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パパ、カエル見たことある?


田舎者の私には衝撃的なセリフだった。


数年前、私が就活生だった時の話。

大学の友人と幕張メッセで開催されていた就活イベントに参加していた。
駅から会場まで歩いていたとき、後ろから女の子の声が聞こえてきた。

「パパ、カエル見たことある?」

女の子の顔は見てないから年齢はわからないが
声から察するにおそらく小学校低学年くらいの子だったと思う。

「カエル見たことある?やって。東京の子どもはかえる見たことないんやな。」私は友人に言った。

「え、でも確かに見たことないかも。おらんくない?」


????……..!?


衝撃的すぎた。

友人は関西出身で、東京ほどではないが確かに大都市出身だった。


私のような田舎者にとってカエルなんて日常茶飯事。
雨の日には道路でたくさん飛び跳ねていて車に轢かれた死骸もたくさん。

家の壁やら塀の上やらで休んでいる姿もよく目にする。

それが都会の子どもや都会で暮らしている人にとっては「見たことある?」と聞かれるほどのことなのか。ツチノコとかじゃなくてカエルが。


都会には田舎にはない物がたくさんある。お店もたくさんあるし教育の機会だって田舎では得られないチャンスだってたくさん転がっている。

でも、子どもが子どもらしくいられる空間は、都会にはあるのだろうか。


大阪で育った私の従兄弟は、長期休みになるたびに田舎のおじいちゃんの家にやって来ては、ボール遊びをしたり田んぼで泥だらけになったり水をかけあって遊んだり、それはそれは楽しそうに過ごした。

その従兄弟が家庭を持って、今度はその子どもたちを引き連れて遊びに来る。やっぱりとっても楽しそうにザリガニやセミを捕まえては喜んではしゃいでいる。みんな決まって帰りたくないと言い、名残惜しそうに大都会へ帰って行く。

カエルを見たことがないと言っていた女の子だって、田んぼをぴょんぴょん飛び跳ねる本物のカエルを見ればきっと興奮しただろう。


私は子どもながらに都会に住む従兄弟たちが羨ましかった。電車が行き来して大きな映画館もあってポケモンセンターもあって、大阪いいなぁと思っていた。

従兄弟は「大阪にはビルしかないやん」と言った。


田舎には都会にないものがたくさんある。作り出そうとしても作り出せないものがたくさんある。ここでしか経験できないことが、子どもだからこそ感じられることがたくさんある。


もし自分が子どもを産み育てることになったら、私はやっぱり田舎を選ぶのだろう。カエルなんて見つけようとしなくても見つけられる環境を選ぶのだろうと思う。


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