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アイヌの伝統楽器ムックリ⑤

「ムックリ」と「トンコリ」の比較について
以前、トンコリは樺太アイヌのもので、北海道アイヌの生活からは自然発生しない楽器だと豪語したのだが、僕なりの根拠を述べておきたい

ムックリは口琴という口内共鳴を利用した発音楽器になる
難しい言い方をしたが、切り込みを入れた竹を口元にあて、弁となる箇所を震わせて口の中に響かせ、口の中の大きさ(面積)を変化させることで音程が変わるという楽器だ

口の中で音を響かせ口の中の大きさで音程が変化させるということは、発生や発音と同じく演奏者の身体性と密接に関係していて、表現が非常に感覚的かつ感性に委ねられている

自然の音や動物の鳴き声、心情など様々なことをこの小さな楽器一つで表現したらしい

時には愛の表現もされていたというが、どのような気持ちで、どんな音色で相手に演奏して聴かせたのだろうか
想像するだけでノスタルジーな気持ちにかられる

一方、トンこりは5本の弦が張ってあり、それを鳴らすという構造
バイオリンやギターなどとは違い、指で音程を作るということはなく、5本の弦を鳴らすだけなので五つの音を奏でるということになる

ただ、音程のチューニングについては色々調べてみたが詳しいことがわからず、「自由」というのが定説のようだ
最近では平均律に合わせることも多いようだが、アイヌはその時々の気持ちで変え、その音程を記憶していたらしい
トンコリの中でアイヌらしさを感じる部分だ


声のように身体の延長で奏でるムックリ
システマチックに構成されたトンコリ

西洋音楽において楽器は時代ごとに最先端テクノロジーの一つであり、明治期まで自然に従った比較的原始的(ここは表現が難しい)な生活を送っていたアイヌからは生まれてこないのではないかと思うし、実際にこういった形のシステマチックな生活道具は見当たらない(少なくとも個人的には)

網走で発見されたオホーツク文化というものがある

続縄文時代に突然現れ、擦文時代に忽然と姿を消した文化だと言われており「モヨロ人」という民族によって作られたらしい

彼らはサハリンかアムール川流域あたりから南下してきた海洋狩猟民と言われていて、その漁猟道具の中に「回転式離頭鋸」という道具が見つかっていて、これによって発達した文化を持っていたと考られているらしい

その後、オホーツク文化はアイヌ文化に吸収され、モヨロ人は姿を消したとされている
(ちなみに、「流氷とともに流された幻の民族」という何ともロマンチックな言われ方をしていて、個人的にはすごく興味深い)

「回転式離頭鋸」だけでは判断しにくいものの、このように発達した道具を使用していた民族であったならば、アイヌ文化に吸収されたとするこの時期にトンコリが北海道アイヌたちに伝わったと考えることもできる
(ただ、時代背景がアイヌ文化になるだけに、なんとも言い難いところ)

歴史的根拠を明確に提示はできないものの以上が僕の考えで、これをとっかかりに深めていきたいと思う

それにしても、初めてトンコリの音色を聴いたアイヌたちは、その音楽の美しさにさぞ心を奪われたであろう

お及ばずとも想像するだけで胸が熱くなる


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