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片思いの国 -2021年10月14日

好きな男からLINEが返ってこない人たちで国を作ろう。どうしても入りたかった会社に落とされた人たちで国を作ろう。行きたかった大学に行けなかった人たちで国を作ろう。どうしても手に入らなかったものたちのことだけについて、笑いながら、泣きながら話す、そんな透明な国をこの世界に作りませんか。隣の芝は青く見えるって言うけれど、隣の芝から見た私たちもまた青いってこと?昔、青色の絵具の原料である宝石は貴重だったから、なかなか手に入らなかったそうだ。手に入ったものも手に入らないものも全部青色なら、この地球のテーマカラーは青だ。青ばっかの国に生きているんだ、みんな。

空が青い理由は、青い光が散乱しやすいからだと聞いたことがある。大気中の空気の分子に太陽の光が当たると、光に混ざっている7色の色のうち、青が一番散乱するそうだ。太陽の光が多い夏の空は真っ青で清々しい。砕け散った青の光の中に生きている人がみんな眩しく見えるのはこういう訳なんだろう。

返信がないと、忙しい?って聞いちゃうのもやめたい。やめたいならやめろ、なんて冷たいこと言わないで。僕らは地球上にせわしく息をして、忙しくない暇なんて一瞬だってないんだから聞いても無駄だ。私の為だけに使ってもらえなかった時間が青く散乱する。自分の中に恋が差し込んだとき、逃れる術を知らない。光は理性より速い。高速のインターネット回線より早く、私の心に進入して散乱する。とっ散らかった光は確かに青く見えるのに、あんまり幸せじゃない。恋の光は真っ直ぐで清いはずなのに、どうして私の胸骨に当たって屈折してしまうんだろう。キラキラしたイルミネーションなんかじゃない、レーザーカッターみたいで、私の肉片は激しく散る。誰が恋なんて生易しい名前を付けたんだろう、今目の前に目を光らせて笑う「それ」は、殺戮の味がするじゃないか。

美しい男って殺人鬼の目をしているよな、今気づいた。幾らの女に光を送っても、決して乾くことのない欲望と甘い優しさ。芸能人でもたまにいるよね。殺戮に至る病理なのだろうか?恋というのは。男の方が重度になりやすい病気だが、致命傷を食らうのは絶対的に女である。これは生物学的なことであって、男は子孫を多く残すという原始的欲求に飽きたることはないが、女はほとんど1度きりだからだ。同じ男と何人も子供を作る女は私から見たら狂気じみている、命のカクテルの表面の揺らぎが見えるような激しさだ。自分には到底真似できない。セックスの先に愛が待ち受けているなんて、笑わせないでよ。それなら私の方が愛を知っている。

トロフィーに残したがる皆々様とは違う。愛とは結晶ではなく、努力でもなく、関係性でもなく、冷めるものでも燃え上がるものでもなく、夢でも現実でもなく、男でも女でもなく、喜びでも悲しみでもなく、荒野でも豊穣でもなく、ただただ、刹那の微笑みなのだと思う。無理に引き伸ばしたり誓おうとするから不幸になるんだよ、愛はインスタに載せられない。やっと繋いだ手が柔らかい、それぐらいのことなんだから。

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