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京極夏彦「姑獲鳥の夏」感想~そもそも起こる筈のないことは起こらない~

・見誤って恥ずかしい話

台所の床に落ちていたプチトマトの干からびた「へた」が「蜘蛛」に見え、ビビったのは私です。

タイヤの「チューブ」が「蛇」に見えてビビったわ、っていう人もいるよね。

私としたことがー!
驚いた姿を誰かに見られていたら恥ずかしいσ)>ω<*)テヘ

あなたはどんなひとりビビり『見誤り』をしたことありますか?

では、柳の枝が風になびいてると幽霊に見える(;Д;)ギャー!

これはどうだろう?
見誤っているのだろうか?
本当に幽霊なんだろうか?

それとも...。
その答えを本書は教えてくれまーす!

・簡単あらすじ

<簡単あらすじ>
この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津(えのきづ)らの推理を超え噂は意外な結末へ

積読歴...数年?いやもう少し( ˘ω˘ ; )
最近買った本も読めてないのに、なんだか読みたくなっちゃたのよ、モーレツ!!
よって600ページ越えに手を出すのであった。


・冒頭から100ページ近くは話が長ーい!でも、読めるのを止めるな!

有名な作品なので、登場人物である古本屋で憑き物落としの京極堂さんの名前は知っていた。

京極堂さんが主人公だと思っていたが、本書の主人公は、京極堂の友人で文士で鬱病持ちの関口だよね。

関口の話の前に大切なことを伝えておこう。

冒頭から100ページ近くは、密室の謎を、妊婦の謎を探るために動き出すのではなく、心と脳の認知話(←たぶん)極堂さんのうんちくと講釈話が、とにかくながーーい!

でもね、最後まで読むとこの100ページが大切だったことがわかる。

解説にもあったが、(1994年当時)本格ミステリ界に賛否両論の大旋風を巻き起こしたとある。

わかる、わかる。

読者の先入観や思い込みを利用し、一部の描写をわざと伏せたり曖昧にぼかしたりとする叙述トリックのように見せてそうじゃない?(←たぶん)…モヤっとした不思議な余韻が良き。

・柳の枝が風になびいてると幽霊に見えるのか?関口くん。

20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという事件に探偵の榎木津と共にかかわることになった関口。

探偵の榎木津が見えているもの(死体)が、関口にはなぜ見えないのかが『カギ』となって物語は進む。

・だいたいこの世には、あるべくしてあるものしかないし、起こるべきして起こることしか起こらないのだ。(本文より)

・そもそも起こる筈のないことは起こらない(本文より)

・命の正体が記憶そのもだから...(本文より)

・我我が今見て、聞いて、体感しているこの現実は現実そのもではない。脳がその裁量によって選択した情報で再構成されたものだ。...僕等が見聞きしているのは凡て仮想現実なのだね。(本文より)

これらを踏まえ、柳の枝が風になびいてると幽霊に見えるのか?
心が柳だと認めたくない場合は幽霊として現れ見える。

関口が認めたくなかったものは何か、依頼主の久遠寺家の闇がやばすぎるー!からの闇の呪いを解く京極堂さんが後半の読みどころ。

・本書の面白さ

本書の深いところまで理解できたのかと問われたら...そうね、大まかな流れしかわからなかった(;'-' )

でも、面白かったYO!

京極堂さんが語る『この世には不思議なことなど何もないのだよ』とする現実を、幻想的な世界観で見せてくれているので、時間軸がゆらゆら揺れているような不思議な読書体験にハマってしまったわ。

次のシリーズ「魍魎の匣」も読みたいが1000ページ越えなんだよね(;゚∀゚)ちょっと時間を置くか...。


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