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霊能者から口臭。

霊能者と名乗っているのだけれど、全然、オバケとか信じていない。
オバQは好きだった。鬼太郎も好きだった。
ぐらい。
水木しげるの妖怪大辞典と、ワイドユーの心霊写真の謎を暴くコーナー、矢追純一のUFO特集なんかをみて育った。
ぐらい。の、知識。

お遊びで、路上で「手相と霊視」で商売したら何気に小銭が稼げて、チョクチョク、やるようになった。
「朝六時に起きるようにすれば、近いうちに良いことが舞い込みます」だとか、「その人は違うかもしれないな。背後であなたの先祖が首振ってるから」なんて証拠が出ないようなこととか、確認のしようもないこと、時間が経てばそのうち起こりそうなことをボカシて言って、たまに良い方に転がった人に感謝されたり、うまくいかない人には、除霊っぽいパフォーマンスして、また小銭をもらう。
「あんたは私を信じなさい」

しかしまぁ、バチが当たらんもんだなぁ。
と、ますます、霊能力やら、超常現象みたいなものを軽視していくようになる。

と、ある日の夜。
空を見上げると謎の光る物体がヒュンヒュン。
「ん?」
と、いつの間にか大量の謎の物体が空を囲み、一気にこちらに落ちてきた。
「うわっ!」
ビックリしてうずくまり、
顔を上げると、何も起きていない。

「……」
と、どんよりとした、気配。
振り返ると、腐りかけた人間が大量に立っている。
「おわっ」
と、走って逃げる。と、なぜか森の中にいて、水辺に子供が立っている。
が、よくみると、痩せ型で、緑色で、口元が口ばし。
「カッパ?」
「そうさ、おいらはカッパさ。浅香唯さんが持ってるカッパ捕獲許可証がないお前には捕まえられないカッパさ」
「嘘だ、」
「信じないのはお前の勝手さ。だけどね、そろそろバチ当たるよ」
「バチ? バチってなんだよ」
「死ねないけど、ずっと苦しい奴だよ」
「なんか、病気とか、貧乏とか、謎の不運続きとか、そんなんか?」
「まあ、楽しみにしてな」
と言って、カッパはピョンと川へ飛び込んだ。

その瞬間、辺りは新宿の雑居ビルの裏側のゴミ置き場になった。
「へ?」

翌朝、目が覚めると、内臓がえぐれるように痛く、そして、口から腐った生ゴミのような匂いがした。

世間はウィルス騒ぎ。マスク必須。
で、地獄の口臭。
「うぇうぇぇぇ」


口臭にやられて、げんなりしてくる。
バチか? どうすりゃいいんだ。

百貨店の一角にいる占い師に見てもらうと、
「口が臭いのはあんたが不健康でどうしようもない小汚いおっさんだからさ」
と、ケラケラ笑われる。
「……」
悲しい。

その日は中野ブロードウェイをぶらぶら歩き、生まれて初めて数珠を買った。

「うぇうぇぇぇ」

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