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やめてる。


昔はここら辺一帯でよく人がいなくなったらしい。
夜中に出掛けた男が帰って来ず、その次の朝に何故かモグラの死体が畑で見つかる。そんな昔話がある。

さすがに今では聞かないが、聞かないだけで実際は起きているのかもしれない。

二年前、夜中に畑の横を歩いていて背丈ほどある葉っぱの奥から
「やめて!」
と女性の小さな声が聴こえた。
葉っぱの奥は薄暗く、奇妙な空間への入口の様に見えた。
僕は何かあったのかと、恐怖に怯えながらも、中に入ると、
「うわっ!」
足が地面に埋まり動けなくなった。
「やめるか?」
声が聞こえた。
僕は暗闇を見回すと、足元にモグラがいた。
可愛い女性の声だったが、ただのモグラだ。
「やめるか?」
もう一度聞かれた。
僕はとりあえず
「やめます」
と答えると、モグラは地面に潜り、その瞬間足が自由に動き、慌てて畑の外へ出た。
いったい何をやめれば良いのだろう?
僕はその事を思い出すと、しっかりと「やめているのか」恐怖を覚える。
やめていると良いな……。
とりあえず最近は丸くなったねとよく言われる。
きっとやめているのだろう……。


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