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ゲームのように楽しい勉強とは(4)

前回は、ゲームの楽しさのある勉強ということで、対戦相手との社交がある学習、運要素のある学習について考えてみました。次は課題発見、課題解決について考えてみましょう。

デジタルゲームにはどのような楽しさがあるか、デジタルゲームになぜハマるのかについてはそれぞれ以前触れていますので、興味があればそちらを見ていただくと話がつながると思います。

課題発見、課題解決とは

課題発見、課題解決をゲームの楽しさの一つとして紹介しましたが、この言葉自体は教育現場でよくつかわれる言葉です。教育で行われているそれと比較・検討しやすいように同じ文言を使ってゲームの楽しさを説明しました。

課題発見、課題解決とは読んで字のごとく「課題を自分で発見してそれを解決すること」です。そのようにして行う学習を課題発見、解決学習と呼びます。最近は小学校でも課題発見、解決型学習の活動があります。

逆に「課題発見、解決型でない学習」とはどのようなものでしょうか。それは課題を与えられてそれを解決する学習のことです。学校では多くの場面で先生から課題が提示されてそれを解決するという流れをとります。もちろん上手な先生は、ただ唐突に課題を提示するのではなく子供たちがその課題を自分の課題として感じるように授業の導入を行い、それを解決したいと思えるように上手に誘導する授業を組み立てられます。

しかし、その場合でも先生はその課題の答えを知っている立場であり、子供たちは先生は答えを知っていることを知っており、授業はみんなでその答えに到達しようとするものであるという暗黙の了解のもと学習が進みます。このような流れ、子供たちのマインドで行われる学習は課題発見、課題解決型の学習ではありません。

現実の課題を発見して解決するゲーム

さて次は、学校における課題発見、課題解決はいったん置くとして、ゲームの場合の課題発見、課題解決について考えてみましょう。

みなさんはマインクラフトというゲームをご存じですか?マインクラフトを端的に説明するなら「あなた(アバター)は突然、知らない世界に出現しました。後は自由に生きてね」というゲームです。ゲーム開始後、どこかにポツリと立っていてその世界のルールに沿う限りなんでも好きな事を自由にできます。

マインクラフトの世界の中でじっと立っているとやがて夜がきて、ゾンビがやってきてやられてしまいます。さて、どうやって克服しようかというところから課題発見がはじまります。穴をほって隠れるか、木を切って小屋にこもるか、戦うための武器をつくるか…解決方法は無数にあります。

活動しているうちにゲームの中のアバターはお腹が減ってきます。さて、お腹いっぱいになるためにはどうしたらよいか。誰かから「お腹いっぱいにしろ」と指示されるわけではなく、ゲームの中のアバターを死なさないためにお腹がへることが課題であることを発見するのです。釣り竿を作って魚を採るか、そこらへんを歩いている豚を狩るか、種を手に入れて小麦を育てパンを作るか…どの解決方法を試して、どうやって解決するかはすべてプレイヤー次第です。

このように周りの環境(この場合ゲームの中の仮想世界ですが)を分析して、何をすべきか課題を見つけ、目標を設定して解決していくことが自然にできるようにこのゲームは設計されています。

本当に「本人にとっての課題」か?

再び学校の課題発見、解決型学習に戻って考えてみましょう。このタイプの学習としてよく行われるのは社会課題解決型の学習です。最近ではSDGsと関連付けておこなわれることも多いですが、環境問題をどうするか、社会の格差をどうするか、といったような社会の大きな問題に関しての課題を発見させ、それについて調べ学習をさせてまとめさせる、といったような形式で行われることが多いようです。

しかし、環境問題、社会の格差などは本当に小学生である子供にとっての課題でしょうか?

このままだと社会が大変になるよ、地球が大変になるよという情報によって「そうなんだな」と思うかもしれませんが子供にとっては、自分の明日を脅かす問題ではありません。仮にそれらを本当に課題だ、何とかしなきゃと思ったとしても到底子供自身の手で解決できる課題ではなく、結局のところ「みんなで解決していかなければならない問題だと思いました」というような、先生に褒められる決意表明をして終わりにしてしまうことがほとんどではないでしょうか。

自分の環境を変える学習

課題発見、解決型の学習をするためには「課題である」と子供自身が認識しないといけません。自分の日常から遠い世界の課題や、生活で使わない知識の習得は、子供自身がそれが自分の課題であるとは認識しにくいでしょう。

子供が課題発見、解決型の学習に誘導するために大人ができるのは、日常の中で課題を見つける目を鍛える事、大人自身が日常の課題を学んで解決する姿を見せることです。

日常の中で一番簡単にその場面をつくり、培えるのは家事です。家事をゲームのように楽しむ取り組みについては「家事とゲームとARG」に書きましたので、興味のある方はご覧ください。

さて次はシミュレーション要素のある学習、アトラクション要素のある学習について考えてみましょう。

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