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晩年のベートーベン。彼は認知症だったのか?

晩年のベートーベンについて、彼は認知症だったのではないか
そういう疑念が浮かんだのは、甥のカルルを引き取って以降のベートーベンとカルルに関する記録を読み進めている時だった

頑固で変人、怒りっぽくていつも不機嫌な顔をしている
ベートーベンにはこういうイメージはあるし、若い頃からそう思わせる言動や行動はたくさんある
しかし、晩年のベートーベンは明らかにそれらとは違う異様さを感じずにはいられない

私ごとながら、家業が介護事業を行っていたため、介護の仕事を10年ほど手伝っていた期間がある
手伝い程度ではあるものの、接してきた高齢者の言動、行動とベートーベンの晩年がどうにも重なって仕方がない

ベートーベンの認知症疑惑を自分なりに整理することにした


認知症の症状といえば

・記憶障害
・見識障害
・実行機能障害
・理解・判断力の障害
・失行・失認・失語
・行動・心理症状
・興奮・暴力・暴言
・抑うつ・不安・無気力
・徘徊
・妄想
・幻覚

こういったことが挙げられる

すべてではないにしても、ほとんどが晩年のベートーベンに当てはまるように思う

ベートーベンにまつわるエピソードを僕の少ない経験を元に検証してみたい

興奮や暴力、暴言は若い頃からあった
しかし、それは彼なりに筋が通っているし手当たり次第というわけではなかった

認知症が発症する、大人しかった人でさえ暴力的になることがある
怒鳴ったり、暴言を吐く人もいた



晩年のベートーベンは、お手伝いに対して猜疑心が強く、とくにお金に関してはひどかった
時にはお手伝いの買い物について横領を疑ったこともあった
これについては友人に適正な価格などの説明を受けたにもかかわらず、納得はしなかった

高齢者は「財布が盗まれた」「お金がなくなった」という訴えることがある
もちろん、そんな事実がないにしても毎日のように訴えることが多い



甥カルルの自殺未遂についても、状況を全く理解せず
「自殺しようとするなんて、恥をかかされた!」とまるで自分が被害者のように周りに言ってたという証言が残っている

自分の息子さんが亡くなったことを理解できないという女性もいた


服装に無頓着になり、浮浪者と間違えられて逮捕され、大事件になったこともあった

服をちゃんと着ることができない
前後ろが逆、靴が左右反対
ということが結構ある



お金がないと周りに訴えるも、死後相当の資産を残していたこともわかっている

認知症の方は、そもそもお金の管理ができないことがほとんど

これらを考えると、彼の性格というよりも軽度の認知症状によるものと考えることができる


ベートーベンは57歳で天寿を全うした

A・Mハンスンの著書「音楽都市ウィーン」によると、当時のウィーンの男性の平均寿命は35歳くらいだったと書かれている

そう考えると長生きだったといえるし

ただ、著書には貴族階級と市民階級などの階層別で平均寿命が書かれているわけではなく、全体の平均として書かれている
食生活や労働環境などの違いを考えると階層ごとに平均寿命は違っただろうし、全体となると寿命の幅は大きかったと見た方がいいだろう

実際、83歳まで生きたゲーテのような人もいれば、生まれて間もなく亡くなってしまう子どもも多かった


現在の日本において中年や初老は40歳からを指す
200年前の江戸時代となれば立派なご隠居なわけで、それはヨーロッパでも同じであったろう

ベートーベンが甥のカルルを引き取ったのは40代半ば
この頃から明らかにベートーベンの異変は感じられる

年齢的にもこの頃から認知症が始まっていてもおかしくはない

同年代を生きたフランスの医師にアントワーヌ・ローラン・バイルという人がいる
この人は、世界で初めて麻痺性認知症について説明したことで有名である

認知症の症状自体は紀元前のギリシャ時代から見られているし、日本においても「老いぼれ」などの揶揄はその症状によるものを指したが、わざわざ一つの症状として説明されるということは、一つの病症としてこの時代に特定されたということになる
当時、認知症と思われる人が多く見られたり、家族などによる何かしらの訴えが多かったのかもしれない

とにかく、晩年のベートーベンはあまりにも若い頃とはあまりにも様子が違って感じられる

はじめは耳の持病によって感じられる孤独によるものかと考えていたが、調べていくにつれて明らかにそれとは違う
率直に「認知症ではないのか?」という感想を持った

本人に会ったことがないのでわからないが、あくまで残された資料を僕なりに調べた個人的感想にすぎない

以上を踏まえて、僕はベートーベンは認知症だったと確信している

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