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逆算と積み重ねのプロダクトマネジメント

PdMノウハウの第10回目のnoteです。第9回目のnoteは「さらば、全ての使われないプロダクト。」でした。もし良ければ読んでいただけたら嬉しいです。今日は「逆算と積み重ねのプロダクトマネジメント」というタイトルで、普段よく使っていた「不確実性」という言葉の意味を学び直そうと思い書籍を読んでみて考えたことを言語化したいと思います。参考にしていただき、自身のプロダクトが1mmでも成功に近づけば幸いです。僕が所属している組織について、このnoteで言及している概念については全く関係がないことを最初に明記させていただきます。

不確実性とは何か

仕事の中やTwitterでも「不確実性」という言葉を使ってきましたが、不確実性という言葉の本当の意味を理解せずに使ってきてしまいました。そのため、不確実性について学び直そうという目的で下記の本を読んでみました。

Weblio辞書によると以下のように定義されています。

一般に、不確実性とは、意思決定者のコントロールし得ない事象の生起の仕方にさまざまな可能性があり、しかもいずれの事象が確実に起こるか判明しないとき、その意思決定者の不確かな気持ちをさしていう。決定理論では、確実性のもとでの意思決定、リスクのもとでの意思決定、不確実性での意思決定の3つに区分される。
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https://www.weblio.jp/content/%E4%B8%8D%E7%A2%BA%E5%AE%9F%E6%80%A7

また「最強の教養 不確実性超入門」ではこのように記述されています。

不確実性とは、将来のデキゴトには「予測ができない」性質が備わっていることを示す言葉だ。この不確実性が、さまざまなリスクを生み出すもととなる。

同書では、不確実性を過去の世界的な金融、株価の変化を例にわかりやすく紹介されています。気になる方は是非、一読いただくと良いかと思います。このnoteでは、同書に書かれていた二つの不確実性について僕の理解と、不確実性に向き合うプロダクトマネジメントについて言語化していきたいと思います。以前同じような話をnoteに書きまして、同じような内容になる可能性がありますが、違った角度で不確実性について考えたので、ご了承ください。

ランダム性を持った不確実性

まず一つ目の不確実性は、ランダム性を持った不確実性です。例えば、表裏があるコインをトスする場合、どちらの面がでるのかは1/2になります。同書では、面の角度や力加減で予測することができるのではないかということも書かれておりましたが、このnoteでは触れません。

ランダム性を持った不確実性の人間的な部分は、人間は本能的にランダムをパターン認識しようと考えることです。コインの表裏がでる確率は平等に1/2であるはずが、10回トスをした時に、1/2^10の確率で全てが表になる人も出てきます。これは確率の問題なので、何人もトライすれば必ずずっと表が出る人が出現します。人間はありえないことに対して、パターンとして認識しようとするので、何かの要因があるはずだと思いたいのです。これはコインのトスではなく、宝くじだとどうでしょうか。当たる販売所、お祈りすれば当たるというようなものに少しでもあやかろうとするのが人間というものなのです。

フィードバックによる不確実性

不確実性の二つ目は、フィードバックによる不確実性で、結果が結果を呼ぶ不確実性を指します。ランダム性を持った不確実性は頻度分布によって表現することができますが、それでは説明ができない不確実性が世の中には存在し、同書に記載されていた例では、リーマンショックなどの経済恐慌が一例として挙げられていました。言わずと知れた世界的な大恐慌ですが、なぜ株が大暴落したのかもっともらしい原因はあるにせよ明確には説明がつかない現象です。

株価は常に上がる時もあれば下がる時もあるという現象を繰り返していますが、株価が下がった時には今後どのくらい下がるかわからないため、人間はいくら損をするのか確定させようと株を売ろうとします。この時、売ろうとする人もいれば株価が下がったので買おうとする動きもあり、バランスが保たれていますが、たまに売りが先行してどんどん株価が落ちていき、それが結果となりさらに株が売られるという事態に発展します。この、誰もどのくらい株価が下がるのか、いつになったら回復するのかといった予測は経済のスペシャリストによって常に予測されメディアを通じて情報を入手することができますが、歴史を紐解くとそのほとんどが大外れしていることになります。

逆算と積み重ねのプロダクトマネジメント

上述した二つの不確実性により支配されている世の中において、プロダクトマネジメントをどうすれば成功に導けるのでしょうか。それが、このnoteのタイトルである「逆算」と「積み重ね」なのではないかと考えています。

まず、フィードバックを持った不確実性は予測することはできません。考えを放棄しているのではなく、予測できないという性質を持っているため、そもそも予測しようという試み自体が間違いを生んでいます。

テクノロジーは急速に変化する一方で、人間は変わらないということです。そしてそれは機会なのです。

まずプロダクトマネジメントにおける「逆算」についてですが、遠い未来に人間はどういう生活をしているだろうか、そこにはどのようなプロダクトがあるのだろうかという問いについて考えます。その中で、自分が信じる未来、成し遂げたい世界はどういうものかと照らし合わせて思考します。その時に、世界の偉人たちの文章を上記で引用させていただきました。僕たち人間が生物的に進化していく時間スケールでは、人間は変わらず自撮りする人もいるし、スクーターを愛していたりします。そして、モノを買う時には安くて良いモノが欲しいし、沢山選択肢があった方がいいし、早く手に入る方がいい。そのような普遍的な僕たちの欲求に対して、未来どういう世界を創りたいかのか。それらを言語化して、目指すべき未来とした時に、すぐには到達することができません。そのため、その未来から逆算して、今を観測するのです。10年後、人間はこういう生活をしていると思うから、5年後はこうで、3年後はこう、そういうことなら1年後はこういうことが実現できていないとな、というように。

私の大好きな話があります。ケネディ大統領がNASA宇宙センターを訪問したとき、ほうきを持った用務員の男性を見つけて、何をしているのかと尋ねました。男性はこう答えました。「大統領、私は人類を月に運ぶ手伝いをしています」

言うは易く行うは難しのようなことを並べていますし、僕自身ができているかというと必ずしもそうではないことは自覚しています。しかしながら、自分たちが成し遂げたい世界を思い描き、バカみたいに突き進んでいけるかどうかが長期で成功するためには欠かせないのかなと思います。

ここで、不確実性の性質では、未来はわからないから予測できないということを書いてきました。自分が成し遂げたい未来のあるべき姿を考えても、不確実性に支配された世界では無意味なのではないか、と思われます。

この本の中に、NETFLIXのような世界最強プロダクト開発集団でも、半年先以上は見通しがつかないと書いてあって、大切なのは常に半年後の理想状態から組織を考え、今から実現に向けて動くことだと書かれていました。NETFLIXは素晴らしいプロダクトです。世界中の人が使っています。しかしながら、NETFLIXは半年先以上は見通しがつかない、つまり不確実性が高くわからないと書かれているというのはどういうことでしょうか。

そのヒントが「最強の教養 不確実性超入門」の最終章「人生を長期的成功へと導く思考法」に書かれています。詳しくは、同書を読んでいただきたいのですが、僕なりの解釈を入れるとタイトルにある「積み重ね」のプロダクトマネジメントであると考えています。

まず、不確実性な世の中において予測は当たらないという事実を受け止めつつ、今起きつつある世の中の変化の兆しに着目し、それがどのような現象なのか、今後どうなっていくと考えられるかというシナリオを考え続けることがとても大切です。不確実性が高いからといって、投げ出すことなく、アンテナを高く貼り続ける執着がプロダクトを成功に導きます。

不確実性の怖い性質が、正しいことをしても短期で失敗する可能性があるということです。つまり、正しいやり方の効果は長期的にしか評価できないということを念頭に置かなければなりません。人は失敗に対して、厳しい目を持っていますが、不確実性の性質から考えると、二つのことが言えます。一つが、小さい失敗を避け小さい勝利を掴み続けても長期での成功をもたらさないということ。二つ目に、小さい失敗を許容することと、取り返しがつかない失敗にならないようなリスクマネジメントを行うこと。

これらをプロダクト開発に向き合う組織全体にインストールする必要があります。短期の失敗で失敗のレッテルが張られてしまうような環境においては、長期での大きな成功はないと言えます。仮に、短期間の内に成功し、脚光を浴びたとしても、その再現性は低いことが考えられます。

不確実性とは、すべてがマイナスに作用するものではありません。自己増幅的なフィードバックが正に作用することで、成功が成功を呼ぶような結果をもたらすこともあり得ます。そしてそれがいつになるのかは誰にもわかりません。しかしながら、不確実性が正に傾くまで小さい失敗を許容し、学びを蓄えながら、待つことはできます。

まとめると、不確実性の性質をプロダクトマネジメントに活かすのならば、成し遂げたい素晴らしくも遠い未来に旗を立て、二度と立ち直れないような失敗を避けつつ小さな失敗を許容し、不確実性が正のフィードバックに傾いたら一気にアクセルを踏むことを繰り返し続けることです。

不確実性に向き合い続けることに終わりはありません。

終わりに

プロダクトを創ることは非常に難しいです。できればすべてのプロダクトが成功という道を進んで欲しいと思うのですが、不確実な世界においてはそうはいきません。だからこそ、その不確実な世の中に向き合い、対処し続けるためにプロダクトマネージャーが存在すると思っています。プロダクトを使い幸せになるのは人であり、そのプロダクトを創るのも人なのだから。

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