側面。
「あれだね、浮世絵っていうのは、迫ってくるよね」
と、言ってるこの人、誰だっけ?
さっきから、どっかで見たことあると思ったのだけれど、分からない。シャキッとしていて、背が高くて、頭が良さそうで、少しもの悲しげな感じ。
「絵の世界にハマると、世界を見る目も変わってくるんだ」
とか言ってるけど、誰だっけ?
妹の大学の先輩らしい。
「はじめまして」
と、紹介されたけれど、どっかで見たことが……と、さっきから引っかかっている。
なんだ。
僕と妹は、母親の付き添いで、親戚の家についていった帰り道、この人に会った。
妹は、まんざらでもない顔をしている。
「……」
あ。
あれだ、同級生の結婚式で、新婦側の友人で、余興やってた人た。
裸で、背中に「オモシロビーム」って書いてあって、コマネチやりながら、アンジェラアキの『手紙』歌ってた人だ。
最後、泣きながら、酔っぱらって、運ばれていった人だ。
「ピカソはね、スケベだよね」
と、妹を見つめながら言っている。
頭良さげにしてるけど、あの面白かった人だと気づき、ちょいと、ドキドキした。
「ん、なにか?」
と、彼が僕に言った。
「いや、別に……」
と、僕が言うと、彼は少し笑みを作った。
僕は、心の中でウンウンと、頷いた。
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