それって…アグネスチャン的なことですよね?
大河ドラマで『麒麟がくる』がスタートする頃だったと思う。
明智光秀の主君であり、織田信長の義父である『斎藤道三』が登場する。
「お母さん、今度の大河ドラマで斎藤道三を本木雅弘さんがやるらしいで!」
歴女の私だけれど、残念なことに家族の誰もが歴史に疎いので、母が興味を示すであろう切り口で話しかけた。
「ああ、大河ドラマな、サイトウドウな、お母さんでも聞いたことある人物やわ」
いつもは歴史の話をしてもあんまりノッてこない母だから、ちょっと嬉しくなった。
「へ!お母さんが斎藤道三知ってるとはな!」
「テレビで見たんかな、サイトウドウのことは聞いたことあるわ」
(ん?なんやろう…お母さん、さっきからサイトウドウって言ってる気がする…なんでサンまで言わんと略すんやろ?)
「そうやわ、あさイチかも!そこでサイトウドウのことやってた!」
母がサンまではっきりと発音しないことに気を取られ、ただ耳を澄ませ、相槌を打つことを忘れている。
「それまではサイトウドウなんて………」
「なぁ、ちょっと待って!?お母さん??さっきから サイトウドウっていうのてる気がしてるんやけど……?」
眉間にシワを寄せて聞いた。
「うん!サイトウドウやろ!?歴史に疎いお母さんでも名前くらい聞いたことあるわ!」
ドヤ感を出してきた。
「ん?お母さん?? サイトウドウサンやで?」
「え…? もしかして…?」
母はいつになく神妙な面持ちになった。
「まさかやけど……まさかサンまでが名前なん?」
「ええ!そっち?あ、そういうことか!サイトウドウサンや!サンまでが名前や!」
『サイトウドウ』という人物に敬称で“さん”をつけていると思っていたとは…
『斎藤道さん』
要するにこういうことだ。
それを知った瞬間、大声で笑ってしまった。
「うそ〜間違ってた~めっちゃ恥ずかしい〜」
そう言いながらも、大笑いしている私を見て、
ウケた!おいしい!と思っているようだった。
これで、母は『サイトウドウサン』という歴史上の人物を忘れることはないだろう。
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