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『ショパンの孤独』(福田淑子氏)を読む。-豊かな孤独-

『ショパンの孤独』は
知性とユーモアが光る歌集である。

良い歌が多いが、
選抜に選抜を重ねて五首選で紹介。


お造りの魚に恋のお相手がいたかもしれず淡き身の色

34ページ

美味しいそうなお造りを見て、その魚の過去や経験を感じ、考え、思いやる想像力に豊かさを感じる。

最期に一首として生まれ変わったお造りの魚。

教育はあたたかくあれ あぁたたかい 世界史のなかはのべつ戦ひ
(83ページ)

人殺める道具作るに余念なきこの星のゆふやけ 美しすぎる
(91ページ)

ウクライナの事など、今まさに世界史の節目や転換期ではないだろうか。

戦いが世界史になる辛さや、今こうしている間にも「人を殺める道具」が作られていると思うと、やりきれなくなる。

そんな愚かな人間だが、夕焼けを見て美しいと思う感性もある。
そんな人間の感性を信じたいと思うのはきれいごとだろうか。

負け犬も吠えねばならぬそれなりの技を磨きて生きてゆくため

103ページ

「それなりの技」を磨くためにも、こうしてnote に文章を投稿しているのかもしれない。

「遠吠え」かもしれない文章でも誰かの役に立ったり、少しでも参考になれば嬉しい。

そういえば「勝ち犬」という言葉は聞いたことがない。

ビルの間を命のまるみ削ぎ落としスリムにスリムに女ら歩む

111ページ

「女」に「をみな」とルビあり。

ビルの縦長な様子と、作中の女性のスリムな様子が重なる。

確かな観察眼が光る一首。


福田淑子氏の短歌には孤独に深さがある。

その深さが観察眼や想像力の豊かさを生んでいるのだと思う。

短歌の奥にある「豊かな孤独」
ぜひ味わってほしい。

ショパンの孤独 (COAL SACK 銀河短歌叢書) https://amzn.asia/d/6yQ9OrP

最後までお読みいただきありがとうございました。 もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。 次回もお楽しみに!