富士山 2024.7.12-2024.7.13
2024年7月12日朝6時、僕は名古屋駅のマックにいた。
一泊二日、吉田ルート・ガイド付きの富士山登頂ツアーに参加するため、その集合時間まで時間を潰している。2021年7月12日つまりちょうど3年前の同じ日にも、ここで集合時間を待っていた気がする。そこそこ天気が良くて、風も強くないという穏やかな日だったっけ。対して今日は悪天候、しかも太平洋側は全体的にかなりの大雨予報。簡単にはいかないだろうなとマックの天井を見上げながら、目を細めてほくそ笑む怪しい男が一人いるわけですよ。
富士山は県境を定めていないそうで、静岡県でも山梨県でもないらしい。でも富士山の天気を調べる時はとりあえず静岡県富士宮市を検索。7月12日はやはりずっと雨、明日13日もいまのところ曇り一時雨というきつめのコンディションが予想される。名古屋駅もどしゃ降り、バスに乗るため1分ほど外に出ただけでちょっとザック(登山用リュック)が濡れてしまうほど。
ちょいと濡れつつバスに乗り、さぁ出発。名古屋駅~豊田駅~東岡崎駅とツアー客を乗せていって、その後バスは富士スバルライン五合目を目指すことになる。
雨降りの中、バスは待っていた人たちをズンズン乗せていき……。
トイレ休憩をはさみ……。
駿河湾沼津PAで1時間の昼食休憩。建物に入り1階のフードコートをくるりと回るも混雑していて座れそうにない。テラス席は空いているけどザァザァ降りの雨がテーブルに激しく打ちつけられている。仕方なく2階も彷徨ってみる、と。
「真穴子フェアやってます~。どうですかぁ~」
「……真穴子って美味しいんですか?(失礼)」
「うなぎとは違う美味しさがありますよ~。とっても美味しいです」
ムム。フェアをするくらいだから旬なのかな? 登山のためにたんぱく質と炭水化物を摂っておきたいし、席も空いてるみたいだからここにするか。
配膳ロボットが元気よく持ってきてくれた。突然世界観がSFっぽくなってビビり散らかす。
確かに真穴子は美味しかった。食感はうなぎに似てて、もうちょっとホクホクしているというか、白身魚よりの味だ。よく天ぷらで提供されている理由が分かるというもの。油を避けて天ぷら定食にしなかったけど、穴子の天ぷらも食べたくなってしまった。そのうち、また。
ざるそば、冷たくておいしい。穴子重のご飯と合わせ、エネルギーを蓄えることに成功したけれどちょっと眠くなってきたからコーヒーが欲しいところ。しかしコーヒーには利尿作用があり、脱水症状を起こせば登山失敗となってしまうため我慢、我慢。下山したらアホほどコーヒー飲んでやろっと。
昼休憩が終わりバスはPAを出て富士山を目指す。ここで運転手さんからアドバイスが。
『体調不良の場合、諦める勇気が大事です。富士山は逃げません。また登れば良いのです。無理して山頂へ行かなくても、八合目の山小屋からご来光を眺めることだってできますからね』
『富士スバルラインの料金所を通過したら、一気に五合目まで上がっていきます。どんどん空気が薄くなるので、その時に眠っていると浅い呼吸で高山病にかかりやすくなります。だから料金所を越えたら眠らないでください』
『高山病は酸素が身体にうまく回らないことで起きる、一時的な症状です。大なり小なり皆さん罹ることとなりますが、深呼吸してしっかり酸素を取り込んでいれば症状は出にくいです』
などなど、有益なアドバイスをとくとくと説明してくださった。前回そのアドバイス通りにバスの中でも登山中もずっと呼吸を深くするよう意識していて、そのおかげかちょっと頭痛がする程度で済んでいた。今回も早い段階から呼吸を意識していく。
前回は、高山病にかかってしまった大学生男子1名を介抱しながらの下山となった。八合目の山小屋出発時に「酷い頭痛です。でも山頂まで行けそうです」と言い張り山頂まで登ったあと、彼は下山時に何十回も吐いた。すごくしんどそうで、絶対高山病には罹りたくないと思ったものだ。ちなみに五合目まで戻った頃にはすっかり回復していた様子。
という過去の恐ろしい思い出も引き連れ、バスはズンズンずんずん進む。午前7時40分に名古屋駅を出て、五合目の駐車場に着くのは午後3時ちょっと前。およそ5時間の行程、バス内はとっても暇である。暇な時間は本を読んで過ごした。本は暇潰しにとってもエエですな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして10光年の時が経ち、バスは富士スバルライン五合目に到着。
……豪雨!!
いきなりレインウェア上下をずぶ濡れにする覚悟でバスを降り、しばらく雲上閣というお土産屋さん兼着替え所兼お食事処な建物の入り口で外の様子を眺める。横殴りの雨と強風で五合目見物客の傘が幾つかふっとんでいくのを見て、本当にこの中を登山するの? 正気ですか? と自問自答なのかなんなのか分からない独り言をつぶやく。
ひとまず2024年から必要となった、登山ゲートの通行料2,000円を支払いに行く。支払った証明である紙製リストバンドを見えるトコに着けておけねばならないとのこと。あと協力金の1,000円を追加で支払い、木札も貰った。この木札には登山年が記されているから、帰ったあと金剛杖に引っ掛けて記念とするためだ。支払っている最中も豪雨と強風は続いており、出した千円札が濡れてしまっても係の方は文句を言わず受け取ってくれた。きっと慣れているのだろう。
もう一度雲上閣へ戻り、八角形の木棒である金剛杖を購入した。これは勝手にヒノキの棒だと思っていたけど、ヒノキではない別の木材から作られていることもあるようだ。その軽さと地面に接する面の抉れ方からするとどう見てもヒノキなんだけど、どうでしょ。ま、いっか。
すでにレインウェアを纏っていてザックカバーもバッチリ。着替えの必要なく、あとは集合時間を待つだけ。ぎりぎりのタイミングで相変わらずの大雨に濡れる広場へ飛び出し、ガイドさんの点呼を経て15時40分ごろ登山開始。本日は八合目、標高およそ3,200メートルの場所にある白雲荘という宿泊小屋を目指す。
幸いなことに、多少雨と風の勢いが弱まってきた。さっきまでの豪雨のまんまだったら最初のなだらかな砂利道は良いとして、七合目の途中から始まる岩場は上がれないだろうと思って萎え萎えだったからちょぴっと元気が出た。それでもあらゆる場所がぬかるんでいて、ほんのり難易度は増しているはず。防水の登山靴とはいえ、足を取られてくじいたらそこで試合終了なので気を付けねば。登山中に怪我するとたくさんの人に迷惑をかける。
道の分かれる場所には必ず看板アリ。ガイドさんの後ろを歩けば間違えることはない。登山道も下山道も、一か所ずつ初見ごろし的な分かれ道があるのでガイド無しで登る場合は注意が必要だ。内心「えっ、そっちなの?」と毎回思うから僕は一人で登るの無理かも。
ちょくちょく休み時間を設けていただけるので、水を飲んだりゼリータイプのアミノバイタル的なドリンクで栄養補給したりして体力切れと脱水症状を防ぐ。降り続く雨で身体が濡れている原因を把握できないため、喉が渇き始める頃にはおそらく脱水症状が進行しているはず。それに水分不足で血流が滞ると高山病も進行しやすくなる。だからちょっと過剰気味に水分を摂っていく。足りなくなったらちょっと高いけど山小屋で買い足せば良い。ただしゴミ箱は無いので潰せないペットボトルを増やしてしまうとザックの中が大変なことに。
濃い霧でひとつ前を行くパーティーの姿すら霞んでしまう。あの霧の中から巨大な魔物が出現したらどうしよう……なんていう妄想を楽しんでみる。ちょっとおかしくなっとるやないけ~。アイルビーオッケー、アイルビーオッケー。
富士スバルライン五合目含め、いわゆる登山道、下山道のすべてのトイレは有料だ。金額は100円だったり200円だったり300円だったり。念のため百円玉を20枚用意してきたので問題ナシ。気兼ねなく自分のタイミングでトイレに行ける。トイレを設置・運営していただいていることに感謝しつつ使用。だいたい1時間~1時間半に一か所くらいの頻度でトイレがあり、よほどのことがない限り困ることはない。
徐々に斜面が急になっていく。ガイドさんはそれを見越して最初からゆっくりめペースにて歩いてくださる。このペース配分も、ガイド付きの方が良いと思う重要な要素なのである。おそらく最初から足早気味に行くと、七合目で岩場を登っている最中、体力が尽きる。これをガイドさんは避けてくれる。さらにいえば、下山用の体力を残して今日を終えられるように考えて進んでくれている。ありがてぇこってす。
……えっと、山頂まで310分かぁ。見なきゃよかったな。そうこの世には知らない方が良い事もたくさんあるんだって、富士山が教えてくれた。富士山ありがとう。
☆ 完 ☆彡
じゃなくて。このうちの120分が八合目~山頂とすると、本日はあと190分、つまりまだ3時間ほど登り続けるということ。やっぱり見なきゃよかったなぁ。
このように、山小屋が幾つか見え始めたあたりから足元は岩場となる。登山靴の本領発揮、金剛杖は短く持ち、滑り止め付きのグローブをはめて本格的な登山をスタートしましょうか。こっからが山登りなんでぃべらぼうめぃ。ちなみにここら辺りから、体力の無い登山客はかなりペースを落とすことになる。後ろの方にいるとどんどん遅れていってしまうため、ガイドさんはそういう方々を自分のすぐ後ろにつける。そうしないとはぐれてしまうし、体調の変化に気が付かないから。大変なお仕事だよガイドさん。
下を向くと、山小屋やトイレの屋根に大きな岩が乗せられている。強風で屋根が吹っ飛ぶのを防ぐためのもの。時には体を持っていかれそうな突風が吹くこともあるから本当に注意が必要。岩場で滑落したらちょっとした怪我程度じゃ済まない。
そういえば、前回は金剛杖に各山小屋の焼き印を押してもらいながら登ったんだけど、今回はどこの山小屋も焼き印を提供していなかった。ガイドさん曰く「この雨じゃぁねぇ、仕方ないね」とのこと。雨じゃなくても、もしかすると繁忙で焼き印サービスを停止しているのかもと思ったけど真相は不明。とにかく今回は山頂のみスタンプをお願いすることにした。
階段状の岩場を上がって、下を向いたところの写真。一段一段が高くて、ゼェゼェ息を切らしながら撮った。こんな感じがずっと続きますよっとゼェゼェ。
こういう、山肌から蒸気というか霧がぶぁっと出ている構図が大好き。そろそろ暗くなってきて、写真を撮れなくなりそうなので不安定な岩場に立ってパシャリしている私バカです。
富士一館は、標高2,800メートルにある山小屋。この時点で19時。まだ400メートル上まで行かねばならん……これ白雲荘に到着するの何時になるんだい?
もう暗くなったわけですけど、この鳥居は標高2,900メートルにある。19時30分。どうやら21時すぎくらいまで登り続けることになりそうだ。
八合目蓬莱館は標高3,150メートル。20時50分。もうちょっとやぁ~。
21時30分、宿泊する山小屋である白雲荘に到着! めっためたに疲れたやで……。もう雨はほとんど降っていないけど、レインウェアがびしょびしょなので脱いで水気を切り、用意されたビニール袋へ入れる。登山靴も同じく。で、この白雲荘は雑魚寝じゃなくて個人スペースが仕切られているありがたいお宿につき、各自名前の書かれたスペースに荷物を置いていく。
最初に写真を撮り忘れて朝パシャったため雑然としていますが、本当はもっとビシッと綺麗な寝床です。寝袋、まくら、毛布アリ。奥にはそこそこ広い荷物スペース。ひとまず荷物を置き、夕食というか夜食を食べに広間へ。
疲れ切ってカラッカラの身体に、温かいお茶とカレー、ハンバーグ、ウインナー、ご飯と福神漬が染み染みします。なにより、重い荷物を下ろしビショビショのレインウェアを脱いだ状態で座っているこの状態がシアワセすぎます。この時ようやく、本日分の登山が終わったことを実感しました。そんでついつい初めて登山する人に先輩風ふかしてあれこれアドバイスしちゃったりして、あとで思い出すと恥ずかしいことをしているけどテンションあがっちゃったからね。仕方ないよね許してチョ。
夜食と同時に、朝食の配給もされる。しかし前回を経験した僕は、山頂へ向かう場合これを食べている時間など無いことを知っている。
カレーを食べている時にガイドさんが。
「起床時間をお伝えすると皆さん意識してしまって眠れないと思いますので、山頂に行くメンバーはこちらが起こします。山頂に行かない皆さんはご来光を観てから各自下山してください」
と。前回は朝の悪天候で3時30分くらいから出発して、登ってる間に日が昇り始めてしまったけれど、今回はどうなるのかドキドキ。念のため訊いてみる。
「山頂でご来光観られそうですか?」
「天気が良ければ。山中湖の方角の天気は悪くないみたいなので、山頂で観られるように出る予定です。お鉢巡りは予定していません」
ご来光は確か4時30分ごろで、ここから山頂までは2時間ちょっとかかるはず。ということは、午前2時ごろには出発していそうだ。起こされるのはその30分前? 今22時だから、およそ3時間くらいしか休憩できないな。
食事の後は自分の宿泊スペースへ。まず汗で濡れた下着や服を全とっ替えして、次にザックの中身を整理する。登山途中で着たウルトラライトダウンも、レインウェアの上もかなりグショグショに濡れたままだ。棚はあるけど服を吊るす場所は無い。タオルである程度の水気を取っておき、乾かなければそのまま着直すしかないだろう。
ザックの整理が終わったころには23時。トイレは白雲荘を出て左に歩くとすぐあり、初回に200円払うことで何回でも使用可能とのこと。百円玉を2枚持ち、小屋を出て……。
寒ッム!! 寒い!
シャツ1枚で気温3~4度の世界に飛び出してしまい後悔するももう遅い。ブルブルガクブルしながらトイレへ小走り、百円玉2枚を料金箱へ投入し、震えながらトイレを済まして戻ったのは楽しい思い出。
すぐに自分のスペースで毛布にくるまり、一気に奪われてしまった体温が戻ってくるのを待つ。ああ~寒かった……。出発する頃にはもっと寒くなるだろうし、山頂はさらに寒く。風が吹けば桶屋が、じゃなくて風が吹けば体感気温はもっと下がる。やはり、たとえライトダウンが乾かなくても着るしかない。でないと低体温症になってしまう。
眠ったら高山病の餌食になるかもと思い、スマホの画面をぼんやり眺めていたら、寝ていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
予想通り1時30分頃に起床、2時前には山頂へ歩き始める。もちろん配給された朝食を取る時間は無し。知ってた。帰りのバスの中ででも食べよう。山小屋の外に出た瞬間ブルブルッ、ライトダウンの上にレインウェアの構成でも震えるほど寒い。もしかしてホッカイロ売ってないかなとスタッフさんに尋ねてみる。すると宿泊者には無料で1枚進呈できるとのこと(サービスは変更される可能性があります注意)。ありがたく貼るカイロをいただき、シャツのお腹部分に貼り付けた。……メッチャあったかいやん素敵ィ……。これでなんとかなりそうです、ありがとうございます。
白雲荘からはしばらくなだらかな砂利道が続く。本八合目の終点にあるトモエ館を過ぎるまではそれほどキツくないけど、九合目がまた岩登りになると知っているから気を抜くことなく歩く。最後の1時間、結構しんどいんだよな。そういえば仮眠から起きた時にずーんと頭が重くなっていたけど、深めの呼吸を続けたら治った。高山病には罹らなかったみたいだ。
夜闇の中、見上げればくねくねとヘッドライトでできた道が山頂へ続いている。上がれば上がるほど風が冷たく、鋭くなってくる。疲れるって分かっていても、やっぱり疲れる。道は山頂を目指す登山客で渋滞していて、少し進んで停まり、また数歩進んで停まる。この度々発生する休憩タイムのせいで足の疲れがさらに増す。足を上げるための力が入らなくなる。
山中湖の方を眺めると、そろそろ陽が昇ってくる時間。間に合うだろうか。間に合ったとして、綺麗なご来光は観られるのだろうか。空は明るくなったり、暗くなったりを繰り返す。前の人に続いて岩を乗り上がり登っていく。
……ようやく。
山頂へと登りつめた。ガイドさんの狙い通り午前4時に到達できた。これなら山小屋で山頂価格のカップラーメンを食べてからゆっくりご来光を撮影できる。やったね。
3年前は800円だった気がするカップラーメン、今は1,000円……。こんな高い場所にもインフレの波が押し寄せているわけですナ。でもここで疲れた身体に摂り込むカップラーメンがとっても美味いのだ。コレを食べると山頂に来たんだなって。
で、食べて山小屋を出て、ようやくデジカメの出番。
エンドロールでも流れてきそうな、綺麗なご来光。大満足です。カメラを持つ手が強風で煽られ、全然オートフォーカスが定まらない。何枚か撮ったあと、諦めて動画撮影に切り替えた。これならどっかのコマでまともな画が撮れてるでしょって。
……さて、目的は果たした。あとは下山だ。の前に少し歩いてパシャリ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
午前5時から下山を始める。帰りのバスは11時30分に出発する予定。ガイドさんによれば、サクサク歩けば3時間くらいとのこと。ガイドさんは一番遅い客について歩くので、マイペースで下りて行って良いという。僕は下りが苦手だ。膝に負担がかかるので、どうしても休憩時間を多くする必要があり、休憩を多く取ることで足の動きは鈍くなり時間かかって余計に疲れるという悲劇のスパイラル。
壮大な空景色を望み、最初は「うわぁ、やっぱすんげぇぇぇ」とか「あの雲、乗れそうじゃないか」とか思いながら歩く。しかしそれも最初だけで、30分ほど過ぎればいつまでも変わり映えしない溶岩石の砂利坂にうんざりすることとなる。おおそういえば、下山時はブーツカバー必須なのであります。コレですコレ。
太いアーチの所を靴底に引っ掛け、パンツウェアと靴の間の隙間を無くし、砂や小石が靴へ入らないようにする便利アイテムである。前回「要らんやろ」と購入せず、下山時に靴インしてきた小さな溶岩石やらスコリア(火山噴出物の一種)により大変痛い思いをしていた。これらは尖ってて痛いんス。
しっかりブーツカバーを着けて、ひたすら斜面を下り続ける。前日とは打って変わって雨粒一つ落ちてこない晴天。ギラギラ太陽が眩しくてサングラスをかけた。
下山については、ただただ荒れた砂利道を滑るように下りていくそれだけなので、それほど語ることも無い。高度が下がるにつれ気温は反比例して上がっていくため、途中で防寒着を脱ぐことと、喉が渇く前にしっかり水分補給しておくこと。休憩を取って時間をかければかけるほど足が動かなくなって辛いこと。それくらいだったような。
荷物運搬用のブルドーザーは朝7時に五合目を出発して登り始める、そうガイドさんから聞いていた。そのブルドーザーが僕の横を通り過ぎたのは7時30分あたり。ここからまだ1時間強は歩く。
落石止めシェルターを通り抜けたのが8時頃。急に喉が渇き始めたのでOS-1ゼリータイプをザックから取り出して飲む。めっちゃウンマーイ。OS-1が美味いということは脱水症状を起こしてましたなぁ。どうりで足が前に出なくなっていたわけだ。
まるで「もうちょっとでゴールやで~」的な看板がある。しかしこっからまだ30分くらい歩くのだ。ここら辺りで既に体力が底をついていて、「もう五合目に着けないのかもな」と諦めかける。もう景色の変化を楽しむとか、写真を撮ろうとか一切思わなくなる。ただちょっとずつ足を前に出し、いつかきっと見えるはずの入山ゲートを目指す。
……。
……、えっと、9時か。着いたぁぁ~。疲れたぁ~。(写真撮り忘れた)
その足でレストハウスとかいう食事処へ行き、チャーシューメンを注文。麺もチャーシューもメンマもネギも、下山で消耗し枯渇したエネルギーを補充するためにすごい勢いで食べてしまった。そして塩分をたっぷり含んだラーメンスープをゴクゴク飲み干して。
お疲れさまでしたッ!
お土産を買って、ちょいと早めにバスに乗って、寝た。帰りにまずバスは銭湯に寄る。ここで汗を流し、服を着替え、昼飯代わりに朝食用として貰っていた袋の中身を全部食べ、ペットボトルのブラックコーヒーを1分で飲み干し、また寝た。
起きたらそこは名古屋駅だった。いつも旅の帰り道は感傷的な気分になるものだけど、ただ寝ているうちに終わっていた。前回も思ったことで、富士山を登頂したからといって自分の何かが変わるわけじゃない。日本一高い場所へ歩いて行き、日の出を撮って戻ってきただけだ。
それでもこの2日間、世界は美しいって思ってた。普段の生活で考えることのない言葉。ずぶ濡れになってヘトヘトになって、腹が減って足は痛くて、なんで好んでこんなことやってんだろうと思いながらも、ふと目に映る景色は全部、素敵だった。それで良しとしよう。
2021年と2024年、同じお店で買った金剛杖だけど、最新の杖は10センチくらい短くなっている様子。短い方が持ちやすかったし使いやすかったんだけど。3年後に買うと、もっと短くなってるのかな?
以上、「富士山」でした。
というように、吉田ルート・ガイドつきツアーにて富士山のてっぺんまで行きました。備忘録的なものを残しておきます。
ハイ、以上です('◇')ゞ