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歌集『乱反射』(小島なお氏)を読む。-きらめく一冊-

小島なお氏の歌集『乱反射』を読んだ。

本としての紹介

『現代短歌クラシックス』
のシリーズの歌集で、
角川書店刊行の同名の歌集の新装版。

表紙のポップな色使いが、
収録されている短歌への期待感を高める。

そんなわくわくする歌集から
五首選で紹介。


五首選

船という巨大鋼鉄とりまいて原生生物夜行虫浮く

10ページ

鋼鉄と生物の対比や、文明と原生生物の対比など、対比が良い。

「原生生物夜行虫」という漢字の並んだ字面もこの歌の雰囲気を作っている。

鮮やかな黄色日差しを照りかえしそれゆえ孤独 ゆらりひまわり

76ページ

結句の「ゆらりひまわり」の言い回しと、ひらがな表記に惹かれた。


実景のひまわりの短歌のような気がするが、
ゴッホの「ひまわり」の絵画も想起させる。

十代にもどることはもうできないがもどらなくていい 濃い夏の影

78ページ

どうして「もどらなくていい」のかという理由が、結句の「濃い夏の影」に凝縮されていると思った。

光が強ければ影も濃くなるからかな、と読んだ。

カン・ビンのごみを抱えてみあげれば今宵の月は船のようです

85ページ


生活の場面+ファンタジー感のある言い回しの取り合わせ。


生活しつつも、月を船だと思う詩的感性を失わない。

また爪の半月ほどの後悔をしてゆくだろうきっと明日も

88ページ

「毎日ハッピー」と無責任に言われるより、こちらの方がジンと来るし、実感がある。


まとめ

内容に実感があるだけではなく、勉強になった。

喩や景が綺麗かつ印象的で、漢字とひらがなの使い分けなどの工夫もある。

読みどころが多い一冊だと思う。


リンク

乱反射 (現代短歌クラシックス) https://amzn.asia/d/gum9Dsl

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