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愛車紹介6:LOOK KG86



1 はじめに

私が所有する自転車について求めているものは、基本的に
少年時代からおおむね成人になろうかと言った辺りの頃の
フラッグシップ的なマシン。
年で言えば1987年の辺りから、1992年の辺りに造られた物で
その当時、憧れだったメーカーの物です。
この6年間は丁度、私が中学~高校時代を過ごした期間。
言い換えれば、自転車に興味を示してからフェードアウトする迄の
期間となります。(笑
イタリアのDE ROSA。
日本のVOGUE。

それらは私の自転車に対する嗜好として
普遍的な性格が強い、言わばオーソドックスな物だと思います。

その一方対極とも言える、エポックメイキング的な物に対しても
非常に強い憧れを持ちました。
コンポレベルで言えば、以前紹介したDE ROSA Giro d'Italiaにある
デルタブレーキやTimeのカーボンフォークなど。

この、普遍的(保守的)なクロモリフレームに対し
カーボンパーツやデルタブレーキ等の先進的なメカやパーツを合わせる事による
レトロフューチャー感とでもいいましょうか。
この’80年代後半から’90年代前半を感じさせる構成に、私はグッと来ます。

効果は別として(笑、その存在がその後の潮流を変える程の物である事。
そこにもう一方の、対極・真逆ながらも憧れを持つのだと思います。
それを車体レベルで体現した1台が、今回紹介する
LOOK KG86です。

2 サイクルスポーツ誌バックナンバーに見る
 LOOK KG85と86の違い

ここで、自分の中で一つ疑問が。
この車体購入前から、KG85の存在は知っていたのですが
KG86の型番は、購入時初めて知りました。
細かい話だけど、KG85と86って、何が違うの?と
疑問が湧いて来ます。

そこで、LOOKのカーボン初期モデルである
KG85と、本件のKG86の違いについて調べてみたいと思います。

LOOK KG85は、1986年のツール・ド・フランスで
ラ・ヴィ・クレール・トウシバチームの中でも2大エースだった
ベルナール・イノーと、グレッグ・レモンのみが乗る事が出来た
秘密兵器的なマシンでした。

そしていつものサイクルスポーツ誌のバックナンバー、1986年9月号です。
このグレッグ・レモンが乗っているシルバーのマシンが
フランスTVT製OEM、LOOKブランドのカーボンフレームです。
つまりこれが、現在まで脈々と続いているLOOK全てのカーボンマシンの源流です。
この時点では車体にKG85との名称はまだ与えられていなかった様子で
この時が初実戦投入の、量産試作品扱いの車体だったのだと
私は勝手に解釈しています(笑
この年で現役を引退したベルナール・イノーと、これからの飛躍を期待されたグレッグ・レモン
この2名がこの年、このマシンでワンツーフィニッシュを飾りました。
そしてさらっと言及しているのみのLOOKマシン。
さらっと、と言うよりは情報不足と言うか、アナウンスも少ない状況だったのでしょう。
ケブラーの文言はありますが、カーボンに言及はしていませんね。
隣のカーボンディスクは、日本が誇るアマンダ製です。
こうして見ると日本の先端技術は既に凄かったのと、改めて感じさせられます。
そしてこちらは、サイクルスポーツ誌1987年2月号です。
こちらを紐解くと…
LOOK KEVLAR 2000、この時点で初めてKG85の名称がアナウンスされたのだと思います。
このテスト車を試乗した際、テストライダーの藤下雅裕氏がヘッド小物のガタを見つけ
上ワンを増し締めしようとしたところ、スチール製のフォークコラムがクラウンから
抜けかけると言う事態になったそうです。
PL法施行10年位前でしょうか、今考えれば大らかな時代でしたね。
続いて、サイクルスポーツ誌1988年1月号の、広告を見てみると…
この時、輸入元が何故か服部セイコーでした。
どうだ!と言わんばかりのカラー2ページ広告です。
異業種からの参入は、やはりバブルでかつソウルオリンピックを控え
サイクルスポーツが今後飛躍すると見込んでの
業務拡大の企業としての戦略だったのでしょうか。
この時点では、KG85のみがフラッグシップのカタログモデルになっていました。
この時の標準小売価格、336,000円ナリ。
そして続いて、サイクルスポーツ誌1988年3月号です。
この時、約1年前である1987年2月号の教訓からか
フォークコラムに抜け止めのノックピンが打たれる様になり
対策を施した形となりました。
この当時、フォークもカーボンのフルカーボンフレームは
LOOKのみで、他車種と比較して評判が良い印象だった様です。
この時点でもまだKG85がフラッグシップモデルだったのでしょう。
そして今度はサイクルスポーツ誌、1988年7月号を紐解くと…
ここで今回紹介の、KG86がカタログモデルとなりました。
この時点では、KG85との違いの説明は見受けられませんが…
そしてその少し後のサイクルスポーツ誌、1988年10月号で
特集、外車に乗る。で
他のメーカーの外国車に交じり、KG86のインプレッションが出て来ました。
そして記事の抜粋を見てみると
なるほどマイナーチェンジとありますが、KG85からの事を指しているのでしょう。
エンド幅が130㎜、8Sを見越した物なのでしょう。
そしてフォークの改修もノックピンの他に、さらに行われたのでしょうか。
確かにデュラエース8SのUGハブとカセットスプロケットはこの年の後半に発表されていました。
つまりこのフレームはデュラエースを基準に考えられ、作られていたのでしょう。

KG85と86の違い。
結論は、8S化をメインとした、KG85のマイナーチェンジ版と言ったところ
なのでしょう。

3 実車を見る

そして、改めて車体を見てみたいと思います。

逆光だったので、少し移動しました。
フレームは560㎜位でしょうか。
この’80Sを彷彿とさせるPOPなグラフィック、嫌いじゃありません。

まずは、ハンドル周りから。

この鮮やかな赤に、目がクラクラしてしまいそうです(笑

この個体はワンオーナー車で、長らくオブジェとして
室内保管され、オーナーが終活の一環で手放すとの事で
既に意図しない増車の中で葛藤した結果、所有を決意しました(笑

そして今回所有する上で、バーテープとサドルとブレーキレバーを交換し
後はペダルを除いて前オーナーが組み上げた時のままの構成に
なっています。

先に記した、サイクルスポーツ誌1987年2月号の表紙に感化され
BENOTTOの赤色バーテープを入手し、交換しました。
ブレーキレバーはSLR化後の、フードゴムが良好な物をストックの、BL-7402に交換しました。
元に付いていたのは、SLR化前のBL-7401でしたが
状態が非常に良好だったのでストックする為に交換したのでした。

バーテープはいつもの、BENOTTOの赤色ビニールバーテープです。
デッドストック品で、ビニールバーテープとしては
背筋がうすら寒くなる位の値段で入手しました(笑
LOOKのKG85、86、96辺りは
元々気になっていたので、ebay辺りでちょくちょく見ていたのですが
海外で所有されている個体を見ると、大体バーテープはBENOTTOが
多いんですよね、何故か。なのでその刷り込みが元々あり
更には色遣いは今回、勿論赤と決めていたので入手し取り付けました。
CATEYEでも同時期に似た材質のバーテープが販売され
それも現在はオークションで流通していますが
やはりBENOTTOの方が、色が段違いに鮮やかなんですよね。
BENOTTOで最近中々赤の流通はオークション等で見掛けませんでしたが
偶々タイミング良く今回に合わせ、入手できた次第です。

ちょっと光の加減で飛んでしまいましたが、BENOTTOのバーエンドは、やはりコレです。
流石にフランス車ですのでブレーキレバーとキャリパーは、右ー前、左ー後です。
ステムは近年は入手しづらい、7400デュラエース純正ステムのHS-7400。
ハンドルはハネCチネリのGiro d'Italia、幅40です。
ステムの長さは90㎜です。
いやしかし、このバーテープ本当に鮮やかな色で目立ちます。
フォークコラムのスペーサーが丹下と言うのも、非常に懐かしいです。
ヘッドもHP-7400です。多分ですが、ヘッドはITA規格だと思います。
確か先日オークションで売り出されていた、LOOK KG96のヘッド無フレームは
ヘッドの規格がITA、BBの規格がJISだったそうで、この頃のフランス車って
そんな感じだったのでしょうか?
そして、アルミラグとカーボンパイプは当然ですが、接着です!
ブレーキキャリパーの、BR-7400です。
裏面には、SLR化前の「7400」の刻印が見られます。

ブレーキキャリパーは、SLR化前の型番がBR-7400。
7400、7402共にピボットは同じ部品番号なんですよね。
ベアリング付きのピボットは
ブレーキケーブル上出しエアロ化前のブレーキレバー
BL-7400の時点で既に構成されており、この時既に
ブレーキAssyは最終的にSLR化を見通していたのかも知れませんね。

続いてシフターレバー周りです。
7S用のSL-7401が付いています。つまりこの個体は7Sです。

8S用のSL-7402より少し青っぽい感じの色のレバー、7401。
動作は良好、歯切れ良く小気味良い動作をしてくれます。
「7401」の刻印が見て取れます。
フロントハブは32Hです。
フロントハブ、HB-7400-F。
これも前期型と、マイナーチェンジ版の後期型の2種類があるそうです。
この辺りにサビが全く見受けられませんので、屋外での走行はやはり極めて少ないのでしょう。
そしてLOOKがフレーム供給を受けていたメーカー、TVTのステッカー。
元はヘリコプター等の部品を製作する、航空宇宙産業系のメーカーみたいですね。
日本で言えば三菱重工みたいな企業なのでしょうか。
この時代のカーボンフレームって、他のメーカーはフォークがアルミなんですよね。
TVTからフレーム供給をLOOKと共に同時に受けていた、アメリカのeclipseと言うブランド以外は。
つまりこの時代、フォークもカーボンの所謂オールカーボンと呼べるのは
TVT製フレームだけなのでした。

そしてバーテープと同様に迷いに迷った挙句に付けたのが
このサドル。ハイ、LOOKとRollsのコラボサドルです。

まさかこれが入手出来るとは思いませんでした。

これを取り付ける前に、ベースとなるサドル自体はRollsと
固く決めていたのですが、色について非常に悩み
すでに所有している、PINK VOGUEやBLUE VOGUEと同様に
バーテープの色と同色にしようと、赤のRollsを取り付けようとしました。
そして入手し、取り付けをしようかと言うところで
このサドルに出逢ってしまったのです。(笑
まさか、モンドリアンカラーのバッジが付いたコイツに
出逢えるとは…
また、サドル本体の色が赤の次は何だかんだで黒を考えていたので
コイツを取り付ける事に決めました。

そしてシートポスト(ピラー)は、SP-7400のAタイプ、Φ25.0(細!、です。
パイプ外径をクロモリチューブと同じ位にするに当たって
強度確保の為、内径を狭めた結果だそうです。
ちなみにこのB型であるΦ25.0、エアロタイプのシートポストを現在鋭意捜索中です。
シートラグ回り。シートピンのキャップボルトの他に…
シートステー側に有名な、緩み止のイモネジがあります。

リアブレーキも、BR-7400です。

ブレーキレバーをBL-7401から7402に交換の際
ブレーキワイヤーを一度取り外しましたが
トップチューブ内に取りまわして戻すのに、結構難儀しました。
フランス車ですが、半田に黄色いペイントを前後のワイヤー末端に施しました。
今回はカーボンチューブなので、溶け落ちた半田がカーボンチューブに当たらないよう
養生するのに気を遣いました(笑

シートステーに掛かるブリッジも、イモネジ止めです。
もうすぐ40年が経過します(笑

このブリッジ、KG85ですとシートチューブにカシメてあるだけで、イモネジはありません。
この当りもKG85からのマイナーチェンジなのでしょうか。
またサイスポのインプレッションで、Rブレーキを掛けると「しなる」とありましたが
それ程不安は感じませんでした。
(私が鈍感なだけだと思いますが…)
しかし、この車体のアルミ製のブリッジは
通常経年すれば製造後数年で白いモヤモヤのいわゆるアルミの腐食が起こりますが
材質が良いのか、本当に綺麗で顕著な腐食は感じられません。
きっと前オーナーが本当に大事にしていたのだと思います。

そして、クランク(チェーンホイール)周りです。

Fディレーラーはバンド止のFD-7400で、クランク長は172.5です。
ペダルは前々回紹介のBLUE VOGUE同様、PP-65です。

車体の製造年や色遣いを考えると
先に出たLOOKの広告に出ていた、赤色のPP-76も良かったのですが
箱入りで、中古ですが比較的状態の良いPP-65をストックしていたので
こちらを取り付けました。

車体とペダル、両方共にエポックメイキングな物同士です。
フロントは安定の52×42です。

そして、Rディレーラーは、RD-7401、6-7S用です。

6S用のRD-7400から発展した、6-7S兼用として販売されたそうです。
ディレーラー裏面に「7401」の刻印があります。


そしてカセットタイプの7Sです。


RハブはFH-7400-7となります。
7S用を示すステッカーが貼付されています。
今後この辺りは、8SのHGに交換しようか思案中です。

そしてホイールは前後共、ARAYAのPROSTAFF 340、32Hです。

やはりPROSTAFF340と言う名前だけあって、リムの重さは340gみたいですね。
今後は8SHGカセット~32H
そしてフランス繋がりでMAVIC GP4辺りに交換しようかと考えております。

そして、フレームを見てみます。

内側2層、外側4層のカーボン繊維の間に、1層のアラミド繊維ケブラーを
挟み込む事によって、軽さと強度を両立させたフレームです。
当時のままのグラフィックです。
ベルナール・イノーの名前が冠しています。
この時イノーはプロを引退し、LOOKの技術部長に就任していました。
LOOKは昔も今も、洗練された製品であると思います。
もうすぐ40年経とうとするこの車体も、色あせた感じは全くしません。

先にも触れた、トップチューブのワイヤーの取り回しの様子。
アウターワイヤは、トップチューブの出口から外に出ている2本で
トップチューブの中は、インナーワイヤのみが通っています。

ワイヤーカッターは、切れ味の良い物を使いましょう。
ワイヤー断面が荒いと出口手前でつっかえて、中々出てきてくれません。

ボトムの様子です。
先にも触れたように、パイプとラグは、接着です。
つまり、接着剤の粘着力が劣化したら、おしまいです。


チェーンステーに補強のブリッジはありません。

ちなみに装着しているタイヤはVittoriaのSTRADAですが
ご覧の通りロゴが旧ロゴの物です。
しかしこの時距離を20Km位走行しましたが
グリップ感に不安は特に感じませんでした。

出発前に7気圧で空気を入れましたが、経年による不具合も特になく走れました。
ただ、このトレッドの色はやはり黒にしたいです。
リアフォークエンド。KG85では製造メーカーのTVTの刻印ですが
KG86からは「LOOK」になっています。

4 むすびに

私も初の、新素材フレーム(但し約40年前の物ですが)を導入しました。
感触としては、「とにかく軽い」の一言に尽きます。
またそれに伴う、膝の負担軽減をダイレクトに感じました。
裏を返せば、クロモリフレームは踏力に対して素直な反応であると
改めて感じた次第です。

ただ、先にも触れた様に
接着フレームである事から、乗車の際には相応のリスクがある事を前提に
乗るべき物なのだと思いました。
多分、エポキシ樹脂系の接着剤で接着されているのだと思いますが
当然、劣化し接着力が低下するのは致し方無いものだと思います。
しかし、私自身はそれを持ってしても有り余る魅力溢れた
正にフロンティア的な1台だと確信しています。
「今乗らなければ、いつ乗る?」
そう言った種類の車体なのだと思います。
このタイミングで所有し同時に乗る事が出来た私は
幸せ者なのだと思います。

そして、この車体を購入するに当たり
前オーナーに
「これは取引であると同時に、引継ぎだと思っています。
これをまた私が次の世代に引き継いで行きたいと思います。」
とメッセージしました。

果たして、リミットはいつまでなのかは分かりませんが
次に繋げられる様
乗れるところまで安全に乗って行きたいと思っています。


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