見出し画像

本当の経営学書を読んだことはあるか?

ドラッカーは経営者の基本的資質としてintegrity、 起業家の資質としてentrepreneurshipを上げている。15年ほど経営者とデザイン思考ワークショップを行う中で出会うことが多かったが(デザイン思考ワークショップは規模と金額で経営マターなので)、この二つにかけている経営者はちゃんとした経営をしている会社にはいなかった。この2冊ね。翻訳何言っているかわからないけど、英語はよくわかる。

画像1

画像2


だいたい、デザイン思考の大型コンサルをやろうと思うくらいだから上の二つの本が言っていることはわかっている経営者達だ。ベンチャーはまあ問題が多いというか、もまれていないので、だめな人が多いが、淘汰という流れで整頓されていく。だが、一般的にこの二つの資質を備えていない人が大会社の経営のトップにいることがおおい。つまり、凡庸と邪悪な資質を持っている人たちだ。それぞれintegrityとentrepreneurshipとは違う資質である。entrepreneurship と凡庸が結びつくとまあ、会社は存続しない。親の会社を潰す若社長、ってやつだ。邪悪とentrepreneurshipが結びつっくとこれもまた長続きはしない、というのがドラッカーのマネージメントの婉曲的なでも強い主張だ。大会社でintegrityと凡庸が結びつくと、会社は衰退する。これがドラッカーのイノベーションの婉曲的なでも強い主張だ。


普通大会社は邪悪な人はトップに立てないフィルターを持つが、笑っちゃうようなことが最近、ある巨大企業の社長人事を巡って起こったりしている。アメリカではホワイトカラー犯罪といって、邪悪な経営を厳しい法律で縛っていて、まあいまでもどんどん牢屋に入れている。日本は野放しだね。背任の罪がかるい。アメリカの法律ではembezzlement 背任は重罪felonyである。財産没収禁固15年みたいな。


邪悪でentrepreneurship を持つ人が良いのか、integrityがあって凡庸な人が良いのか?両方ともだめだ。これはleadership論で考える問題である。組織マネージメント論で考えてはだめなのだ。この分野を考えるのは組織行動論 organizational behaviorといわれる分野である。日本の第一人者はこれをleadership論として紹介していない。個人の生きがい、しあわせになれよ、みたいなどうでもいい話にしている。優秀な人なので意図的なのかと思ってしまう。組織行動論はどんな苦境に立っても組織を見捨てないリーダーと、頭よくて計画たてるのすきで、実行の責任を持たないリーダーを比較して、後者はくずだと断定する理論だ。日本の戦前の陸軍海軍はその典型である。多分戦後の銀行とか財閥系巨大企業はおなじだろうな。官僚もまさにそのもの。知識だけでエリートを選抜する組織の陥る弊害である。


以上の枠組みで会社の人事とか「成功者」の自伝とか読むと、いろいろなことがわかる。ノーベル賞とった科学者の自伝も、そもそも現代の研究は組織マネージメントが肝なので、そういった目で見るとえっとおもうところがある。若手科学者が苦しいのは研究室のマネージメントがだめだという場合が多いと思うよ。どんな小さな組織でも大きな組織でも問題点は同じである。だからといって『失敗の本質』みたいな本を読んでも、問題は理解できるが解決は出来ない。


本当の組織行動論の古典派は『何故わかっていても実行出来ないか』Knowing-Doing Gap これがあれば経営はできる、くらいのリーダーシップ論
でもう一つはAsshole Theory こんな言葉を言うとお口をすすぎなさいとおこられる。

画像3

画像4

訳はちょっと違うが、ようするに、人間を名門大学で成績優秀で採用するとそいつがassholeである率が高くて組織は死ぬよ、という話。


なんだか、翻訳のされ方は適当なビジネス通俗本の扱いだが、社会科学の研究においてこのグループは引用回数も評価もアカデミックにすごく高い。日本の紹介のされ方はへん。アカデミズムで組織行動論を研究している人がこの流れを無視しているのも変。何をかんがえているのか。下記はペッファーのデビューの研究書で圧倒的な評価をされている。組織は環境から資源をリソースとして取り込んでそれを再配分するという考え方を主張した本である。

画像5


30年から20年くらい前にシリコンバレーを一年に何度も行き来していた頃に、スタンフォード大学の大学の書店で、彼らの本がどーんと並んでいて気になって買ってみた。スタンフォード大学のビジネススクールでイノベーションを教えている先生の本だというので買ったのだが、読んで驚いた。イノベーション組織のリーダーシップの本だった。ちなみに、スタンフォードのビジネススクールでは組織行動論を学んでベンチャーに就職する学生が多い。それ以降、僕はこの本を参考にマネージメントを行ってきたといっていい。技法とか知識で人より優れていて、それを根拠に人をおとしこめることがへいきなやつが「アスホール」で、計画だけ立てて実行の責任を持たない、あるいは実行ばかりして計画立てないやつ、退場、というのがKnowing Doing Gapである。assholeを採用しない、計画しか立てられないやつを採用しない、やめてもらう、というのが一つと、実行を大事に、いやなやつにならないようにとマネージメントするのがleadershipのきも。これをまもってintegrityとentreprenuershipを大事にする。これもマネージメントのきも。


でここを誤ってうまく経営できる組織はない。組織の大きさには関係ない。誤った経営とリーダーシップの組織では、どうやったって幸福にはならない。自分で努力できる問題ではない。邪悪な組織は組織として勝つかもしれないけれど、個人は地獄。そんな組織からはさっさと脱出しよう。全部が間違っている組織は、近づかないことだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?