ギンギラギンにさりげなく)が頭に浮かぶのだ(←知らんけど)

冷笑的なシニカルな主人公が多いのだが、やってることはギンギラギンに俺のやり方を貫こうとする様が私は好きだー♡

今回読んだ二冊に登場する主人公たちもそうだった。

☆『黄金比の縁』

ある問題から、会社にとって不利益な人材だと判断され小野は、花形部署から人事部採用チームに異動になる。
不当な辞令の恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。
そこで導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。


私は人事部で働いことはないが、会社の方針か?それとも担当者の好みなのか?
新入社員の顔がみんな同じにみえるんだけどー( ˘ω˘ ; )

担当のお偉い方が退職され、個性的な容姿な新人さんが採用されるようになり、やっぱり好みだった、疑惑?

小野のように会社に不利益になるような人材選びはしていないだろうけど、本書で描かれる人が人を選ぶむずかしさと胡散臭くさに納得した。

そして私が好きな笑えるニッチな描写も、この作品では健在だったYO💛

・目下、私は「人事の小野さん」で通り、この「人事」という枕詞は「ミスターこと長嶋」のように私にバッチリ定着している。(本文より)

たしかに、ゴット姉ちゃんの和田アキ子よりも、Qちゃんの高橋尚子よりも、ミスターだわ(*´ж`*)ブッ

・新卒採用では「何でもやる」「全部に興味がある」「とにかくチャレンジしたい」ちょっと怖いけど何でも頑張りたい」といったAVの処女っぽい姿勢が貫ばれるものだ。(本文より)

アイドルじゃないとことがいい~(;゚;ж;゚; )ブッ

☆『我が手の太陽』

なのに、第169回芥川賞候補作になった『我が手の太陽』では、ニッチな笑いを封印。

腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工の伊東が突然、スランプに陥った。


「ザ・職人」とよばれる溶接工が主人公で、溶接の手引き本のように細かく仕事の内容が描かれている。

こういう緻密な描写を読むと石田さんも書く「ザ・職人」だと私は思う。

溶接工の中で、最も欠陥率の低い溶接工だったのに直近の欠陥率が高くなり、花形の現場から外される主人公。


溶接工という仕事は、生涯現役はむずかしい職業のようだ。
でも伊東は生涯現役でありたいが、日々変わりゆく働き方。
傲慢な自尊心を脅かすのは自分。
見下されり、ばかにされることの恐怖。

これ、わかる。

今は、私が若いころの手書きしてた働き方ではない。
変わりゆく仕事形態に覚えてついていくのに必死。
それぞれの役目があるとはわかっていても、後輩にバカにされてはいないのかと頭はよぎることはある。

老いてゆく身体。
日々更新される世界とどう自分は向き合えるのか...。
わたしはそんなことを感じながら読んだ作品だった。

いろんな顔を見せてくれる石田作品をこれからも追いかけたいなぁ。


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