ユング/MBTI考察: 「影」について (2) 「自我」と「影」の類似 / 「知覚(P)」と「判断(J)」 / 「時間軸(P→J)」の導入
MBTI を8心理機能モデルへ拡張することで、新しくできることに「時間軸」の導入があります。一つ一つの行動に対して8つの心理機能を割り当て、自分の行動を時系列に従って、客観的に見ることができる様になります。そもそも私は、これをどうしても記述したい…!という考えがあり、8心理機能モデルの必要性を強く感じたのです。
そのために、本記事ではまずP機能とJ機能のユングの基本に立ち返り、その後P→Jセットというアイデアを導入し、「自我」と「影」の類似に触れていこうと思います。
本記事は、8心理機能モデルのディープな考察に入る前の予備知識の様な内容で、基礎~実用的なテクニックに焦点を当てる記事になってしまいました。抽象好きの方々が、この長文(1.7万字)に飽きずに付いて来てくれるか、とても心配しています…が、
参りましょう!!
P / Jの注意点
ユングとMBTI の成り立ちの経緯からして、PとJには良く混乱が伴いますので、本節では注意点を軽くおさらいします。
詳細は、以下の記事からご覧下さい。
こちらを要約すると、
ユング心理学では…
P = Si / Se / Ni / Ne
J = Ti / Te / Fi /Fe
でしたが、マイヤーズがMBTI で16タイプ分類を作る時に、〇〇〇J/〇〇〇Pという「JP指標」を導入しました。これでマイヤーズは、①主機能だけでなく②補助機能も決定しようとしたのです。その時に、「その人の強くextraverted心理機能は何か」を「JP指標」で表そうとしたのでしたね。
さて、ここで混乱が起きるのですが、16タイプでは、〇〇〇JだからJ機能 (Ti/Te/Fi/Fe)が主機能という訳ではないし、〇〇〇PだからP機能 (Si/Se/Ni/Ne)が主機能という訳でもない、ということです。つまり、MBTI の〇〇〇J/〇〇〇Pは「主機能の話ではない / ①or②の外向(e)機能の話だ」ということを、あらためて強調させて下さい (詳しくは上の記事参照)。
一方、ユングの文脈では、J主機能と言われたらTi/Te/Fi/Feが主機能タイプ、P主機能と言われたらSi/Se/Ni/Neが主機能タイプ、ということになります。私の記事では、補足のない限り、基本的にユングの心理機能のことだと思ってご覧下さい。
P機能は知覚するだけじゃない!
さて、ここから新しい話です。P機能の役割について、皆さんどう捉えていらっしゃるでしょうか。外界から情報をPする、のはもちろんですが…Pはただの受動的な機能ではない、という大前提のお話を。
ユング曰く、SとNを合わせたP機能とは、目の前の対象から単に情報を受け取るだけの機能ではなく、それについて自身の脳内に何かしらの「イメージを形成する」ということだそうです。つまり、P機能が優れる場合、Pだけのイメージによっても、人は行動し得る、ということですね。これは見落とせない大切な前提ですね。そして、Pだけだとイメージが不完全である場合に、それを成形・補完する機能が、J機能だ、と私は考えています。
分かりやすい例で言えば、格闘技やスポーツなど、反射的な動作が求められる場合、Se(∊P)だけで動作を行い、特にJ機能を挟む必要はないでしょう。ただただ、パンチが来たらカウンター、という動作を熟練させれば、その行動は「自動化」されます。ということは、J機能を介していない訳です。また、目の前にポテチがあるとPした場合に、1枚1枚に対してJしているでしょうか?きっとNo.ですね。食べ始めは「この時間帯にポテチはまずいかしら?」とJするかもしれませんがね。また、短い制限時間内で選択を迫られた場合、Jする前に、Nで「えい!」と選ぶこともありますよね。例えば、早指しの将棋であれば、Jではなく、Nで打つことになるでしょう。
時間が短くなったり、突発的な動作、非常に疲れている時ほど、Pのみで脳内イメージを形成して動き、P的行為は、恐らく本能的行為 / 無意識的行為に近い、と思います。しかしユング曰く、それはJ的行為よりも「無分別」ではなく、P的行為は極めて高度な「経験的 (習慣的)行為」だ、と述べています (以下参照)。
人が無意識に、習慣的に行っている行動はP的行為であるが、その背後にはかすかにJ機能も働いている、と。その程度は、場合によっても、人によっても、様々でしょうね。
それでは次に、P的 (非合理的)行為、J的 (合理的)行為は、何によって起こされるのか?について見てみましょう。結論を先に言えば「イメージが行為を促す」ということです。脳内で特定のイメージが形成されると人は動く、と。
心はイメージである
少し長いですが、心理機能を深く理解するには以下必読です。
この記述を読むと、生物はあらゆるイメージを駆使して、認識、記憶、想像、そして創造する、ということが分かります。イメージの最も分かりやすい例とは「映像 / 写真 / 動画」だと思いますが、例えば盲目の方であれば「音 / 触覚 / におい」から独自のイメージを作り、世界を認識しているでしょう。耳が聞こえない方は「手話 / 文字 / 振動」なども大きな頼りになるでしょうね。一言にイメージと言っても、これらを脳内で再生できる幅広く含んだもの、と捉えた方がいいかと思います。
大事なのは、脳内にイメージが形成されると、人は動くのだ、ということですね。つまり、8つの心理機能とは、脳内に情報を取り入れたり (P)、情報を処理 (J)することで、「1つのイメージを作り上げ、行為を促す機能」である、と。Pで十分ならそのまま行動→処理が必要ならJして行動、ということになります。
例えば、猿と人の行動を比較してみましょう。
例1:猿の場合
P: あリンゴガブーうまい退散!
※リンゴをPしてから食べる逃げるまでが、習慣 (本能)的な行為なので、J機能を介しません。ユング曰く「きわめて経験的」な訳です。
例2:幼児の場合
P:あぅ (あリンゴ、ガブーしよ)
「だめよ、お外ではだめ!」>母
P:あぅ!(いや!食べる!)
「買ってあげるから!だめ!」>母
P:あぁ!(ほしい!ほしい!)
「持つだけよ!持つだけ!」>母
P:あぁ (よっしゃ、ガブー)
「だめったら!ま~だ!」>母
J:あぅ? (だめなんか?)
「そう、お外はだーめ!」>母
J:あぅ (持つのはええんか)
「ちゃんと後であげるからね」>母
P:うぅ! (ほな絶対渡さんで!)
「ほらレジ!ピッ!ピッ!」>母
P:あぁ! (なんじゃワレェ!)
※幼児は、ほとんどPイメージで衝動的行動を取ります。ただ社会のルールを学ぶ時にJ機能が必要になるのです。この時、幼児はJ機能によって「お外でガブー」という行為を「否定」する訳です。ユング心理学奥義「否定」ですね。「否定」された行為は「意識」から追放され「無意識」に沈む、でしたね。
「お外でガブー」というイメージが無意識の奥深くに強く封印されると、それを禁忌とみなし、次から店でリンゴを見ても、そのPイメージは想起されなくなる、と。私達は日々、あらゆる刺激から想起される全Pイメージを、全てJ機能で成形 / 処理するのは余りに大変ですから、習慣化させたのですね。しかし、J機能によって「良し⇆悪し」を判断するということは、無意識の内に何かしらを「否定」している、という訳ですね。赤ちゃんの頃から、この様にして色んなものを「否定」しまくった結果、「ルール / 習慣 / そして自我」を形成していく、と。いやー実におもしろいですね。
かの天才はこう言いました。
例3:大人の場合
P:あらリンゴおいしそうね
いくらかしら?チラッ
J:6こで598円…1個100円以下!
安いわ頂きましょ。カゴへIn、と。
P:リンゴリンゴリンゴ…
凄く食べたくなってきたわ。
(車内のイメージがパッと浮かぶ >Ni)
J:…車で1個かじろうかしら?
ウェットティッシュも買いましょ。
※さすが大人の場合は、あリンゴ!ガブー!はヤベェ行動だと、強く「否定」され、無意識の奥深くへと沈んでいる訳ですね。だから店でリンゴを見ても、ガブー!というイメージすら湧きません。習慣化されている訳です。値札をチラッと見るのも、ね。ホホ..
他の生物に比べ、人間は余りに高度なルールの学習や日々の選択を迫られているので、全ての人が、P機能のみならず、J機能を高度に発達させる必要がありました。一側面として、J機能の発展の歴史が人類の進化の歴史、とも言えるかもしれません。しかし先のユングの言葉の通り、P機能は太古の昔から発達させてきた神秘性を内包する、と。習慣の力ったらないですよね。
つまり、P機能はイメージの「素材 / 食材 / 貯蔵 / 充電」であり、J機能はイメージの「成形 / 調理 / 代謝 / 駆動」にも喩えられるのではないか、と考えています。そして、PとJを高度に織り交ぜることで、これほどまでに人間は多様性と繁栄を獲得した、と言うことは間違いないでしょう。
P→Jセット とは
人や猿、基本的な生物の行動は、何か自分の利益となる行動を取るために、脳内に何かしらのイメージを形成し、それを基に行動に移す、ということでした。ではこれまでの過去を振り返った時に、私達の人生はどの様なものであったでしょうか。社会のルールを覚え、学校のルールを覚え、遊び方を覚え、働き方を覚え、休み方を覚え…良し⇆悪しを仕分け、数多くを「否定」し、無意識へと追いやり、習慣化してきた訳ですね。
ただ「否定」は必ずしも悪いわけじゃない。子供の頃の混沌とした無意識を秩序立てて、意識そして自我を形成する過程では、「否定」はとても重要です。周りと衝突しながらも、明確な自分の「価値体系」を作り上げ、This is me!という強いアイデンティティを確立します。でもそれだけだと他者の行動を許容できないし、自分も壁にぶつかるので、余裕ができたら、せめて大人になったら、「否定」した心を迎えに行ってあげようではないか…つまり無意識の意識化、が「個性化」であるということでした。
私達の人生は、常に情報をPし、大切な情報にはJを下し、新しいルール (良し⇆悪し)を覚え、効率的に動けるように「習慣化させる人生」でした。そうやって様々な訓練によって、他の種を圧倒し続けたのです。つまり、P→Jの流れが、私達人間に課せられた「進化の業」である、と。私はこの「処理過程 (時間)の流れ」を強調して意識付けたいと考えているので、「P→Jセット」と呼ぶことにします。
ではこの「時間軸」は、どういった意味を持つでしょうか?ここからは、実際的なテクニックの話がメインになります。以下、この考えを導入して、「自我」と「影」の類似点に注目していきましょう。
P→Jセットでトリックを見破れ!
/「やる気スイッチ」
①主機能と②補助機能が似たタイプを比較してみましょう。
この様に記述されると、一見INTPとENTPはとても良く似ていそうですよね。しかし実際には、結構違います。むしろ、INTPの「影」であるENTJの方が似ている、と。これは一体どう解釈すべきでしょうか?
自我の機能は基本「リラックス状態」で働きますが、INTPにとってNeが交友関係で発動するのは、気の打ち解けられる人同士、になります。INTPの初対面の印象は、Tiロボの様でしょうね。一方で、ENTPは初期状態でNeがオープンですので、初対面の人でもNe特有の連想・空想を無邪気にぶちかまし、Feでコミュニケーションを取れる訳です。…やはりINTPとENTPは、結構違います。
しかしそれ以上に、象牙の塔の学者INTPと実社会のリーダーENTJ、両者のタイプ像には余りに開きがあると感じないでしょうか。Tiの「一人で熟考する」と、Teの「他者に指令を出す」は、似ても似つかない様に感じるのです。それでは、INTPとENTJは、なぜ互いに「影」と言われ、どの様に「似る」のでしょうか?
その答えは、①主機能 ②補助機能の「特徴」ではなく、P→Jセット、即ち「過程」に注目すると浮かび上がってきます。これら心理機能に「時間軸」を取り入れることで、新たな視点が見つかるのです。
改めて…
INTP:①Ti ②Ne
ENTP:①Ne ②Ti
ENTJ:①Te ②Ni
こう見ると、INTPは①Ti が先で、ENTPは①Ne が先だ、という先入観を持ってしまいませんか?しかし、違いますね。両者のP→Jセット、即ち時系列は、どちらも、Ne→Tiセットで行動しています。いつもPが先で、Jが後なのです。
ここを明確にすれば、INTPとENTPの行動は、なぜ「似ない」のか?そして、INTPとENTJの行動は、なぜ「似る」のか?も記述できるのです。
P→Jセットのどちらに主眼が置かれるかに注目してみましょう。
INTP は Ne→Ti セット
ENTP は Ne→Ti セット
です。同じ時系列ではありますが、前者は「J=行動 / 行為」が、後者は「P=認識 / 把握」が、P→J→P→J→…のセット回転に加速をかけます。ここで、Pはバッテリーで、Jは駆動装置の役割だと考えてみましょう。
INTPはP→J→P→J→P→J→…と、Ti駆動で高速セット回転させます (常に思考 / あれこれと試行錯誤 / 充電切れ)。
ENTPはP→J→P→J→P→J→…と、Ne充電で低速セット回転させます (常に連想 / 過充電 / 爆発的な行動)。
そしてP→Jセットで重要なのが…
「回転する程やる気が上がる
/ 回転が止まるとやる気が下がる」と、私は考えています。
ENTP生徒のやる気を上げるには、Ne充電、即ち「大量の抽象的・哲学的な話のシャワー」を浴びせまくれば良いのです!これはNe / Ni主機能者なら同じです。Pが充電されること、が「やる気スイッチ」になっています。充電させたら、それが如何に「勉強と結びつくか」という導火線を仕掛けます。そうすると、後は放っておいても頑張ってくれます。Se / Si主機能者なら「具体的な話」が良いでしょう。P主機能者は、Pイメージの「素材集め」に強い興味を示しますので、いきなり演習問題(J)をさせても、エンストを起こします。P主機能者が独学する場合、P→P→J→P→P→P→J→…と、似た様なインプットを繰り返して停滞注意です。
(一回試しに動いてみましょう >J)
一方、INTP生徒や、Ti / Te主機能者は、適切な難易度の演習を解き、Jが高回転を保つこと、が「やる気スイッチ」になっています。逆に話 (P)が長すぎてJが使えないとイライラし出します。そんな彼らの勉強に介入するには、回転が弱まった時が狙い目だ!弱り目が狙い目!勉強終了間際に「今日はよく回ってたね! / どんくらい進んだ? / 進捗はどう?」か、一瞬手が止まった時に「調子どんなんですか~ / チョコいりますか~ / 分からんとこ無いですか~」と入ってくとスムーズです。横目でタイミングを見計らいましょう。Fi / Fe主機能者は、感情駆動で動くので、介入のタイミングは同じですが、誉め言葉や頑張りを認めてあげたり、表情やジェスチャーで気持ちを安定させると良いでしょう。J主機能者が独学する場合、P→J→J→P→J→J→J→…と、同じような間違いを繰り返して空回り注意です。
(一回よく読んでみましょう >P)
P主機能はとにかく蓄えたがる、J主機能はとにかくやりたがる、と。これが「やる気スイッチ」の鍵です。ここまで、P→Jセットの基本を説明しました。自他の状態が、現在、P優位なのか、J優位なのか、に目線が行くと、「今は収集すべき / 今は行動すべき / 今は介入が必要 / 今は放置が良い」という判断の指標になるでしょう。
…特に指導者 / 支援者が難しいのは、J主機能者に対して、適切な環境で「放置」することが「やる気スイッチ」であると気付けないと、お互いに苦しむ可能性があります。その場合むしろ大切なのは、集中できる「環境」を整えてあげること、になるでしょう。
この枠線内はより深い話になりますが、混乱を呼ぶ議論になりますので、もうすでにお腹いっぱい…という方は読み飛ばされて下さい。
やはりここでも触れなければならないでしょう。「ユング:P主機能 / J主機能」と「MBTI:P型 (〇〇〇P) / J型 (〇〇〇J)」は、まるで違う話をしています。この混乱は根深いです。
MBTIでは、観察者が対象者のタイプ判断をするための「質問紙」を作成する時に、対象者の外向 (e)されている機能を見るとタイプ判断し易い、という文脈で「外向 (e)されるのはJかPか」をJP指標と定義しました。つまり、JP指標とは「傍 (e)からどう見えるか?」の話であって主機能に焦点を当てていないのです!当然ですが、その人の行動を最も特徴付けるのは主機能です。
これで誤解が生まれるのは、反転タイプ⑵と⑶になります。
⑴ は外向 (e)されたP (Ne / Se)が主機能なので、傍から見ても、本人の行動も真に「オープンマインド」である。
⑵ は外向 (e)されたP (Ne / Se)が補助機能なので、傍からは「オープンマインド」に見える。でも実は、内向 (i)されたJ (Fi / Ti)が主機能なので、Pイメージを常にJして、独自イメージを作り出すことが真の目的である。
⑶ は外向 (e)されたJ (Fe / Te)が補助機能なので、傍からは「クローズドマインド」に見える。でも実は、内向 (i)されたP (Ni / Si)が主機能なので、Pイメージが鮮明になるまでは常に新しい情報をPし続け、収集イメージの補強が真の目的である。
⑷ は外向 (e)されたJ (Fe / Te)が主機能なので、傍から見ても、本人の行動も真に「クローズドマインド」である。
つまり、MBTI における⑵と⑶のJP指標はあくまで「補助機能」の話なので「そう見える」だけの話であり、真の行動原理は反転した「主機能」にある。先のユング語りき、補助機能は「露命をつないでいるだけ」なので、真にその人の行動を記述するには「ユング:P主機能 / J主機能」で語るべきでしょう。
これを前提にすると、その行動の類似は、⑴と⑵のP型 / ⑶と⑷のJ型ではなく、「⑴と⑶ Pイメージの補強」、「 ⑵と⑷ PイメージをJして独自イメージへの成形」において、それぞれ見られるはずです。…そして、この誤解を解くことが、「自我」と「影」の類似を説明する、と。
MBTI の4文字〇〇〇〇の内、どの文字を抽出しても「P 主機能型 / J 主機能型」の主機能分類を表現できないのです。本来、主機能にこそ注目すべきはずなのに…この分類法は、ユングの手法を引き継ぐものとして、念頭において然るべきです。
P主機能型=Si / Se / Ni / Ne が主機能
J主機能型=Fi / Fe / Ti / Te が主機能
INTPの影がENTJであること
/「自我」と「影」の類似
さて、一般的には、INTPはじっと動かず何もしない様に見えて、ENTPは落ち着きなく動き回るイメージだと思います。しかし、ここで言うJとは「静的な行動 (考える)」も含む、でしたね。なので、INTPはJことが目的で最低限のPしかしないし、ENTPはPが目的で最低限しかJことはしない、と。
つまりどちらかと言うと先入観とは逆で、INTPの方が常に動き回っていて、ENTPの方がじっとしているのです。より正確に言えば、INTPは常に自分の思考整理 (J)をやり続けて、ENTPは常に自分の連想 (P)イメージに耽っています。ただENTPは、蓄えたPイメージがある閾値を超える度に、突発的な行動を取り過集中になる、と。その「突発性」が目立つので「動き回って」いる様に見えるんですね…や、実際に動き回ってはいるのでしょうが、別に動くことは「目的」じゃないんですね。それに対して、INTPは動くことが「目的」になっている、と…え?なんや!変態とちゃうで!
ENTPに限らず、Ni / Ne主機能者もそうですが、「退屈だから / 知識欲を満たしたいから」、動き回るだけで、面白ければ「じ~」っと何時間でも話を聞いてくれます (小学生なのにほんとよく聞くな…と思うくらい)。1日中、動画を見たり、本を読んだり、情報収集をし続けるのはP主機能者で、Pイメージに従って気の赴くままに行動を取ります…方向性を失って虚無に陥りがち。J主機能者の場合、何か自分なりの工夫や独自性を出そうと、あれやこれやとやるものの、空回りしがち。どちらも、PとJのバランスが取れたら上手い方向に回り出すでしょうね。
これまでの様に、心理機能にP→Jセットという解釈を加えた時に、INTPとENTPの2人が似ていないのは、「テンポが合わない」からだ、と言えます。
ここまで来れば、INTPとENTJの行動がどう似るのかも説明できます。前者はNe→Tiセット、後者はNi→Teセット。どちらもJ駆動で高回転なので「テンポが合う」訳です。抽象的なPの仕方を好むので「目線 / 目標との距離感」も同じ。ただただ「視点 / 着眼点 (i⇆e)」が違うのです。INTPは内界 (脳内)で動き回り、ENTJは外界 (実世界)で動き回る、と。従って、この両者が真にタッグを組んだ場合、自分の武器 (TとNのリソース)を封印せず、テンポも崩さず、新しい「視点 / 着眼点」を手に入れることになるのです。「あ、なるほど / そういうやり方もあるな」と。だからこそ「影」を味方に付けると強い、という訳です。一方、自身の「影」を敵に回すと、痛い目に合います。自分で「否定」したまま「影」を使うと「歪」になるので、破壊的な方向に行く、と。
以上、これまでの考察は勿論、全16タイプの「自我」と「影」に、展開できることです。ご自身の「影」のタイプの記述をよくよく読まれてみて下さい。自分が知らず知らずのうちに、その「面影」を感じ取れる瞬間が、きっと過去にあったのではないか、と思います。
P→Jセットの実用例
P→Jセットの考え方の実用的な使い方を最後にご紹介して終わろうと思います。
INTPの多用するP→Jセットは、これまで書いた様に②Ne→①Tiセットですが、日常生活の中では、①~➍まで、8つの心理機能を当たり前に使っているので、様々なP→Jセットが現れます。その実例をいくつかご紹介します。
例1:INTPの挨拶
P ②Ne:あ先生…挨拶…名前は…あれ?
P ③Si:えーと何だっけ?あれ、出ん!
J ➊Te:一旦クラスに戦略的撤退か?クソッ
P ➋Ni:この前授業で…あ、田中先生!
J ➊Te:問題ない。Go、だ。
P ②Ne:テクテクテク…この微妙な空気ヤダ
P ②Ne:そろそろ間合いだな。
J ④Fe:目を合わせて笑顔な。一応な。
P ②Ne:目が合った。
J ④Fe:田中先生、こんにちは。ニゴ
OKZKさん、こんにちは。ニコ >田中先生
P ②Ne:ほぅ…私の名前を覚えているとは
J ④Fe:なかなかやりますね。
※一瞬てんぱったら「影」が出ます。INTPはFe劣等なので意識的に使うとぎこちなさが出ます。
これが出合い頭にばったり、の挨拶であれば…
P ②Ne:おぁあ~!ちゃす!
と、Pイメージのみで動くため、習慣化された無意識的な行動を取る訳ですね。
例2:INTPがENTP生徒に指導
P ②Ne:あ、ここ違和感あるな
J ①Ti:うん、間違ってそう
J ①Ti:「ここ怪しくない?」
「いや~合ってますよ」 >ENTP生徒
P ②Ne:「この前も言ってたやん」
「え~どこすか?」 >ENTP生徒
P ➌Se:怪しい所を詳細に見る
J ①Ti:脳内処理…
P ➋Ni:あ、ここだな
J ➊Te:「ほらこいつはこうでしょ…」
「あ~!ガクッ」 >ENTP生徒
P ②Ne:ふざけてるけどまぁいいか笑
J ④Fe:「油断大敵やで」
「まぁ分かってたんすけどね」 >ENTP生徒
P ②Ne:反省しとらんなw
J ①Ti:「えー他の所は~…」
P ②Ne:ここもあそこも多分怪しいな
J ➊Te:「ほら~こことここも」
「ぐはぁ!…写していいっすか?」 >ENTP生徒
P ➋Ni:ビキッ
J ➊Te:「さっきまで寝てて甘えんなー」
「…はーい」 >ENTP生徒
※このやり取りはENTP生徒との定番です。ENTP生徒の①Neは、「どこまでだったら怒られないか」を試している様です笑
恐らく私の「影」のENTJが出る時は➋Niの影響で一瞬の内にパッと切り替わるのではないか…と自覚しています。他にも、子供の頃からNiで閃いた時は、興奮で「そうか!こいつにこうさせればいいのか!」と、無意識の内にTe語を選びがち、という自覚があります。…恐らくINTPあるある。
例3:INTPの勉強
P ③Si:今日宿題あったな
J ①Ti:今日中に終わらせなきゃな
P ②Ne: 結構ある…まぁいけるか
J ➍Fi:よしコーヒー入れようチョコも
J ➍Fi:確認問題ってやる気出んよなー
P ②Ne:お!この問題…確かこの前の…
J ①Ti:自力で思い出して解いてみるか!
P ③Si:確か定義がこれであれで…
J ①Ti:あれ?おかしいな解けん。
(3時間後)
P ②Ne:いやこれだとあっちが破綻か…
J ➊Te:なんやこれぇ!くそ!
P ➌Se:なんか条件見落としとるか?
J ➊Te:いやもう10回は見直したろ
P ➋Ni:なんか出そうな気はしてるんだよ
J ➍Fi:ここまでやって答えは見たくない
P ②Ne:どれも合ってそうなんだけど
J ①Ti:落ち着け…最初の定義を確認しよう
P ③Si:これはこう…あれこここれだっけ?
J ①Ti:考え直そう…あ!やっぱずれてる!
P ②Ne:これだったらいけそうかな~
J ➊Te:さっきのこいつとくっつけて…
P ➋Ni:お!行ける!気がする!多分!
J ①Ti:よし、組み立て直そう………
P ➌Se:……で、最後これを確認して、と
J ➍Fi:うっしゃー終わったぜ!
P ➋Ni:ミスなかったら楽勝やったな(小並)
J ➍Fi:うぃーあってたわ~
P ➌Se:あ~まだ宿題半分ある…
J ➍Fi:…一旦寝よ
※勝手に自分ルールを決めてループに入るパターンはINTPあるあるだと思います。でも、こうやって自分に負荷をかけていくことで、自然と「影」の機能を発達させている、と。
N型は「大器晩成」、Sの発達が追い付けば、きっと偉業をなせる。若い頃に失敗を重ねられることが、N型の最大の武器だ。S型はもっと失敗せぇよ。18の自分で限界を決めるな。世界で一番の天才になる必要なんてないんだから。そもそも頭の回転とか知識量に依存した才能って、AIで可。
この様に①~➍の8つの機能を割り当て、行動を振り返ると、自他の行動を客観視できます。やはり、自分がストレスを感じた時…まぁいわゆる「イラッと来た瞬間」には、「影の人格」が顔を出してるな、というのが自分でも見えて面白いです。「面白がる自分」を客観的に感じられると、「影」に乗っ取られるのではなく、「影」をコントロールできるのではないか、と。
大事なのは、「イライラしている自分は格好悪い…」と、その存在を「否定」してしまうのではなく、「もう一人の自分」の大切さを認めてあげて、「お前のおかげで上手くいったぜ!」と感謝できると良いのではないでしょうか。心に「影」の居場所を作ってやる。そうすると、「いつもの自分」だけでは突破できない壁に、別の視点から「突破口」が見付かるのではないかと思います。
まとめ
P機能とJ機能によって、イメージを脳内に作ることで、人は動く、と。ユングの考えに基づいたPとJの捉え方の基礎は、とても大切です。そして、「P主機能 / J主機能」という主機能分類で見た方が、各タイプの行動の特徴を捉えやすいと思います。次に、P→Jセットの考え方を導入することで、8心理機能モデルに「時間軸」を導入しました。「自我」と「影」の両者は、「同じテンポ」で動きながら、違う「視点」で突破口を開くことができる、と。ですので、「影」の統合は、大きなポテンシャルを秘めている、という考察です。
今回は、基礎的な内容~実用テクニックに寄った話になってしまったので、抽象的な話が大好きな抽象民の皆さんには、少し物足りなかったかもしれません。8心理機能モデルにdive deep する解説記事を書いている時に「あれ?これも事前にいるか?」ってなった訳ですね。…まぁいいじゃないですか。こういった発散的な所もINTPの御愛嬌、ということでね。ご容赦下さい。また次回、抽象的な話に戻ります。フッフッフッ…抽象民よ、寝て、待て!いや、それじゃ普通か…起きろ!起きて、待て!いや、それじゃ死ぬか…寝ろ!とりあえず今日は寝ろ!待て!