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心の垢。【小説】

日常で多く耳にする言葉が否定的な言葉が多いと、やはり心も引っ張られている。
そんなことを何気なく映画を見ている時なんかに気づいたりする。
見ている映画の世界観が心地良く、
「ああ、こういう世界観が好きだったなぁ」
と、ふと、思い出したかのように心が感じたとき、なぜ、こういう心持でいられないのかと考え、そこに日常の垢のようなものを見つける。
 
通じない言葉は使わない。
僕はただ黙って、そして受け流す。
そして、心が垢まみれになっていく。
 
その心地よさについて、「遠い記憶」みたいに失っているような寂しさを覚える。
誰かに止められているわけではないのだ。
僕は心地良さを持ち続けていてもいいのだけれど、それを隠すことで、なんとか傷を深めないでいようとしている。
けれどやはり、一日の中で、ほんのわずかでも、その垢を取り除いていくことをしていないと、僕は僕を見失い、慢性的な渇きを軽度な刺激で誤魔化し続け、昨日と今日の違いすら分からなくなっていく。
 
「……」
 
僕は意識的に、人けを避け、目立たない場所でジッとしてみる。
ただ、心に耳を澄ませ、心地良さを探す。
それはあると信じる。
 
生活や日常との「距離」を感じる。
そして少しだけ溜息を吐く。

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奥田庵 okuda-an
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