見出し画像

『スーパーアメフラシ』山下一路歌集を読む。-思い出す短歌-

『スーパーアメフラシ』
山下一路氏の歌集を読んだ。

五首選

日常生活をしていて、ふと思い出す短歌が多い。

引用と、どういう時に思い出すかと、簡単な感想を紹介したい。

今までの人生すべてサンプルで本物の恋がシチリアにある

36ページ

「シチリア」と聞く度に思い出す一首。
地名の選択も上手い。

ロマンとおかしみがある。
「ここではないどこかなら理想的な人生を送っているのではないか」
と夢想する気持ち、分かる。

どか雪のふりはじめから参加者がふえる友達募集掲示板

39ページ

雪が降る度に思い出す一首。

この掲示板はネット掲示板だと思う。
「どか雪」という単語の選択が生む、
生活感がリアル。

ひとりぼっちが好きな君の持ち帰る月見バーガー秋のおとずれ

45ページ

「月見バーガー」や「秋」で思い出す一首。

月と秋のありがちな取り合わせが、
月見バーガーと秋にしたことで距離が生まれて、
オリジナリティーがある。

さいしょから蟻がわとキリギリスがわのこどもたちで競い合うステージ

109ページ

この歌集には、
こういった社会詠も多く収録されている。

そんな社会詠の一例として紹介。

格差社会、
それぞれの家庭の性格の違い、
多様性など、
含みが多い一首。

ティーカップにお砂糖ふたつ入れますアッサム地方のお茶淹れます

113ページ

紅茶を淹れている時や、
飲食店のメニュー表の紅茶に「アッサム」がある時に思い出す一首。

アッサム地方という地名の使い方の上手さ。
地名をあえて入れることで、普通の紅茶との差別化に成功している。

補足


山下一路さんは歌人集団かばんの会所属。

2023年春にご逝去されて、
「かばん」に衝撃が走った。

この歌集の紹介をずっと書きたかったが、
「亡くなられてすぐに書くのは良くないのではないか」
など、色々と考えて延期していた。

そんな中、
この歌集に掲載されている短歌を紹介したい気持ちがあり、
少し時間も経ったので、
「そろそろ書こう」
と思って今に至る。

蛇足かもしれないが、
こういった背景をきちんと書くことが
誠実な文章だろうと思い、補足する。

リンク

スーパーアメフラシ https://amzn.asia/d/bxmuFb5

この記事が参加している募集

#私のコレクション

with 國學院大學

最後までお読みいただきありがとうございました。 もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。 次回もお楽しみに!